小売全面自由化に向け、電力会社各社が新料金プランを続々と発表している。料金値下げの切り札となる原発の再稼働状況を見守りつつ、「今より安くなる」を掲げて電力会社に挑む新規参入事業者が続々と登場する中、各社はどんな料金プランを設定したのか。
2016年に入って電力会社各社が同年4月から始まる電力の小売全面自由化に向けた新料金プランを続々と発表している。最大顧客を抱える東京電力の発表を皮切りに、現時点で沖縄電力を除く9社の新料金プランが出そろった。
各社の新料金プランの傾向を見てみると、基本料金や電力使用量料金の単価そのものは従来プランと大きな差はない。料金単価を安くする場合は、利幅を確保できる使用電力量が多い家庭に向けたプランで、300kWh(キロワット時)以上の電力単価を格安にするといった場合が多い。料金単価だけを見れば、現時点で使用電力量が少ない家庭にそこまで大きなメリットがあるとは言いきれない状況だろう。
電力会社の電気料金は、原価をもとに一定の利益を上乗せする「総括原価方式」で算定している。この原価が2011年の東日本大震災以降、原発が停止し燃料費も上昇した影響で大きく増大した。そこで各社は電力料金の値上げと同時に、内部コストの調整などを推し進めてきた背景がある。自由化が迫る2015年までこうした調整を続けてきており、現時点で全ての料金単価を大幅に下げた新プランを設定することは難しかったとみていいだろう。しかし今後、発電コストの安い原子力発電所の再稼働がさらに進んだ場合、値下げに踏み切ることは確実だ。
とはいえ目前に迫る2016年4月から激しい顧客獲得競争が始まる。新旧電力の争いだけでなく、これまではありえなかった電力会社同士の競争も生まれる。現時点で何かしらのメリットをアピールしなくては、既存顧客のつなぎとめは厳しい。そこで電力会社各社では「最初の一手」として、基本的な料金単価は踏襲しつつ、時間帯割引などのライフスタイルに合わせたお得なプランやポイントサービス、他者との提携による割引など、工夫をこらした料金戦略を打ち出している。既に本連載「電気料金の新プラン検証シリーズ」では、東京電力、関西電力、中部電力のシェア上位3社の新料金プランについて解説した。本稿では沖縄電力を除く、その他6社が発表した新料金プランについてそれぞれのポイントを紹介していく。
北海道電力(北電)は2016年1月18日に、同年4月以降の家庭向け料金プランについて、現時点では従来料金をそのまま継続する方針を発表した。ただし、暖冷房エアコンやIHクッキングヒーターなどを利用する家庭がお得になる料金メニューを新設する。この料金は近く発表する予定だ。
北海道では既に北海道ガス(北ガス)が電気とガスのセット販売で、北電の現行料金より最大6%ほど安くなる家庭向け料金プランを発表している。電源には再生可能エネルギーを活用し、原発に依存しない姿勢を示している(図1)。一方の北海道電力は現在、泊原発の再稼働手続きを進めているところで、こちらの見通しが立つと低価格なプランを発表する可能性も高い。2017年に始まるガスの小売自由化も含め、北海道では2社の競争が激化していきそうだ。
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