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» 2015年07月13日 12時00分 UPDATE

日本人向けのレコメンドが鍵:Huluの船越社長が語る、「NETFLIX」に勝つ方法

HJホールディングスの船越社長とエイベックスデジタルの村本常務取締役が、業界関係者向けのイベントでVODサービスに関する対談を行い、国内上陸間近の「NETFLIX」について言及した。

[村上万純,ITmedia]

 国内を代表する定額制動画配信サービス「Hulu」と「dTV」のキーマンが7月10日、業界関係者向けイベントでビデオオンデマンド(VOD)サービスの現状や将来について語った。登壇したHJホールディングスの船越雅史社長とエイベックスデジタルの村本理恵子常務取締役は、2015年秋に国内上陸予定のVODサービス「NETFLIX」についても言及し、国内で勝ち残るには日本人向けにレコメンド機能を強化する必要があると話した。

photo 左からたHJホールディングスの船越雅史社長とエイベックスデジタルの村本理恵子常務取締役

日本人はザッピング慣れしているが、コンテンツを探すのが苦手

photo 船越氏

 長年日本テレビで働いてきた船越氏は、「SVOD(Subscription Video on Demand:定額制動画配信)事業者の最大の課題は、コンテンツのレコメンド方法。日本人は大量にあるコンテンツから自分が見たい映像を選ぶことができない」と主張する。

 船越氏によると、日本人は地上波放送で育ってきたため、主要な数局だけをザッピングしながら視聴するだけで大量のチャンネルの中から見たい番組を選ぶ米国人のようなコンテンツリテラシーを持ち合わせていないということだ。Huluは1万5000本、dTVは12万本の作品を配信しているとうたっているが、自分が見たいコンテンツを探し続けるのはなかなか難しい。

 村本氏も、「現在dTVでは13のおすすめチャンネルをレコメンドしているが、多分選ぶのは7チャンネルくらいが限界。そもそも選ぶことに労力を費やす癖が付いていない」と全面的に同意。「一方で日本人はわがまままなので、レコメンドだけでは満足できない。ほかにも洋画/邦画/アニメなどジャンルごとにチャンネルを用意し、自分で選んでいるという感覚を味わってもらってます」と語った。

 そんな日本人でも簡単に使えるように、dTVはテレビのような感覚で使える“ザッピングUI”を提供している。これは画面上に作品のサムネイルを縦スクロールで次々と表示するもので、左右のフリックでジャンルを切り替えられる。サムネイルを一定時間見ると自動で予告編が流れるものもあり、テレビでチャンネルを次々と切り替えるザッピングに近い操作性を持つ日本人にとって非常になじみのあるインタフェースで、1時間ごとに番組が新しくなる。なお、実際に地上波の放送が流れているわけではなく、あくまでdTVが配信する動画を表示しているだけだ。

photophoto dTVのザッピングUI

6年間で蓄積した膨大な視聴データを活用

photo 村本氏

 dTVはNTTドコモとエイベックス通信放送が提供するもので、運営の大部分はエイベックスが担っている。2015年春、dTVにリニューアルする前は「dビデオ powered by BeeTV」(dビデオ)として動画配信を行っており、フィーチャーフォン時代からの長いサービス提供実績がある。

 村本氏は、「6年間動画配信をする中で視聴データがたまってきており、例えば1〜2分で視聴をやめたコンテンツは気に入らなかったんだなという情報が分かる」と説明する。

 エイベックスは膨大なオリジナルタグを用意しており、検定に合格した専任者がマニュアルに基づいて各作品にタグを付けているという。このタグは監督やキャストなどの人物名から、作品のジャンル、ハッピーエンドで終わったかどうかなどさまざまな種類のものがあり、1つの作品につき1000個ものタグ付けをしている。ハッピーエンドになったかどうか、ヒールの主人公が活躍するピカレスクロマンかどうかなどは機械では判断できないため、人力で行う必要がある。

 村本氏いわく「Wikipediaのようなイメージ」で、今後はこの蓄積してきたデータベースをひもづけしてすぐにドラマの主題歌に飛べるような導線を作ったり、データに基づいたレコメンドをしたりなど、いかに活用していくかが課題になっていくということだ。

大事なのは「人に勧められていると錯覚するキュレーション」

 船越氏はレコメンドが最大の課題だと語ったが、そこに注力しているのは秋に国内上陸予定のNETFLIXも同様で、全世界で6200万ユーザーを誇るVODサービスを前に「資本力では絶対勝てないので、限られた資産を活用して勝負しなければならない」と語気を強めた。

photo Netflixの大崎貴之副社長(左)とフジテレビジョン編成統轄担当局長(発表時)の斎藤秋水氏(右)。Netflixはフジテレビと手を組んだ

 どういうレコメンドが日本人に合うかはまだ検討している最中としながらも、船越氏は「人に勧められているような錯覚を覚えるレコメンドが最も望ましい」と話す。「自分のことに置き換えて考えると分かるが、最大のレコメンドは、尊敬する人や頼りにしている人におすすめを教えてもらうこと。私はSFが好きだが、同じSFでも作品によって好みや評価はまったく異なる。でも、コンテンツの買い付けをやっている部署の人間に勧めてもらう作品はハズレがない」と説明した。

 ここで、「押しつけがましくないキュレーションを目指す上で、コンテンツリテラシーの高いテレビ業界のシニア層に協力してもらうといいのではないか」という、長年テレビ局に勤めてきた船越氏ならではの意見が飛び出した。「最近はTwitterで盛り上がっている番組を見つけてそこから急いでテレビをつけるという見方も増えているが、それは非常にリテラシーが高い人の行動。信頼のおけるテレビ業界人がレコメンドの作業をすることで、ほかの(レコメンドに携わる)社員160人分くらいの働きはしてくれると思う」と冗談交じりに笑う。

 村本氏も「コンテンツを見るきっかけは、知り合いからの口コミによるものがほとんど。人間がキュレーションすることが大事で、システムだけでは解決できない」と船越氏に賛同した。


 国内で100万ユーザーを抱えるHuluと500万ユーザーを突破したdTVのキーマンが口をそろえて強調するのは、日本人に合ったレコメンド機能の重要性だ。全世界で5000万ユーザーを誇るNetflixが満を持して国内市場に参入してくることについては両者とも「まだ導入期にすらなっていないVOD市場全体が盛り上がってくれるのは歓迎すべきこと」と前向きに捉えている。

 だが一方で、「今あるVODサービスが数社に淘汰(とうた)されていくのは確かだろう」と船越氏はあくまで現実的だ。

 VODユーザーの視聴傾向、今後VOD事業者が生き残るためのポイントなどについて言及した本対談の続きは近日公開する。

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