CCS事業法に基づくCO2貯留事業の制度検討 閉鎖後のJOGMEC移管は10年以降に第2回「CCS事業制度検討WG」(4/4 ページ)

» 2025年10月17日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]
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貯留サイトの閉鎖・貯留事業の廃止手続き

 CO2の圧入停止後、当該貯留事業を終了しようとする場合には、貯留事業者はCCS事業法に基づき、貯留サイトの閉鎖措置を実施することが義務づけられている。

 貯留事業者はあらかじめ「閉鎖措置計画」を作成し、主務大臣の認可を受けたうえで閉鎖措置を実施し、当該閉鎖措置の終了から一定期間(後述)の経過後に、貯留事業の廃止の許可申請を主務大臣に行う。

 大臣から廃止許可を得ることにより、貯留サイトのモニタリング等の管理業務がJOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)に移管することとなる。

図6.閉鎖制度・事業廃止制度に関する手続フロー 出典:CCS事業制度検討WG

 国が貯留事業の廃止の許可を判断するに当たっては、CCS事業法に基づき、「1.CO2が安定的に貯蔵されており、その状況が将来にわたって継続される」「2.JOGMECに対して拠出金が納付されている」「3.JOGMECへの引継ぎ等が適切に実施されている」という許可基準への適合が確認される。

「閉鎖措置」の内容

 CCS事業法における閉鎖措置の内容は、ISO 27914を参考として、「①全ての坑井(坑口)の閉塞」「②貯留事業に係る不要な工作物の撤去」「③CO2の安定貯蔵を確保するための措置」とする。

 また、貯留事業の廃止の許可後においてJOGMECが観測井として活用する等の理由により、主務大臣が認めた場合には、一部の坑井の閉塞を不要とするほか、貯留事業に係る一部の工作物についても残すことを可能とする。

表5.閉鎖措置の内容 出典:CCS事業制度検討WG

貯留事業の廃止の許可申請が可能となる期間

 先述のとおり、貯留されたCO2は時間が経つほど安定化へ向かうと考えられるが、非常に長期にわたるモニタリングを民間企業に求めることは現実的ではなく、仮に求めた場合、貯留事業への参入は進まないと懸念される。

 このため、諸外国のCCS関連法でも、貯留事業の終了後、一定の年数経過後に管理業務等を国等に移管する制度が設けられている。

表6.諸外国における移管可能期間の概要 出典:CCS事業制度検討WG

 日本のCCS事業法でも同様に、主務大臣が貯留事業の廃止を許可した後、貯留サイトのモニタリング等の管理業務をJOGMECに移管することが定められており、移管を認める期間を何年間とするかが論点となる。

 WG事務局からは、貯留事業の廃止の許可申請が可能となる期間として「10年」という案が示され、CO2圧入終了日から10年を経過した日以後に、貯留事業の廃止の許可申請を行うことができる、とした。

 なお表6の諸外国の移管可能期間の多くは、標準的な年数が示されており、CO2の封じ込めが確認できれば短縮可能な年数とされている。日本では制度の運用上、「短縮」という手法を取ることが難しいと想定されるため、最低限の年数を示す手法として、貯留事業ごとに廃止タイミングの適切性を判断することとした。

 貯留事業の廃止の許可に当たっては、貯留区域におけるCO2プルーム(圧入したCO2が地下で拡がっている領域)や地下構造に照らし、CO2が安定的に貯留されているか等について、貯留区域毎に確認するため、単に10年を経過したことだけで、貯留事業の廃止が許可される(モニタリング等の管理業務がJOGMECに移管される)わけではない。

 WGでは次回以降、事業者がJOGMECに納付すべき拠出金の金額・算定式、拠出タイミング等について検討を行う予定としている。

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