“エリア型ワンセグ”で、街はもっと面白くなる――エリアポータル松村太郎のノマド・ビジネス(2/2 ページ)

» 2009年01月28日 07時00分 公開
[松村太郎,ITmedia]
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渋谷の実証実験で、街一帯を1つのメディアに

 この冬、エリアポータルは実験を次のフェーズに進めた。それが渋谷一帯を対象とした1年間のエリア限定ワンセグの実証実験だ。

 「これまでの中小エリア実験で、既存の放送事業者の皆さまにご迷惑をかけることなくサービスを提供できることを証明してきました。このたび、渋谷の街で1年間、100mWという非常に強い出力でサービスを提供する免許をいただけました。(加藤氏)

 渋谷の実験で重要視するのは、リアルタイム性と連動性の実証だ。

 「今流せる特典、今開いているお店、今始まったセールなど、流す情報にリアルタイム性がないと、その場で見る価値がなくなります。また、渋谷なら109のような街で最も目立つランドマークや、街頭の広告や大型ビジョンとの連動は刺激的です。こうした映像がケータイと連動すれば、大型ビジョンで流れた商品を携帯経由でその場で購入したり、お店に誘導したりといった付加価値が生まれます。街での行動が情報にアプローチする自然な手段となれば、面白いのではないでしょうか」(加藤氏)

 こうして見るとエリア型ワンセグが、新たなビジネスモデルを切り開くメディアとしての可能性を秘めた存在であることが分かってくる。

 限定した場所で、時間を限定した広告を展開でき、どれだけの人が放送を見て、実際に行動したのか、あるいはサイト内で購買活動をしたのかを測定できるのは、先に挙げたとおりだ。エリア型ワンセグのフィールドは、新しい広告手法を試す場所であり、渋谷が選ばれたのも妥当といえる。

 「ビジネスの規模感も、街の特性によって変わります。渋谷だと1人あたりの消費は少ないかもしれませんが、銀座ではそれが変わってくる。また、スポーツ観戦やコンサートに来る人の多くがグッズを買うつもりで訪れるなど、サービス提供者によって効果的な規模感も変わります。まずは大都市の中心市街地で実施し、制度や技術、手法、ビジネスモデルなどの産業基盤を作ることを使命にしていきます。それが確立すれば、さまざまなイベント規模、ユーザー、コストに合わせた展開が可能になるでしょう」(加藤氏)

 街に行って、ケータイを開くと、その街のそのときの情報がリアルタイムに表示される。エリアポータルが目指すエリア型ワンセグ放送が普及した未来では、街歩きの達人や社会調査に携わる人でなくても、その街のライブ感や息づかいを感じることができる。

 街に行って街を使いこなす、街から買い物以外の何かを受け取る――。エリアポータルの取り組みは、そんな街のメディア化をより分かりやすくし、新たなビジネスモデルを創出しようというものだ。こうしたモデルが、どのような形で新たな産業基盤となっていくのかに注目したい。

エリア型ワンセグの課題――法制度の壁をいかに超えるか

Photo YRP研究開発推進協会 研究推進部担当部長の寺村允安氏

 いくらエリア型ワンセグのビジネスプランがあっても、法制度が整備されなければ放送自体が行えない。横須賀リサーチパーク(以下、YRP)研究開発推進協会の研究推進部担当部長である寺村允安氏は、エリアポータルとこの会社を送り出したYRPの狙いについてこう語る。

 「エリア限定ワンセグ放送に関する提案書は、YRPの総意として総務省に提案しており、2009年度中の成立を目標にしています。通信・放送の法制度を検討する中、エリア限定ワンセグを実現するための法整備も必要で、どのような法律があれば事業者がサービスを展開しやすいかを議論する必要になります。また、こうした法整備については既存の放送事業者のご理解を頂きながら作っていくことも重要になります」(寺村氏)

 放送が“限られたチャンネル数や枠内”で提供されてきたのに対し、通信はインターネットやWebの仕組みによって、“送り手も受け手も自由”という形で発展してきた。ただし、ケータイ上のワンセグ放送については、通信を扱うケータイを通じて放送するものであっても、「放送」という扱いになり、エリア限定ワンセグについても、現在の放送の法制度の下で行われることになる。

 しかしその境界は曖昧になりつつあり、現在の放送法と通信法という分け目を融合しようという動きもある。

 「ワンセグもケータイから使っていると、データ放送からリンクで飛んでWebページを表示でき、1:nの通信とみることができるかもしれません。通信から放送を見たり、放送から通信へ流れたり、ユーザーや企業、総務省にも具体的な姿を見せる必要があります」(寺村氏)



プロフィール:松村太郎

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東京、渋谷に生まれ、現在も東京で生活をしているジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ(クラブ、MC)。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。1997年頃より、コンピュータがある生活、ネットワーク、メディアなどを含む情報技術に興味を持つ。これらを研究するため、慶應義塾大学環境情報学部卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。大学・大学院時代から通じて、小檜山賢二研究室にて、ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性について追求している。



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