携帯向け広告、現在の実力

» 2004年07月13日 18時22分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 iモードなど携帯電話のWebサイトに掲載されている広告は、どのくらいの効果を持っているものなのか。メールマガジンに載っている広告は?

 実際のところ、急拡大したPC向けのインターネット広告市場に比べると、モバイル広告市場は成長段階だ。PC向けが既に1000億円を超える規模になっているのに対し、携帯向けは100億円(2003年度)に過ぎない。

要素 PCインターネット モバイルメディア
端末台数 7000万台 7000万台
PV単価 @0.25円 @5円
市場規模 1200億円 100億円
mediba資料より

 「携帯も端末は7000万台とPCと同じような台数。広告料金は20倍。では、PCの20倍かといえば、100億円しかない」とmedibaの橋本浩典副社長は、モバイル広告の現状を説明する。

 しかし、ここから急速に市場が拡大する可能性もある。「モバイルでも市場拡大の条件は整ってきている。10倍以上の市場規模になるのではないか」(mediba:旧エイワンアドネットの小林義明社長)。

PC向けインターネット広告が高速・定額のブロードバンドで急拡大したように、携帯向け広告も1X WINに代表されるブロードバンドが起爆剤になるとmedibaでは見ている

モバイル広告の課題

 KDDI系のメディアレップであるmedibaは、従来のエイワンアドネットから社名変更すると共に、広告企画・制作から、EZwebのポータルサイトの編成・企画からコンテンツ制作まで業務を拡大した(6月24日の記事参照)。KDDIの掲げる“メディア化”を担う主戦力として、モバイル広告市場の拡大を狙う。

 そんなmedibaにとって、モバイル広告市場の課題は何か。急成長するための方策にはどんなものがあるのか。

 橋本氏は、課題の1つとしてページビュー(PV)の不足を挙げる。medibaの調査によると、週に1回以上EZwebを利用するユーザーは58.2%。順調に伸びてはいるが、「週2、3回の接触ではメディアとはいえない」というのが橋本氏の考えだ。

 PV不足の理由は大きく3つある。1)パケット代が高い 2)通信速度が遅い 3)表現力が乏しい と橋本氏。しかし、定額制の導入、最大2.4Mbpsの通信速度、FlashおよびEZチャンネルで使われているSMILの導入によって、機能的な課題は解決した。

 あとは「新しい環境に合うコンテンツが重要。モバイルメディアが新しいステージに」(橋本氏)。

 この方針に沿って、medibaはEZチャンネルを積極活用。「ソウル」や「13階段」の監督、長澤雅彦氏やしりあがり寿氏、みうらじゅん氏など贅沢な陣営で、無料番組「ポケット(c)ネル」の提供を始めている(6月24日の記事参照)。

キャリアによって分かれる方向性

 新しい取り組みを始めたmediba、KDDIだが、その成否はKDDIの次世代プラットフォーム「1X WIN」がどこまで拡大するかにかかっている。これまで発売されたWIN端末は3機種のみで、利用者数は60万人弱。7月12日に発表した新1X WIN端末「W21SA」「W21S」「W21K」で本腰を入れ、2003年度末には300万の利用者を見込むが、それでも携帯電話利用者の1割にも満たない(7月12日の記事参照)。

 現在のところ、約60万人のWINユーザーのうち、定額制プランの利用者は9割、EZチャンネルの利用者はさらに6割だという。

 携帯の“メディア化”に関しては、キャリアによっても取り組みが異なる。ドコモはインターネットとしてのiモードから脱却し、非接触ICチップFeliCaを携帯に内蔵することで“リアルとの連携”をスローガンに、生活に密着したサービスを目指している(6月16日の記事参照)。

 またモバイル向け広告に関しては、Webメディアを使うというよりもメール配信に注力している。ドコモ系のメディアレップであるD2コミュニケーションズによると、通信費が企業持ちで配信される広告メール「メッセージフリー」は、「バナーなどのピクチャ広告と肩を並べる商品になってきている」。また秋から発売されるFOMA端末では、これまで標準でオフだったメッセージフリーを、標準でオンにして市販するなど、一層力を入れる計画だ(6月10日の記事参照)。

 携帯電話を使った情報ビジネスの市場は急速に拡大しているが、現在もその中心はコンテンツ。着メロ、壁紙といったカスタマイズ系コンテンツとゲームがメインだ。2003年度で3356億円市場、2004年度は4410億円市場とコンテンツ市場の伸びは著しい(MCPC予測)。

 今後、モバイル向け広告を中心とした“携帯のメディア化”が成るかどうか。携帯に定額制を導入したKDDI、そしてmedibaの取り組みに注目が集まる。

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