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» 2011年07月13日 11時49分 公開

“衝動買いメディア”だった携帯電話、でもこれからは――スマホ時代のEC像を探る

スマートフォンへのユーザーシフトが進む中、モバイルECのあり方はどう変化するのか――。モバイルサービスに特化した総合開発企業、ゆめみのソリューション担当者が、同社の手がけたECサイトのデータを交えつつスマートフォンECの“傾向と対策”を語った。

[山田祐介,ITmedia]
photo ゆめみ ソリューション事業部の片岡慎平マネージャー

 2015年中に日本の携帯電話ユーザーの半分がスマートフォンに移行するといった予測もされるなど、スマートフォン勢いは日に日に加速している。こうした動きは、フィーチャーフォンで発達した日本のモバイルECにどんな変化をもたらすのか。EC研究会が7月8日に行ったセミナーで、ゆめみ ソリューション事業部の片岡慎平マネージャーが「スマートフォン台頭時代のECの国内成功事例と今後の処方箋」と題して講演した。

 ゆめみはモバイルサービスに特化した総合開発会社。2000年創業の若い会社ながら、日本マクドナルドやNTTドコモといったナショナルクライアントへのサービス提供実績を持つ。片岡氏は営業の立場から、伊勢丹などのECサイト構築案件などに関わってきた。講演では、ゆめみが手がけるモバイルECサイトのデータなどを踏まえつつ、スマートフォンにおけるECの傾向や対策を話した。

スマートフォンで“ケータイ向けEC”と“PC向けEC”の傾向が混ざり合う?

 片岡氏は従来のフィーチャーフォン向けECを「きっかけ買いのメディア」と表現。隙間時間に利用されることが多く、メールマガジンなどのプッシュ型情報配信がユーザーの衝動買いを後押しする――そんな傾向がこれまでのモバイルECの特色だったと説明する。ユーザーは女性が多く、特に20代、30代を中心に人気がある。商材には向き不向きがあり、衣料品や健康用品といったものの人気が高い一方、PCや食料品などはあまり売れないという。


photophoto モバイルECの商材の構成比をみるとPCなどはあまり扱われていないことが分かる(写真=左)。ユーザーに情報をプッシュ配信するために、メルマガを配信するのが従来型モバイルECの王道だった(写真=右)

 しかし、スマートフォンECの世界では、異なる傾向もでてくると片岡氏は仮説を立てる。「隙間時間だけでなく、私用時間での利用も増えるのと考えている。私自身、スマートフォンで行動が変わった。PCを立ち上げなくなり、“PCの替わり”としてスマートフォン使うようになった」(片岡氏)

 PC向けECは「納得買いのメディア」であり、検索エンジンなどを駆使してユーザーが能動的に情報を見つけ出し、比較などをした上で購入する傾向があると片岡氏は説明。スマートフォンが普及することで、こうしたPC向けECの傾向がモバイルECにも流れこんでくるとみる。実際、同社の手がけたスマートフォン対応のサイトでは、1ページあたりの閲覧時間がケータイサイトよりも長い傾向にあり、検索サイト経由でのアクセスも増えるなど、PCに近い利用スタイルが認められるという。

 さらに片岡氏は、フィーチャーフォン向けECではマイナーだったPCや家電といったジャンルの製品も比較的購入されているといったデータも出ていると話し、「スマートフォンのECでは商材の向き不向きの差が少なくなる」と予想する。


photophoto 片岡氏の考えるモバイルECの変化(写真=左)。ケータイECでは少なかったPCや家電が比較的買われている(写真=右)

スマートフォン対応のトレンドと対策

 同社の調べでは、売上上位のECサイト20社のうち12社が何らかのスマートフォン対応を行っているという。スマートフォン対応のパターンとしては、Webサイトの最適化やネイティブアプリの配信などがあるが、中でも片岡氏が主流とみるのが、(1)HTML5などで構築したスマートフォン向けサイト、(2)サイトをベースにしたアプリ――というハイブリッド展開だ。例えば、Amazonやニッセン、ZOZOTOWNといったECサイトがこの手法を取り入れている。

 ただし、商品をカートに入れたあとはPC/ケータイサイトに遷移するものが多いという。20社のうち購入までをスマートフォンに最適化しているのは6社のみとなっている。


photo 売上上位サイトのスマートフォン対応状況

 スマートフォン対応においては、情報量のコントロールが重要だと片岡氏はアドバイス。PCのようなリッチコンテンツを表示できる反面、情報過多だと使い勝手が悪くなるとし、ケータイサイトのノウハウを持つ日本のECサイトは海外よりも洗練されたものが多いとみる。例えば、片岡氏が高く評価するサイトの1つ「ちびギャザ」は、アイコンの大きさや、ソフトウェアキーがポップアップした状態での使い勝手などに配慮が行き届いているという。

photo 「夢展望」のスマートフォンサイト例

 また、「スマートフォンユーザーはアプリの直感的な操作性を知っている。サイトにおいても使い慣れたアプリと同じ体験性が求められる」とも。同社が制作を担当したECサイト「夢展望」では、HTML5、CSS3、JavaScriptを駆使してモバイルサイトを構築し、スワイプをはじめとするタッチ操作への最適化を図っている。

 しかし、気になるのはこうした作りこみが利用の活性化につながるかだ。片岡氏は、「もう少し長く観測しないと分からない」としつつも、変換ソリューションなどを利用した簡易対応サイトと本格的な対応サイトとでは売上の伸びに差がでるとの見方を示し、自社が制作したサイトのデータを紹介した。

データでみるスマートフォン対応の効果

 簡易対応サイトの1例として挙げたのが、20〜30代の男性ユーザーが中心で、PC利用の割合が多いといった傾向を持つ“人気作品のグッズ販売サイト”。画像サイズなどを自動変換でスマートフォンに最適化している。

 このECサイトでは、スマートフォンサイトが占めるページビュー比率は全体の約6%とまだ少ない。一方で、売上比率は全体の約6%とページビュー比率と同等に推移している。また、ケータイ/PCの売上がほぼ横ばいにもかかわらずスマートフォンからの売上は3カ月で約1.6倍に。片岡氏は「対応すれば買ってもらえる」と印象を述べる。


photo ページビューの割合と売上の割合はほぼ同等

 本格対応サイトの1例は、モバイルの売上が8割を占める“商品の安さや回転率の速さで勝負する女性向けECサイト”だ。同サイトはHTML5、CSS3、JavaScriptを駆使して構築し、タッチパネル操作を前提にしたUIを採用。影やグラデーションの効果をはじめとするデザインのリッチ化も図っている。

 こちらもスマートフォンサイトのページビュー比率はまだ全体の4%程度と少ないが、売上比率は全体の7%とやや多くなっているという。「使いやすい作りこみが影響しているのかもしれない」(片岡氏)。また、簡易対応サイトにおけるスマートフォン経由の売上は月によって増減を繰り返しているが、本格対応サイトでは右肩上がりに増えており、3カ月で対応前の2.5倍以上になっている。


photophoto 本格対応サイトではページビューよりも売上の比率が若干高くなった(写真=左)。同サイトではスマートフォン対応した1月からスマートフォン経由の売上が右肩上がりになっている一方、簡易対応サイトでは月によってばらつきがある(写真=右)

 売上が増加した背景には、スマートフォンユーザーの急増やスマートフォン向けアドネットワークを使った広告展開の影響もあると片岡氏。しかし、スマートフォンへの買い替えが進むことで、今後1年でECサイトのアクセスの2〜3割をスマートフォンが占めると同氏は予測しており、「売上増に対する寄与は大きい」とみている。

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