米Qualcommはスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2011」(MWC)で、第3世代の「Snapdragon」や初公開となるP2P無線通信技術「FlashLinq」、DLNA対応のAndroidアプリ「Skifta」、無線充電技術「WiPower」などを展示した。
Qualcommはスマートフォン向けチップセットライン「Snapdragon」を展開しており、すでに75機種以上が発表されている。展示ブースでは第3世代のSnapdragonを展示した。
第3世代のSnapdragonは、デュアルコアの「APQ8060」「MSM8660」などをラインアップ(各コアは1.5GHzまで対応)する。APQ8060はモデムなしのアプリケーションプロセッサで、米Hewlett-Packardのタブレット端末「HP Touch Pad」への搭載が決まっている。
デュアルコアを搭載したスマートフォンが各メーカーから登場しているが、Qualcommは自社デュアルコアの「非同期」という特徴を強調する。他社製のデュアルコアは同期型で2つのコアが一緒に動作するため効率が悪いが、Qualcomm製は非同期なので消費電力を押さえられるという。
グラフィックコア「Adreno220」が入ったAPQ8060は、自社開発の物理エンジンを搭載しており、デモ画面では炎などの微細な部分までが美しく表示されていた。Adreno220はグラフィックの性能が前世代の2倍に改善したという。
ブースでは、標準化に向けた作業が進んでいる4G規格「LTE-Advanced」に対するQualcommの取り組みも展示。周波数を時分割で分け、干渉低減技術を利用することで、周波数内で方式が異なるネットワーク(ヘテロジニアス)を入れてキャパシティを増やす――というアイデアを紹介した。
壁の向こう側にターミナルと基地局を設置して行ったデモでは、LTE-Advancedのターミナルを搭載した車が移動すると基地局がピコセルにオフロードし、全体の性能を改善する様子を紹介。「通信キャリアは効率よくキャパシティを増強できる」とQualcommのスタッフは説明する。実現すれば、周波数帯の問題を解決するアプローチとなりそうだ。
P2Pを利用した近接無線通信技術「FlashLinq」は、MWCで初めて公開される最新技術だ。基地局などのインフラを利用せず端末が直接データをやり取りするもので、エリア内で端末同士が発見しあい、通信できる。通信範囲は約1キロメートルで、数千台の端末を収容できるという。
無線LAN機器同士が通信する「Wi-Fi Direct」と似ているが、ライセンスバンドを利用する点が異なる。また、同期を使って無線通信時間を減らすことで消費電力をおさえられるとのことだ。今後、Qualcommは韓国SK TelecomとFlashLinqのトライアルを開始することになっている。
ブースではQualcommが開発したAndroidアプリ「Skifta」も披露された。家電を相互接続するための標準規格であるDLNAを利用して、Wi-Fi経由でホームネットワーク上にあるDLNA対応のテレビやPC、プレイステーション 3などをSkiftaでコントロールし、ある端末内のメディアを他の端末にストリーミングできる。
スマートフォンに保存した音楽や写真をテレビにストリーミングしたり、レコーダーに保存した動画を他の端末で再生したりといったことができ、遠隔にあるSkiftaアカウントを持つメディアも操作できる。デモでは、バルセロナから、米国にあるPC内にある音楽ファイルをデモ会場内のテレビ上で再生してみせた。インターネットにある「Picasa」「Facebook」「Napster」などのメディアにSkiftaからアクセスすることもできる。
Skiftaはバージョン2.2以上のAndroidに対応しており、Androidマーケットから無料でダウンロードできる。日本からのダウンロードも多いとのことだ。
ほかにもワイヤレス充電「WiPower」も展示していた。無線電力シグナルを受け取るレシーバーをつけたスマートフォンを送電マットに置くと充電を開始するという近接場磁気共鳴技術だ。電力は15ワット、範囲は50センチぐらいまでという。
2011年後半には商用化の見通しで、家具メーカーなどと話を進めているとのことだ。
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