南国に必要な電気バスの姿とは、沖縄で実証運用を開始電気自動車

沖縄県は車社会だ。同時に県全体として化石燃料への依存度が極端に高い。このため、電気で走る車、特に公共交通機関であるバスの電気化が望まれている。2013年10月から始まる電気バスの実証運用を紹介する。

» 2013年09月09日 17時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 沖縄県は一次エネルギーに占める化石燃料の比率が全国と比較して高い。99.5%が化石燃料由来だ。これは水力発電の可能性が低いことが原因である。全国平均のエネルギー自給率が約4.8%であることに対し、沖縄県は約0.5%と低い値である。このため、化石燃料に依存しない再生可能エネルギーの導入に熱心だ。

 沖縄県が進める電気バスの取り組みもこの一環だ。沖縄県の電力はほぼ100%が化石燃料由来だが、将来の再生可能エネルギーの導入を考えると、化石燃料を使わない電気バスの研究開発が必要だ。「沖縄県のような海洋性亜熱帯地域における電気自動車のノウハウはまだ多くない。蓄電池に与える影響はもちろん、エアコンの使用頻度が高いことなどの影響を調べる必要もある」(ピューズ)。

 ピューズは車両の開発・施策などを手掛ける東京アールアンドデー(東京R&D)の関連会社)。電気関連の部品、モーターやバッテリーパックの開発・製造を担当する*1)。ピューズは2011年度の沖縄県「EVバス開発・実証運用事業」を受託し、2012年に第1回目の実証運用を終え、2013年10月1日から11月30日に第2回目の実証運用を予定する。

*1) 例えば、ピューズは2013年8月に「平成25年度ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」を受け、全長2550mmの2人乗りで荷室が付く超小型モビリティ「実用的超小型電気自動車」の開発を始めている。

 実証運用は実運用に近い形で進める。ピューズが沖縄県、那覇バス、2013年に設立された東京R&Dの関連会社EVプロダクツ沖縄の協力を得て、那覇市の県庁前と県立医療センターを結ぶ1周約40分のコース(那覇バス系統番号0、寒川開南EV線)に2台の電気バスを投入する(図1)。運行回数は1日8回だ。

 図1は第1回の実証運行の際の資料であるため、時計回りと反時計回りにそれぞれ「1便/日」とあるが、今回は「4便/日」である。

図1 運行コース。出典:ピューズ

電池とモーターをつければよいのか

 ピューズが開発したバスは、本土で通常の中型バスとして利用されていた中古車を改造したものだ(図2)。

図2 電気バス「ガージュ号」。右が2013年に改造した新型。出典:ピューズ

 通常のバスを電気バスに改造するとは、基本的にはエンジンと燃料タンクを外し、その代わりモーターとリチウムイオン蓄電池を取り付けることだ。「運行コースが決まっているため、走行距離はそれほど必要ないが、高い電池性能、特にエネルギー密度が高い電池が必要だ。人を乗せるため、バスとはいっても重い電池では困る」(ピューズ)。

 しかしこれだけは不十分だ。「中型バスはブレーキをエンジンの負圧で倍力している。エアコンはエンジンの力でコンプレッサーを回し、エンジンの暖気で加熱している」(ピューズ)。これを電池とモーター以外に追加する補機で実現する必要がある。

 さらに難しいのは従来のバスと同じ操作感覚を再現することだ。「モーターは回転数が低いときにトルクが強い。エンジンとは違う特性だ。坂道発進であれば、ガソリンエンジン車はクリープトルクの力を利用して車体の位置を保つことができるが、モーターにはそれがない」(ピューズ)。

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