3日間寝ずにゲームをプレイし続ける挑戦者たちの履歴書(32)

編集部から:本連載では、IT業界にさまざまな形で携わる魅力的な人物を1人ずつ取り上げ、本人の口から直接語られたいままでのターニングポイントを何回かに分けて紹介していく。前回までは、青野氏が高校に入学するまでを取り上げた。今回、初めて読む方は、ぜひ最初から読み直してほしい。

» 2010年07月26日 12時00分 公開
[吉村哲樹,@IT]

 高校時代は、ひたすらPCゲームに明け暮れていたという青野氏。本人いわく、「当時は世の中を完全にナメていた」とのこと。こう聞くと、さぞや自堕落な生活を送っていたのではと思いきや、よくよく話を聞くとそうでもないようだ。部活や勉強も、それなりに押さえてはいたという。

 「部活は将棋部に所属していました。父親が将棋が得意だった影響で、小学生のころから何となく将棋を指していて、そこそこ強かったんです。高校に入学したときに、ぼくが将棋が得意だという話を聞いた将棋部の友人が誘ってくれたので、入部しました」

 青野氏の豪胆なキャラクターからすると、「将棋部」というのはちょっと意外な気もする。しかし、典型的な理系タイプで、ゲームの複雑なプログラミングまでこなしてしまうのだから、論理的な思考能力が極めて高かったのだろう。将棋には向いているタイプなのかもしれない。では、腕前の方はいかほどだったのか?

 「いやー、将棋も才能なかったですね。決して弱くはなかったんですけど、本当に強い子にはかないませんでした。真剣に将棋に取り組んでいる子たちは、膨大な数の定跡を覚えて、それを駆使して戦略を組み立てるんです。ぼくはまじめに定跡を覚えることなく、いわば『自分勝手流』でやってましたから、穴だらけでした」

 それでも、団体戦で県大会まで進出したというのだから、かなりのレベルだ。第一、定石も知らずにそのレベルまで行ってしまうのだから、これはこれですごいことなのかもしれない。

 また、「高校に入った時点で勉強にまったく力が入らなくなってしまった」という青野氏だが、ではまったく勉強することをやめてしまったのかというと、そうではなかったようだ。コンピュータ支援教育(CAI:Computer Aided Instruction)の専門家になるという夢を追うため、大学に進学してコンピュータを学びたい。そのためには、大学受験に必要な学力は身に付ける必要がある。

 「中学や高校の勉強とは違い、大学では自分が本当にやりたいコンピュータの勉強だけに専念できると思っていたんです。だから、大学に進学するための最低限の勉強だけは続けていました。3年生のときに文系クラスと理系クラスに分かれたのですが、ぼくは理系の選抜クラスに下から数番目ぐらいの順位で何とか入っていました。先頭集団の一番後ろで、何とか離されないよう食らい付いていた感じです」

 3日間寝ずにプレイし続けるほどPCゲームにはまっていたにもかかわらず、勉強も何とかトップクラスのレベルを維持し、なおかつ部活までもこなす。青野氏のエネルギッシュな少年時代のエピソードから、1つのことにとことんのめり込むタイプなのだと勝手に想像していたが、実はマルチタスキング能力も極めて優れていたようだ。筆者のようにシングルタスクでしか物事を処理できない人間とは大違いだ。

 しかし、勉強に関しては科目の得手・不得手がはっきりしていたという。典型的な理系タイプだった青野氏は、物理や数学は得意だったものの、地理や古文、漢文といった文系科目はさっぱりダメだった。「こんなことを勉強しても、一体何の役に立つのだ?」と思うと、さっぱり学習意欲がわかなかったのだという。

 「古文や漢文などは本当にひどくて、テストの点数も10点台しかとれないこともありました。当時面白い先生がいて、10点台の点数をとった生徒を呼び出しては、『お前は“美しき10代”だな』と言うんです。そう言われるのが楽しくて、『やった! おれは“美しき10代”だ!』なんて言って面白がっていました。アホな話ですよね……」


 この続きは、7月28日(水)に掲載予定です。お楽しみに!

著者紹介

▼著者名 吉村 哲樹(よしむら てつき)

早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。

その後、外資系ソフトウェアベンダでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。


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