増える“自然発生的BYOD”、放置は危険を招く――課題も多いBYOD、対応策は:ワイヤレスジャパン 2012(1/3 ページ)

» 2012年06月15日 18時27分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 社員の私物スマートフォンを業務に活用する――。BYOD(Bring your own device)と呼ばれる、こんなスマートデバイスの導入スタイルが注目を集めている。

 BYODは、企業が業務用端末の購入コストをかけることなく、スマートフォンによる業務効率化が図れるとあって、導入検討する企業が増えている。しかし、導入にあたっては、解決すべきさまざまな課題もある。

 実際のところBYODは企業にどんな導入効果をもたらすのか、課題はどこにあるのか、その課題はどんな方法で解決できるのか――。ワイヤレスジャパン2012のセミナーに登壇したNTTデータ 技術開発本部 セキュリティ技術センタ シニアスペシャリストの山田達司氏がBYODを取り巻く状況について説明した。

Photo 講演した山田達司氏は、PDAブームのさきがけとなったPalm OS端末の日本語化ソフトを開発したことで知られる。アプリも多数開発しており、“Palmの神様”と呼ばれていた

BYODの2大効果は「コスト削減」と「従業員満足度の向上」

 BYODの導入で見込める効果として山田氏が挙げるのが、「コスト削減」と「従業員満足度の向上」だ。コスト削減については、テストケースとして100人の従業員の業務用スマートフォンをBYOD化した場合のコスト削減効果を紹介。端末購入費は従業員が負担し、業務利用分として会社が月額2000円の補助を行った場合、年間およそ約800万円のコスト削減が可能になるという。

 同氏はあわせて、社内3600台の業務用携帯電話とスマートフォンを解約し、代わりに従業員の私用端末を業務で使い始めたNTTコミュニケーションズの事例も紹介。業務で利用した分の通話料金を会社が払う形で運用したところ、IP電話化による効果も合わせた数字ながら、年間4億7000万円かかっている通話料のうち、1億3000万円を削減できる見込みだ。

 従業員満足度については、使い慣れた端末をそのまま業務に利用できる点や、会社から貸与されていない社員が自らの仕事のやり方を改善するためにスマートフォンを利用できることが、満足度を向上させると山田氏。また、企業貸与の端末では、配布のタイミングによって新端末と旧端末が混在することもあるが、BYODならこうした不公平感も解消できるという。

Photo BYOD導入の2大効果は、コスト削減と従業員満足度の向上

 BYOD発祥の地である米国では、「2011年の段階で米企業の72%が既にBYODを導入しているという調査結果もある。(PCのBYODも含めて)2014年までには、ほぼ100%の企業に広がるといわれている」(山田氏)というくらい普及が進んでいる。金融や保険、ヘルスケア産業といった機密性が高い情報を扱う“セキュリティにうるさい”企業でも、「機密性が高い情報をモバイルで活用することで、情報の質が上がる」という理由から、BYODの導入率が高いそうだ。

Photo 米国ではBYODの普及が加速している

 フォードモータースもBYODを導入した1社で、8万人の社員のうち、会社が業務用携帯電話を支給していない7万人について、社内メールにアクセスするために私物ケータイを使うことを許可するプログラムを用意した。ヘルプデスクを設置せず、社員が相互に助け合うコミュニティを作ることでサポートコストを抑えるなど、ユニークな取り組みを行っているのが特徴だ。

Photo フォードの導入事例。セキュリティを確保した上で、7万人超の従業員が個人の端末から業務メールにアクセスできる仕組みを提供した

「コストの分担」「私的利用防止」など、課題も

 いいことづくめのように見えるBYODだが、課題も多い。社員の私物を業務に利用するとなると、企業側は業務で利用した分の通話料や通信料をどのような形で負担するかを考えなければならない。また、人によって使う端末が異なるため、企業のシステムに接続する場合の検証が複雑化し、そのコストが多額になる恐れもある。

 ほかにも、就業時間中の私的利用、企業の機密データの漏えいをどう防ぐかといった問題もある。「個人のデータが入った端末を業務に使う場合、運用の仕方によっては社員のプライバシーに関わる情報が会社から見えてしまうこともある。また、端末を落とした場合には、会社の意志で強制的に中身が消去されることもある」(山田氏)

 コストについては、一部を会社が負担するケースも出始めているようだ。「私用と業務で使った分の通話料を別に計算して、業務に使った分だけを会社が負担する方法も一般的に行われている。分計が難しいパケット料金は、一部を会社が補助するという考え方もある」(山田氏)。

 なお、スマートデバイスの企業導入については、新たに「COPE(Corporate Owned Personal Enabled)」という概念も登場しているという。これは、端末は企業が購入して配布するが、端末選びを社員に任せ、仕事で使う以外は私用での活用も許可するという運用方式だ。企業にとってコストメリットはないものの、新たにコストをかけることなく従業員の満足度を高められることから、注目されはじめている。

Photo BYODを導入する上での6つの課題と通信費分担の一例

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