スマートデバイスは今や、業務の効率化や生産性の向上に欠かせないツールになりつつある。導入を検討する企業は増える一方だが、自社のニーズを見極め、それに合った業務システムを開発するには時間やコストがかかることから、なかなか導入に踏み切れない企業も多いという。
こうした中、直感的な操作でiPadやiPhoneを活用した業務システムを開発できるとして注目されているのが、ファイルメーカーシリーズだ。
米Appleの子会社として知られる同社が提供するのは、業務用データベースを開発するためのソフトウェア。企業の業務に欠かせない顧客管理、受発注管理、在庫管理、経費精算、資産管理、タスク管理、プロジェクト管理などといった、“データを集積して活用する”業務に必要なシステムを直感的なUIのツールを使って開発できるのが特徴だ。
開発した業務システムを、同社が用意する無料アプリ「FileMaker Go」を通じてiPhone/iPad向けに容易に展開できるのも強みの1つ。ITリテラシーが低い人でも使いこなせるUIの開発を支援するツールも盛り込まれており、幅広い用途、幅広い年齢層の人がiPadやiPhoneを通じて利用できる業務システムを構築するのに一役買っている。
このような特徴を備えるファイルメーカー製品だが、さまざまな機能を備えているだけに、実際のところどのようなことをどこまでできるのかが見えづらい面もある。11月29日から30日にかけて開催された同社の年次イベント「FileMaker カンファレンス 2012」のショウケースに出展された各種ソリューションから、その可能性を探ってみた。
なお、ショウケースのソリューションは、ファイルメーカー製品を使った業務システムの受託開発企業が開発したもの。ファイルメーカーは、こうした受託開発企業が多いのも特徴で、自社開発したシステムのさらなる高度化や基幹システムとの連携、外部機器との接続などを検討する際に手助けしてくれる
マラソン大会で出た傷病者の救護支援システムをiPhoneとFileMaker製品で開発したのが、イエス ウィ キャンだ。
コースが長いマラソン大会では、救護所が複数カ所に設置されるため、どこにどの程度の傷病者が出ているかを本部が把握しづらい面がある。また、ボランティアスタッフも多いため、診断や対応にばらつきがある点も課題になっていたという。
同社は、傷病者が出た場所をプロットする機能や、救護所のスタッフがiPhone内に用意された質問に答えることで、傷病者のレベルを確認できる機能を装備したシステムを構築。診察を開始するとともに位置情報が本部のシステムに送信され、傷病レベルが確定するとリアルタイムで本部側に反映されるため、大会全体の傷病者の状況を一目で確認できるようになった。「重症と判定された場合は本部に電話がかかるようになっているので、素早い対応が可能になる」(説明員)
また、「応答があるかないか」「呼吸は1分間に何回か」といった質問に答えていくことで重傷度が分かるよう設計されているので、症状の見逃しなどを防ぐことができ、診断の質の均一化にも貢献したという。
保育園の保育師が、園児の様子を親に伝えるのに使うのが連絡ノート。昼寝の時間や寝付きの様子、日々の活動状況などを知らせるノートだ。
現在は紙ベースでの管理が主流になっている連絡ノートを、iPadを使ってデジタル化しようというのが、トップオフィスシステムの「保育園園児情報管理システム」だ。
同社が開発したシステムは、園児の活動記録を保育士がiPadから入力できるようにするもの。システムには家族情報や緊急連絡先、検診履歴や予防接種の履歴管理などの入力項目も用意され、園児の情報を総合的に管理できる。
入力は極力、タップ操作で行えるよう設計したといい、PCでは入力のハードルが高いと感じていた保育師でも、使いこなせていると説明員。また、園内で複数台のiPadを利用する場合はサーバ用のPCとFileMaker Proが必要となるが、iPad単体で使う場合は、無料のiOSアプリ「FileMaker Go」と無料で配布している同システムのテンプレートをダウンロードすれば、すぐ使い始められるという。
保護者向けの一斉メール送信機能や教職員の人事管理機能、在籍したクラスの履歴管理機能はオプションサービスとして用意しており、園ごとのカスタマイズにも対応する。
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