モバイルワークを全社導入して2年で分かった、成功するために必要なことポリコムのモバイルワーク事例(2/2 ページ)

» 2013年03月11日 13時30分 公開
[上口翔子Business Media 誠]
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業務規則にモバイルワーク用のガイドラインを追加

 震災前にポリコムが設けていたモバイルワークの目的は、緊急事態への備えが主なところだった。そういう意味では、震災直後から徹底できたのは成功だといえる。

 だが備えていたとはいえ、実際に活用していたのは営業部など限られた部署のみ。それも移動中や外出先でビデオ会議を活用するといった使い方だ。

 震災後は、強制的なモバイルワークが解けた後も全社員が継続して権利を持っている。業務効率向上のために活用するだけでなく、育児や介護など事情がある人はもちろん、天候で交通機関に影響が出そうな日は午後だけ出社にするなど柔軟に切り替えられる。

 これらは就業規則に追加する形で策定したガイドラインに基づくもので、社員にもガイドラインの共有を目的としたトレーニングをあらためて行った。社員からは「モバイルワークができるのは『この業種の人だけ』という意識がなくなった。だから、モバイルワークをやりやすくなった」といった声が聞こえるという。

ポリコムが設けているモバイルワークのガイドライン概要

  • 全社員を対象とする
  • モバイルワークの時間はすべて勤務時間に含まれる
  • モバイルワーク中は会社支給のPCを使用し、インスタントメッセージなどで連絡が取れるようにする
  • 評価方法はこれまで通り、各部門が年次に設定したものに基づく

 一方で「モバイルワーク中は、ちょっとした休憩などで離席しているとさぼっているんじゃないか、というプレッシャーがあるのも事実。スケジューラーに記入しているスケジュールを確認しておおよそその時間に何をしているかは分かるが、それでも社内にいるときよりも気をはってしまう」といった意見もあった。しかしそれも、震災時のモバイルワークを経験したことで、モバイルワークに対する各自の理解が広がり、当事者も気兼ねなくモバイルワークができる雰囲気が整っているという。

モバイルワーク成功の鍵は会社、家族の「理解」

 ポリコムに、モバイルワーク成功の秘訣を聞くと「一番は周りの理解」との回答が返ってきた。「まずは社長(会社のトップ)、そして同僚、上司、部下、家族。今の世の中はモバイルワークのためのツールや技術が十分にそろっている。そこで鍵になるのが、当事者が気持ちよく仕事に取り組める環境を整え、それを周りが認めること。会社に来なくてはいけない、上司と毎日顔を合わせないと業務をしたことにならないような固定概念があるとすれば、それは壊していかなくてはならない」(マーケティング部マーケティング統括の常松正樹さん)

 自分自身がしっかりしていて、会社の理解もあり成果物が出せていれば評価される。ポリコムの場合は震災後にモバイルワークをせざるを得なくなったことで、この意識が強制的に付いたのもある。これからモバイルワークを検討する企業は、まずは社長の理解からはじめ、むしろ社長自らが手本となって始めてみてはどうだろうか。

 こうしたポリコムのモバイルワークへの取り組みは、社団法人日本テレワーク協会が実施した「第13回(2012年度)テレワーク推進賞」で奨励賞を受賞した。オフィス勤務の概念にとらわれることなく、全社員を対象に業務の効率化とワークライフバランスを目指している点が評価されたのだという。

 自社製品を用いて迅速にモバイルワークができる環境を整えたのもそうだが、震災後は首都圏のレンタルオフィスを約20件契約するなど、各社員がどこからでも快適に仕事ができるよう取り組んでいる。


 モバイルワークは、一昔前であれば育児休暇の女性や外出の多い営業の人など、限られた職種が対象となることが多かった。今後は年代や性別を問わず、介護が必要な人や数カ月の治療が必要になった人など、「出社はできないが、業務はできる人」が職を失わずにすむ意味でも求められる制度となってくる。

 もしもモバイルワークができる職種なのであれば、数年後に必要となった場合に備えて、今回のポリコムのような取り組みや対応は参考になるのではないだろうか。

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