野球やバスケに明け暮れた小中時代挑戦者たちの履歴書(28)

編集部から:本連載では、IT業界にさまざまな形で携わる魅力的な人物を1人ずつ取り上げ、本人の口から直接語られたいままでのターニングポイントを何回かに分けて紹介していく。前回までは、青野氏のマイコンに目覚めた少年時代を取り上げた。今回、初めて読む方は、ぜひ最初から読み直してほしい。

» 2010年07月14日 12時00分 公開
[吉村哲樹,@IT]

 小学校高学年のころ、愛読していた月刊誌『子供の科学』の誌上で初めてマイコンのことを知り、あっという間に夢中になった青野氏。毎週日曜日になると、同誌を片手に自転車で市内のマイコンショップまで出掛けていった。そして、店頭に置いてあるマイコンにBASICプログラムを入力しては、「お、動いた動いた!」。

 やがて、NECの「PC-8001」「PC-8801」、富士通の「FM-7」といった、国産PCの始祖とも呼ぶべき商品が次々と発売され、マイコンは「パソコン」へ呼び名が変わる。

 「当時、『パソコンサンデー』という、パソコン少年たちにとってはバイブルともいうべきテレビ番組があって、まだPCも持っていないのに夢中になって見ていました」

 こうして日に日にPCに対する思いが募る中、ちょうど青野氏が中学校に上がるころ、父親がNECの「PC-9801」を購入する。青野氏の父親はそのころ単身赴任で不在だったが、しばらくの間これを自宅に設置していた。PCに恋焦がれていた青野少年は、当然のごとく飛び付く。

 「なぜ父親がPC-9801を買ったのかいまだに分からないのですが、とにかくプログラムをちょくちょく動かしては遊んでいました」

 当時の思い出を語る青野氏は、実に楽しそうだ。しかし、軽快な関西弁でポンポン冗談を飛ばす同氏の語り口からは、どうしてもパソコン少年というイメージが浮かびにくい。どちらかというと、外で元気に遊び回るやんちゃ少年というイメージの方がしっくり来る。子どものころ、スポーツなどはやっていなかったのだろうか?

 「小学生のころは、地元のリトルリーグのチームで野球をやっていたのですが、もうこれがビックリするぐらい下手でした! レギュラーになれる、なれないという以前のレベルです。ショートを守っていたのですが、最後の大会で同じポジションのレギュラーの子がけがをしてしまって、2番目にうまい子が勉強に専念したいといって辞めてしまった。思いがけず自分に出場機会が訪れたのですが、試合では当然のごとくトンネル!」

 本人いわく、「幼いころに負った心の傷」とのことだ……。しかし、今でも野球は大好きだという。事実、サイボウズ社内の野球部にも自ら参加しているとのこと。では、中学校に進学した後も野球は続けたのだろうか?

 「地元の公立中学に入ったのですが、野球部がなかったのでバスケットボール部に入りました。これがなぜか、意外とうまかったんです! ガードのポジションでレギュラーを獲ったりして……。野球よりバスケの方が向いていたみたいですね。でも本当は、野球の方が好きなんですけど」

 土日も休みなく練習していたというから、バスケットボール部の活動はかなりハードだったようだ。「まあ、中学校の部活動ですから、普通に打ち込みますよね」と青野氏は事もなげに語るが、心身ともに相当鍛えられたのではないだろうか。きっと同氏の人格形成に大きな影響を与えたに違いない、と勝手に思いを巡らせていたところ、

 「その当時、転機になったことがあるんですよ」

と、別の話題を振られた。その“転機”とは一体?

 「2年生のとき、生徒会の役員をやったんです。普通は生徒会役員というと3年生がやるものですが、なぜか2年生からやることになったのです」

 1年生の3学期のとき、担任の教師から「来年の生徒会役員に立候補してみたらどうだ?」と言われ立候補してみたところ、上級生より多い票を集めて当選してしまった。さらに、3年生のときには生徒会長まで務めた。

 青野氏いわく、このときの経験が同氏の生涯の中で1つの転機になったという。確かに2年生で役員に当選し、その後生徒会長とは、どこにでもいる平凡な中学生とは明らかに異なる。同氏のリーダーとしての素質は、その当時に養われたものなのだろうか?


 この続きは、7月16日(金)に掲載予定です。お楽しみに!

著者紹介

▼著者名 吉村 哲樹(よしむら てつき)

早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。

その後、外資系ソフトウェアベンダでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。


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