再エネ導入で変わる電力系統運用、将来必要な「調整力」の試算結果と今後の課題エネルギー管理(5/5 ページ)

» 2023年10月27日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
前のページへ 1|2|3|4|5       

中長期的な調整力設備量の算定方法

 中長期的な調整力設備としては、新たな脱炭素型調整力リソース等の設備量が増加することが想定されるが、現時点、これを正確に予想する方法は無い。

 このため、保守的な仮定を置くとの前提のもと、2023年度供給計画(最終年度:2032年度)のうち、既存設備分のみを考慮することとした。新設は対象とせず、既存設備の廃止は除外することにより、全国9エリア合計で調整力設備量は4%程度減少すると仮定した。

図9.中長期の調整力設備量の算定方法 出典:調整力及び需給バランス評価等に関する委員会

中長期での調整力必要量・設備量の試算結果

 中長期の調整力必要量については、複合約定ロジックを踏まえた合成必要量が算出できないことから、機能ごとの必要量を充足しているか否かを確認した。ただし、GF、LFC、EDC機能については重複する領域があるため、GF必要量分についてはLFCおよびEDC用には使用せず、LFC設備量・EDC設備量から控除するなどの手法を用いた。

 広域機関でこれら一定の条件に基づき試算したところ、全てのエリアにおいて調整力必要量に対する調整力設備量は、中長期でも充足しているとの結果が得られた。ただし、再エネ増加に伴う調整力必要量の増加により、現在よりも調整力設備量の裕度が小さくなる傾向がみられる。

図10.中長期での調整力必要量と設備量の試算結果 出典:調整力及び需給バランス評価等に関する委員会

 試算では、さまざまな点で保守的な前提を置いているものの、火力の退出が想定よりも早く進行するといったリスクもある。

 今後の委員会では、変動再エネ自身に調整機能を具備させることなど、新たな調整力リソースの確保に向けた検討や、容量市場等において調整力を中長期・計画的に確保する施策の在り方について、検討を進める予定としている。

前のページへ 1|2|3|4|5       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.