“ポスト905i商戦”を前に、守りを固めたドコモ神尾寿のMobile+Views(1/2 ページ)

» 2009年11月12日 18時23分 公開
[神尾寿,ITmedia]
photo 19機種の音声端末に加え、通信機能を備えたデジタルフォトフレーム「フォトパネル 02」が発表された

 11月10日、NTTドコモが2009年冬モデルと2010年春モデルの計19機種を発表した。詳しくはニュース記事に譲るが、今回はSTYLEシリーズ10機種、PRIMEシリーズ5機種、SMARTシリーズ2機種、PROシリーズ2機種をラインアップ。それぞれのシリーズコンセプトに沿った新商品群と、新サービス「オートGPS対応iコンシェル」などを投入して、冬商戦と春商戦に臨む。

 今年の冬商戦から春商戦にかけては、今年9月から満期開けを迎え始めた2年利用契約「ファミ割MAX 50」と「ひとりでも割50」の更新期と、新販売方式「バリューコース」で爆発的に売れた905iシリーズの割賦払い終了が重なることになる。ドコモにとっては、その流動性が高まるタイミングで攻め込もうとするauやソフトバンクモバイルを退けて、なおかつ新端末を積極的に売り込まなければならない重要な時期だ。

 今回、発表された冬春モデルと新サービスは、これから始まる重要な商戦期にふさわしい内容になっているのだろうか。

魅力的な「STYLE」と、保守的な「PRIME」

photo 2年前、上位シリーズ“905i”からは計10モデルがラインアップされた

 今期のドコモ新商品を見る上で、重要なキーワードになるのが「ポスト905i」だ。

 今から2年前、ドコモは新端末「905iシリーズ」と同時に、新販売方式「バリューコース」を導入した。バリューコースでは、それまで業界の慣行であった販売奨励金(インセンティブ)を原資にした端末販売価格の値下げが廃止され、端末の店頭価格が上昇。それによる買い控えを抑える目的で、少額もしくは0円の頭金を支払えば、ゼロ金利で最大2年間の割賦払いが選択できるようになった。

 このバリューコースの導入により、最新のハイエンドモデルであった905iシリーズが、初期費用負担が軽く買えるようになった。905iシリーズは各モデルの訴求力も高かったが、主にこの販売方式の変更によって好調なセールスを記録。「P905i」など一部モデルは品不足で店頭から消え、2007年冬、08年春商戦の短期間で、シリーズ全体で数百万台が売れるという大ヒットになった。今回の冬春商戦向け新端末は、この2年前に大ヒットした905iシリーズの買い換え需要をしっかりと取り込み、その上で他キャリアの新商品ラインアップに対する競争優位性を得られるかが重要なポイントになる。

 前置きが長くなったが、ここからドコモの冬春モデルを見てみよう。

 ドコモでは2008年から、ハイエンドモデルの「90xシリーズ」、普及モデルの「70xシリーズ」という2ライン制を廃止し、ターゲットユーザー層ごとに商品コンセプトをまとめなおした「STYLE」「PRIME」「SMART」「PRO」の4シリーズ制を採用している。この中で、高性能・多機能をセールスポイントにしていた90xシリーズの直系に近いのはPRIMEシリーズだが、今回、筆者が特に注目したのが「STYLEシリーズ」の充実ぶりだ。

 STYLEシリーズは今回、ファッション性とデザイン性を特に訴求し、ファッションブランドとのコラボレーションモデルも多く用意してきた。さらに、シリーズ全体で見ると、どのモデルもデザインと機能のバランスがよく、それぞれの商品コンセプトにあわせた完成度の高い出来映えになっている。とりわけ筆者が高く評価するのが、富士通製の「F-02B」と、NEC製の「N-01B」「N-03B」だ。これらはハイエンドに迫る機能を備えながら、サイズやデザイン、新たなコンセプト提案の面で妥協や安易さがない。STYLEシリーズとして“華がある”のはファッションブランドと連携した「SH-04B」や「SH-05B」であるが、F-02BやN-01Bのような実力派ケータイも育ってきている。シリーズ全体でのバリエーションの豊富さ、個々のモデルを選ぶ楽しさがある。

photophotophoto STYLEシリーズのF-02B(写真=左)は、フレグランスピースで“香り”を持ち歩くというコンセプトが特徴的。N-01B(写真=中央)は、デザインのカスタマイズサービス「マイセレクト」に対応している。N-03B(写真=右)は、柔軟性があり、ボディの傷が目立ちにくい「スクラッチシールド」を裏面に採用した

 一方、PRIMEシリーズは、世界初のセパレートケータイ「F-04B」を除くと、なかなか保守的な内容だ。確かに高性能かつ機能豊富な“全部入りケータイ”ばかりであるが、デザイン面での革新性や、モデルごとのコンセプトの明確化・差別化という点で、STYLEシリーズに比べて物足りなさを感じるのだ。

 それもそのはずで、あるメーカー関係者によると、905iからの買い換えユーザーを強く意識して「あえて(905iシリーズと)デザインやコンセプトの共通性を持たせた」のだという。確かにその視点で見ると、「N-02B」、「P-01B」、「SH-01B」の3モデルは、905i時代を踏襲したデザインにまとまっている。905i時代と異なる方向性を打ち出したのは、富士通の「F-01B」と「F-04B」だけだ。

photophotophoto 2007年に発表されたN905i(写真=左)、P905i(写真=中央)、SH905i(写真=右)
photophotophoto 今回発表されたN-02B(写真=左)、P-01B(写真=中央)、SH-01B(写真=右)

 むろん、商品企画の観点からすれば、大ヒットモデルの買い換え期に、キープコンセプトの新モデルを投入するのは合理的な選択である。細かく見れば、機能や性能、デザイン面での進化は確かにあり、例えばシャープ製のSH-01Bやパナソニックモバイルコミュニケーションズ製のP-01Bなどは、直系の先祖である905iシリーズを洗練させたようなデザインと内容になっている。しかし、市場全体を振り返れば、従来型のハイエンドモデルの需要は縮小。最先端のデバイスを詰め込んだだけの、どんぐりの背比べのような“全部入り端末”というのは時代のニーズに合わなくなってきている。また、STYLEシリーズが(905iシリーズからの買い換えも含めて)一般ユーザーのニーズに十分応えられるようになったなかで、PRIMEシリーズは単なる全部入りから卒業し、デザインやUIの革新やユニークな商品企画・コンセプトを追求するという方向性で、もう一歩前に進み出てもよかったのではないだろうか。

 SMARTシリーズとPROシリーズは、STYLEとPRIMEを補完するポジションで今回もラインアップされている。どちらも今期の投入モデル数が乏しく、国内初のAndroidケータイ「HT-03A」登場時のような話題性のある端末もない。だが、SMARTシリーズの「F-03B」と「P-03B」は、実際に手に取るとかなり上質感のあるモデルであり、とりわけF-03Bは指紋認証を軸にしたセキュリティ機能の高さで、ビジネス向きの1台に仕上がっている。SMARTシリーズが今後、どのようにSTYLEシリーズと差別化し、プレミアム路線を構築できるかは興味深いところだ。

photophoto F-03B(写真=左)とP-03B(写真=右)。どちらも上位機に劣らないカメラ性能を備えるほか、F-03Bは背面パネルにチタンを、P-03Bはステンレスを採用しており、上質感のある外装となっている

 4シリーズ全体で見ると、STYLEシリーズがラインアップの中核であるのは明らかであり、内容的にも充実している。905iシリーズからの買い換え組が、STYLEシリーズを買うという「主役交代」も十分に考えられそうだ。

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