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» 2004年06月14日 22時00分 UPDATE

電波の人体への悪影響は「実証されていない」が……

人体への悪影響は実証されてはいないが、“全く”ないことを実験で完全に証明するのは不可能に近いという。

[岡田有花,ITmedia]

 「電波は見えない、理解できないというイメージから、悪いことは何でも電波のせいにする傾向がある」――6月14日、都内で開かれた総務省関東総合通信局と電波産業会主催の講演会で、北海道大学大学院の野島俊雄教授はこう指摘した。

 携帯電話やワイヤレス機器の普及とともに、電波の人体への悪影響が心配されているが、野島教授によると、「非熱作用」による悪影響を訴える論文は論拠に薄いものがほとんどだという。

 「非熱作用」は、電波による悪影響のうち、「熱作用」以外のもの。熱作用とは、生体に強い電波が当たると、その部分が加熱されて体温が上昇するというもので、携帯電話など電波を発する機器では、SAR(用語辞典参照)に上限を定めることでこれを防いでいる。

 非熱作用については、さまざまな研究成果が報告されている。悪影響は全くないという研究が多い一方、影響があるとの報告もあるが、「悪影響があったとする研究のほとんどは、実験の信頼性に問題があるなど根拠が薄い。また、実際に悪影響があるとしても、それはほんのわずか」(野島教授)。

 ただ、わずかな影響でも無視はできない。悪影響があったとする実験に対しては、追実験を行なって証明/反証すべきなのだが、悪影響が“全く”ないことを実験で完全に証明するのは不可能に近いという。

 「例えば、電波によって脳腫瘍にかかる確率が上がるかどうかを証明するのは難しい。脳腫瘍にかかる確率はわずか数千分の1。電波による微小な影響まで証明するには、動物実験のためのラットを何千匹も用意せねばならず、大規模な施設と莫大な資金が必要になる。人体への影響をより正確に把握するには、ラットよりもサルを使ったほうがいいだろうが、大量のサルで動物実験するのはさらに現実離れしている」(野島教授)。

 また、電波のあるところで不快感を感じる「電磁波過敏症」を訴える人もいるが、電波と不快感との因果関係は実験で否定されたという。「ただし、感覚は本人しか感知できないため、過敏症の存在を完全に否定するのは不可能」(野島教授)。

電波は白血病を引き起こす?――疫学からのアプローチ

 電波の非熱作用については、疫学からもアプローチされている。疫学とは、ある病気にかかっている人とかかっていない人を一定数調査し、それぞれの生活環境や習慣などを比較、病気の原因を探るもの。

 電波と病気のかかりやすさとの相関はないという調査結果がある一方、電波が小児白血病を引き起こす可能性があるとする調査結果も出ていると、東京女子医科大学の山口直人教授は言う。

 米国、カナダ、ドイツなど9カ国で、3203人の小児白血病患者と1万338人の小児白血病でない子どもを対象に疫学調査を行なったところ、0.4μテスラ以上の磁界で生活する子どもが小児白血病にかかる可能性は、それ以下の子どもの倍だったという。日本でも、小児白血病患者336人と、小児白血病でない子ども718人を対象に同様の調査を行って同じ結果を得たが、「サンプル数が十分でなく、サンプルに偏りがある可能性もある」(山口教授)。

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 「疫学では、サンプルとなる人の協力を得て調査を行なうため、協力者の偏りによって結果が大きく左右される。また、白血病のリスクを上げる要因は、電波のほか、生活環境などさまざまに考えられる」(山口教授)。

 電波と病気との相関を疫学から検証するには、さらに厳密な調査研究が必要なため、現在、日本を含む13カ国で相関を確かめる共同研究が行なわれている。国内では2000年から調査を開始。首都圏の30−64歳の男女を対象に、携帯電話の使用履歴や平均通話時間などと病気との関係を詳しく調査している。来年度には調査結果が発表される予定だ。

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