「子どもの安全」は、親にとって何物にも代え難い重要なものである。特に最近では子どもを狙った犯罪が増加しており、毎日の通学ですら不安を感じるご時世だ。
そのような中で急速に成長しているのが、GPSや携帯電話インフラなどのモバイルICTを使って“子どもを見守る”セキュリティサービスである。この分野の草分けはセコムが開発した「ココセコム」であるが、その後も「子どもの安全、親の安心」ニーズの高まりから、さまざまなタイプのサービスが登場している。
この“子ども向けセキュリティサービス市場”に、NTTドコモが本格参入した。それが小学校や学習塾向けのASPサービス「こどモニタ」だ。ドコモは以前から「キッズケータイ」の販売や「ケータイ安全教室」の実施など、ケータイで子どもの安全を守る取り組みを熱心に行っており、その姿勢を法人向けのモバイルソリューションとして商品化したのが今回のこどモニタと言える。
今回のMobile+Viewsでは、こどモニタ初の導入事例となった埼玉県の星野学園を取材。こどモニタの利用状況とその特長、導入の背景などを紹介する。
帰りのホームルームで先生が指示すると、子どもたちがケータイを取り出して操作を始める。遊んでいるわけではなく、こどモニタの操作画面から「下校」の操作をしているのだ。これにより親のケータイに、これから子どもたちが下校するというメールが届く。
埼玉県川越市にある星野学園小学校。ここは中高一貫教育の名門校として知られる学校法人星野学園が、2007年に設立した私立小学校である。筆者が取材した3年生たちは、この学校の一期生だ。
新設の私立校ということで、教育体制から学校設備まで一貫したポリシーが貫かれている。例えば、1クラスの編成は40人で1学年2クラス制。これだけだと大人数学級のように感じるが、1クラス2人担任制をとっているため、1クラスの人数が多くても先生の目が行きわたるという。通学時の子どもたちを守るために携帯電話を所持することも、小学校設立時からの方針だ。
「本学は私立校のため、通学範囲を定めていません。学校としては最寄りの駅までスクールバスを出していますが、そこまで公共交通を乗り継いで通学する子たちが多い。多くは埼玉県内からの通学ですが、都内から通ってくる子たちもいます。そのため、子どもの安全な通学を見守るためのソリューションは、非常に重要なものだったのです」(星野学園小学校 教頭の河邊秀幸氏)
こどモニタを導入そたのは今年4月から。それ以前はクレオの子ども向けセキュリティサービス「通学ケータイ」を使っていた。しかし、2008年8月にクレオがソフトバンクモバイルと事業提携。同社のサービスは2009年3月末に終了し、以降はソフトバンクモバイルからのサービス提供になるため、新たにドコモの「こどモニタ」を導入した。
「クレオの通学ケータイは(ドコモ、au、ソフトバンクモバイルの)3キャリアで利用できたのですが、ソフトバンクモバイルが提供するサービスではソフトバンクの携帯電話を使うことが前提になってしまったのです。我々学校側が子どもたちが使用する携帯電話キャリアを、特定の1社に選定するのは望ましくありません。
一方、ドコモのこどモニタは当初からauとソフトバンクモバイルの(子ども向け)携帯電話も対応する方針を打ち出し、積極的にサポートしてくれました。そこを評価し、こどモニタを導入しました」(河邊氏)
現在の運用では、学校側がドコモの「キッズケータイ」など児童に持たせるのにふさわしい端末を各キャリアから指定し、保護者はそこから好きなキャリア・端末を選べるようになっている。学校に携帯電話を持ち込むにあたり、利用ガイドラインやルールは策定しているが、「どのキャリアを使うかは、学校側が指定すべきではない」(河邊氏)という考えだ。
「当校では通学時の安全のため、携帯電話の所持が前提になっていますので、(携帯電話を)持っていない子はいません。きちんとルールを作り、学校側がしっかりとした運用をすれば、(携帯電話は)子どもの安全と安心のための最良のツールになります。
一方で、こどモニタを使った(児童の)見守りは4年生までの利用と考えています。そこから先はPC教育でITリテラシーを高めていく。例えば、同じ星野学園でも中学と高校は携帯電話の持ち込みを禁止し、PC教育に力を入れています。学校としての携帯活用は、あくまで『通学時の安全・安心のため』というスタンスです」(河邊氏)
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