「どうぞ、お使いください」――エビでタイをつる思うように人の心を動かす話し方(2/2 ページ)

» 2013年09月19日 11時00分 公開
[榎本博明,Business Media 誠]
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ベテランセールスパーソンは心理的負担を巧みにとらえる

book 『心理学者が教える 思うように人の心を動かす話し方』(アスコム)

 何かもらったら、お返しに何かあげたい。親切にしてもらったら、お返しに規切にしてあげたい、相手の役に立ちたい。そんな義理がたい気持ちが、あとで後悔するような行動を招くことがある。

 心理的負担が蓄積してくると、何とかしてそれを解消したいという気持ちが生じる。そこを巧みにとらえるベテランセールスパーソンにコロッとやられてしまうのだ。

 近所にやはり保険契約を結んだ人がいた。2つの保険会社のセールスレディから攻勢をかけられ、どちらも断りきれなくなり、ダンナと奥さん(本人)とそれぞれ1社ずつ契約を結んだそうである。ほんとうに人のよい奥さんなのだろう。

 契約後、A社のセールスレディの訪問はパタリと途絶えた。ところが、B社のセールスレディは、契約後にお礼と称してかなり豪華な贈り物を持ってきたという。

 この贈り物は、契約前の勧誘中であったならそれほどのインパクトをもち得なかったかもしれないが、これはかなりのインパクトを与えた。

 「もう何をくれても契約は済んじゃったんだから、何の意味もないのにねえ」

 と言いつつも、その奥さんは、

 「今度何かのときにはあの人にお願いしようかしら」

 と、まんざらでもなさそうであった。


(次回は「相手が乗り気でないときは、中途半端に切り上げる」について)

著者プロフィール:

榎本博明(えのもと・ひろあき)

心理学博士。1955年、東京生まれ。東京大学教育心理学科卒業。

東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授等を経て、現在、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした企業研修・教育講演等を数多く行うとともに、自己心理学を提唱し、自己と他者を軸としたコミュニケーションについての研究を行うなど、現代社会のもっとも近いところで活躍する心理学者である。

著書に、『「上から目線」の構造』『「すみません」の国』(日経プレミアシリーズ)、『「上から目線」の扱い方』(アスコム)、『「俺は聞いてない!」と怒りだす人たち』(朝日新書)、『心理学者に学ぶ気持ちを伝えあう技術』(創元社)など多数。


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