「秩序の維持」か「金目当て」か――Wi-Fiめぐる空港の綱引き

» 2004年06月21日 18時51分 公開
[IDG Japan]
IDG

 複数の空港において、空港当局が管理するWi-Fiネットワークが、構内での無線ネットワークの利用、規制、管理をめぐる航空会社と空港の争いのグラウンド・ゼロとなりつつある(6月11日の記事参照)。

 旅客向けのインターネットアクセスから、リモートチェックイン端末まで、幅広い用途に使われる免許不要の無線周波数をめぐる戦いの中心となっているのは、米ボストンのローガン国際空港とデンバー国際空港の無線ネットワーク、そしてローリー・ダーハム国際空港とロサンゼルス国際空港で計画中の同様のシステムだ。

 ローガン空港は今週、構内全域にわたるWi-Fiネットワークを稼動させる予定で、航空会社と旅客はこのネットワークを利用するのに料金を払わなくてはならない。United Airlinesからすればこれは「不要な費用」だと、同社でWi-Fi導入を担当する地上システム無線技術者マイク・メイダー氏は語る。

 旅客はローガン空港のWi-Fiホットスポットに金を払ってアクセスするかどうか選べるが、航空会社は手荷物追跡などのためにWi-Fiネットワークを使わなくてはならず、選択の余地はないと、Massachusetts Port Authority(Massport)の広報担当バーバラ・プラット氏は語る。同氏によると、ローガン空港を運営するMassportは、航空会社やその他の空港テナントに、同空港に導入されたUniversal Wireless Ethernet System(UWES)の利用を義務付けている。

 Unitedはシカゴ空港など多数の空港で、手荷物追跡に対応した独自のWi-Fiネットワークを導入済みだ。だがメイダー氏は、全空港テナントに課せられたルールの下、同社はMassportのネットワークを使わなくてはならないだろうと語る。これは独自のネットワークを導入している同社にとってはコスト効率が良くないと同氏は指摘する。

 プラット氏は、UWESは空港の無線周波数を管理しやすくし、「Wi-Fiがすべての利用者に円滑に働くようにする」と語る。同氏は価格設定を詳しく明かすことは避けている。

 ローガン空港のネットワークは、TWI InteractiveがElectronic Media Systemsとともに構築した。TWIによると、同社は5年契約の下、最低でも契約1年目は20万ドル、5年目は30万ドル、最大で(Wi-Fi利用料による)売上高の20%をMassportに支払うと保証している。売上高は年額100万ドルを超える可能性もある。

 デンバー空港の広報担当チャック・キャノン氏は、同空港がWi-Fiネットワークの運営を委託するAT&T Wireless Servicesから、月額25万ドル程度の支払いを受ける可能性があることを明かしている。同空港の通信担当ディレクター、ジム・ウィンストン氏もMassportと同様に、周波数の調整ができるように、免許不要の2.4GHz、5GHz帯のWi-Fi周波数を空港側が管理する必要があると主張している。同空港はデンバー市が所有・運営している。

 「われわれが調整しなければ、混乱状態になるだろう」と同氏。テナントがそれぞれ独自のWi-Fiネットワークを導入することを空港が許せば、「大規模な混乱が起きる」。

 米電気通信工業界(ITA)の政策問題担当ディレクター、ジェレミー・デントン氏は、同氏の見解では、空港がWi-Fiネットワークを管理しようとする動きの裏にあるのは、周波数の調整ではなく売上高だと語る。ITAの加盟社には、United、FedEx、United Parcel Service(UPS)など空港のWi-Fiを利用する企業もいる。

 ITAは3月に米連邦通信委員会(FCC)に提出した文書で、空港がWi-Fi利用を規制しようとする「唯一の動機は、空港の売上を増やすことにある」と述べている。同団体はFCCに対し、FCCのルールの下では、空港は免許不要の周波数帯を規制する法的地位にないと主張、空港による規制の動きを差し止める宣言的判決を求めた。

 デントン氏はFCCの早急な判決を望んでいるものの、同委員会がITAの文書に関して意見公募を行うだろうと予測している。意見公募のプロセスは1年以上かかることもある。Massportのプラット氏とデンバー空港のキャノン氏は、この文書についてコメントを控えている。

 デンバー空港の経験から、Unitedのメイダー氏は、空港側は自分の管理するWi-Fiシステムの利用料を徴収するばかりではなく、速やかに約束通りのものを提供していないと指摘する。同氏は昨年10月からデンバー空港で、Unitedの手荷物追跡システムが利用する空港のWi-Fiアクセスポイントが必要な範囲まで電波を飛ばせないため、電波到達範囲とAT&T Wirelessとの干渉の問題を解決しようと取り組んできた。

 Unitedは航空機に遅れて積まれた手荷物をスキャンできるよう、タラップやBoeing 777の後部を超えた範囲までアクセスポイントでカバーするようにしてほしいと望んでいたが、Wi-Fi信号はそこまで届かなかった。メイダー氏によると、Unitedは別の2.4GHz帯ネットワークとの干渉問題にも見舞われたという。この問題は、Unitedのゲートから1マイル(約1.6キロ)離れたデンバー空港のレンタカーセンターに原因があった。こうした到達範囲や干渉の問題はすべて解決されたが、Unitedが単独で取り組んだ場合よりも6カ月余計に時間がかかったとメイダー氏。

 デンバー空港のウィンストン氏は、この問題に関してはUnitedに非があるとし、Unitedだけの力では到達範囲の問題を解決できなかったと指摘。「同社には専門知識がない」と主張する。

 UPSのグローバルネットワークシステムマネジャー、ジョン・キリーン氏は、同社は約90の空港で、荷物の仕分けのためにWi-Fiネットワークネットワークを運用していると語る。Wi-Fi周波数を管理しようとする空港側の動きは今は小さな問題だが、FCCがITAの申し立てを検討した結果、空港側に有利な結論を出したら、空港による管理は「潜在的な問題」になるかもしれない。キリーン氏は、FCCがITAの嘆願に対し、早急な動きを取ることを望んでいる。

 同じく荷物の仕分けにWi-Fiシステムを使っているFedExのワイヤレス事業開発ディレクター、ケン・パスリー氏は、空港による周波数規制は「明らかにわれわれに影響するだろう」が、同社は共用ネットワークが設置されているターミナルから離れたところで業務を行っているため、おそらく航空会社ほどの影響はないだろうと語る。

 同氏はITAの嘆願を支持しており、空港が所有・管理するWi-Fiネットワークは、空港にとって売上高を増やすための手段だととらえている。

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