“物作り”の価値は少ない――ノキア シーメンスが語るインフラ企業のサバイバル:ワイヤレスジャパン2010(1/2 ページ)

» 2010年07月28日 10時38分 公開
[山田祐介,ITmedia]
photo 小津泰史氏

 製品の価値を生みだすのは開発製造ではなく、ビジネスモデルやカスタマーエクスペリエンス――これが、世界的な通信機器製造企業であるノキア シーメンス ネットワークス(以下NSN)の日本法人社長 小津泰史氏の考えだ。同氏は7月16日、無線技術の展示会「ワイヤレスジャパン2010」の基調講演に登壇。通信キャリアを襲うトラフィックの急増が、インフラベンダーに徹底的なコスト削減を求めるとし、グローバルに事業を展開してコスト効率を高める必要性を語った。また、製造業からさまざまなサービス業へ事業領域を拡大している同社の現状や、日本での戦略も合わせて紹介した。

「100万円で売っていたものを2万円にしなければいけない」

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 スマートフォンやデータ通信端末の広がりによって、通信キャリアは急増するデータトラフィックへの対応に頭を悩ませている。NSNのインフラを導入する各キャリアのデータトラフィックは、過去3年間で年率100〜300%の増加を記録。さらに、有線回線が整備されていない地域では、宅内のインターネット環境を無線でまかなう傾向があり、トラフィックの急増を後押しすると小津氏は説明する。

 これがなぜ問題になるかといえば、データ通信の料金は上限額が設定された定額制が主流で、トラフィックの増加と収益が比例しないからだ。現状では上限額に達していないユーザーがいるために、先進国でもデータARPU(1ユーザーあたりの平均収入)は微増傾向にあるが、データ量に対する収益率は年々低下する見込み。これに追い打ちをかけるように、従量課金がベースで収益効率のよい音声ARPUの減少が止まらない。発展途上国ではまだ音声やSMSが主流だが、先述のようにブロードバンドを無線でまかなう傾向があるため、トラフィックの圧迫が予想されるという。「総計すると、グローバル市場における音声・データの収益は横ばいか、減少する傾向にある」(小津氏)

 “土管屋”としての成長が見込めない中で、通信キャリアは新しいビジネスモデルを模索している。その1つとして注目されているのがアプリビジネスだが、小津氏は、「アプリで利益を上げるには、アプリのトラフィックに耐える土管を用意しなければいけない。世界の通信事業者は、設備投資を続けないとアプリに注力できないジレンマを抱えている」と話す。

photo 小津氏は世界の通信方式の遷移予測をスライドに示し、世界市場におけるGSMやW-CDMAの重要性を説いた

 また、収益効率の低下は採用した通信方式に関係なく起こるという認識も同氏は強調。「LTEを導入したからといって、携帯電話のユーザーがプレミアムを支払ってくれるわけではない。料金が高ければユーザーは3G、3.5Gで我慢する」(小津氏)。さらに、世界的には2G、3Gの通信方式が当面は主流であり、今後数年で急速にLTEが拡大するの可能性は低いとして、「LTEの先行者利益は少ない」と予測する。

 こうした厳しい市場傾向が続くと、通信キャリアの通信量あたりの収入はどうなってしまうのか――小津氏は「とある大きい国の通信キャリア」を例に、10年後の収益構造をシミュレートしてみせた。


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 小津氏が例に挙げた通信キャリアは現在、ユーザー1人あたりの通信が月平均で200Mバイトほど発生し、ARPUは月50ドル程度だ。これを1Gバイトあたりの収入に換算すると月250ドルとなる。しかし、同地域ではスマートフォンの普及などから通信量は年間40%のペースで増加し、ARPUは他キャリアとの価格競争の中で年間5%程度の減少が予想される。すると、2020年には1Gバイトあたりの収入が98%減少し、わずか月5.2ドルに落ち込むことになってしまう。

 「つまり、通信事業者は現在の1GバイトあたりのROI(投資収益率)を維持するために、TCO(総保有コスト)を98%削減しなくてはいけないということ。ベンダーは100万円で売っていたものを2万円にしなければいけない。あり得ないことだが、これがグローバル市場の現実」(小津氏)

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