Appleには、独自の製品化の基準があると書いた。今回、iPhone Duoと並んでそれを感じさせたのが、実は「発表されなかったiPhone」だ。
例年なら、9月の発表会でProモデルと共に、2眼カメラを搭載する標準モデルも新世代へ更新される。しかし今回発表された新しいiPhoneは、「iPhone 18 Pro」「iPhone 18 Pro Max」「iPhone Duo」の3モデルだけだった。
フラッシュメモリ価格などの部材が高騰する中、現段階では世代を更新するほど大きな価値を提供できないと判断したのか、あるいは「iPhone 17e」の後継モデルと一緒に春へ発表時期を移す戦略なのか、理由は明らかにされていない。
ただ、Appleが毎年の慣習を惰性で守り続ける会社ではないことは改めて印象付けた。
ちょうど今回から若き新CEO、ジョン・ターナス氏が就任したこともあり、Appleが取材の受け方から発表のタイミングまで、さまざまな点で新しいことを試していることは確かだ。
今回、Appleは3モデルのiPhoneに加え、「Apple Watch Series 12」「Apple Watch Ultra 4」「AirPods 5」も発表した。
しかし、より長い時間軸で今回の発表を捉えるなら、さらに重要だったのは、新CEOのジョン・ターナス氏が基調講演の冒頭で語った「Intelligent Personal Hub」という考え方かもしれない。
長くAppleを追っている人なら、2001年にスティーブ・ジョブズ氏が発表した「Digital Hub」構想を思い出すだろう。PCの成長が鈍化し、「PCは終わる」とまで言われ始めていた時代に、ジョブズ氏は逆の未来を描いた。
デジタルカメラやビデオカメラ、音楽プレーヤーなど、身の回りに増え続けるデジタル機器の情報を集約し、管理し、連携させる「Digital Hub」として、むしろPCの重要性は増すという考え方だ。
その後AppleはiPodを生み出し、さらにiPhoneへと進んでいった。
そして2026年、ターナス氏が示したIntelligent Personal Hubは、AIが身の回りの情報を扱う時代におけるiPhoneの役割を説明するものだ。
製品発表イベントの冒頭、新CEOのジョン・ターナス氏は、これからのAI時代、Intelligent Personal Hubとなるデバイスの存在が重要として、そのための条件をいくつか挙げ、iPhoneこそがまさにそのデバイスだと紹介した現在、多くの人がクラウドベースのAIサービスに文章をコピー&ペースト/アップロードして利用している。
そこには時として、仕事上の機密や個人的な情報まで含まれる。入力した情報がどこに保存され、どのように利用されるのかは、AI時代の大きな問題になりつつある。
これに対して、Appleが描く世界では予定や連絡先、メール、メッセージ、写真、以前友人から薦められたレストラン、これから泊まるホテルの予約番号に至るまで、個人に関する膨大な情報がまずiPhoneに集約される。
Apple Intelligenceは、可能な処理を端末上で行い、より大きなモデルが必要な場合にはPrivate Cloud Computeなどを使いながら、プライバシーを守ったまま外部の知識と接続する。
ターナス氏がIntelligent Personal Hubと呼んだのは、こうした存在としてのiPhoneだ。
ここから先は筆者の想像を含むが、将来Apple Intelligence以外のAIを利用する場合にも、iPhone側が個人情報の門番となり、「このAIに、この情報を渡してよいか」をその都度ユーザーが管理できるようになれば、AIによる個人情報の流出や乱用をかなり限定できる。AppleがAI時代に目指しているのは、そんな世界なのではないか。
そして、だからこそAI時代にはiPhoneの重要性がむしろ増す。今回のターナス氏の言葉は、そんな宣言のようにも聞こえた。
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