総務省への反発を強める孫社長

» 2004年09月06日 22時07分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 ソフトバンクが、総務省への不満を高めている。無線周波数帯で、800MHz帯がドコモとKDDIのみに割り当てられる流れにあることに猛反発しているのだ。同社はまた、携帯電話事業にすぐにも参入する意志があるとして(9月6日の記事参照)、自社に30MHzを割り当てるよう要求している。

 総務省案を、真っ向から覆しにかかるソフトバンク。同社の孫正義社長は9月6日の記者会見で、電波が割り当てられるプロセスに疑問があると主張した。

あれもこれも「不満」

 孫氏はまず、電波法の第一条に「この法律は、電波の公平かつ能率的な利用を確保することによって」、公共の福祉を増進するのが目的と記述してあると話す。

 「この考えに立ち返るべき。携帯キャリアは、既に割り当てられている帯域をすべて使い切っているわけではない(9月5日の記事参照)。『今、使いたい』と言っている事業者に割り当てることこそ能率的で、公平だ」

 同氏はまた、800MHz帯をドコモやKDDIに割り当てる理由の1つに、既存事業者の移行コストがかからないようにするといった配慮があることを疑問視する。

 「国民にとってどうか、のみを検討すべき」(同氏)であり、既存事業者のコストなどは2の次に考えるべきという。

 同氏の矛先は、総務省の審議形態にも向かう。たとえば、審議会委員の人選が不透明な手順で行われるという。「明らかな利害関係者が入っている。委員長は、どこかの大学教授だったりするようだが……」。

 同氏の議論は、さらにエスカレート。そもそも“パブリックコメント”というものは形骸化しており、見直すべきだとした。

 「パブリックコメントを募集したといって、1カ月後に『意見だけは聞きました』と、総務省の勝手な都合でものごとが決められる。国民を巻き込んだ議論は、なされていない」

「前回の二の舞になるぞ」〜召集されたミーティング

 ソフトバンクは今回、パブリックコメントの締め切り間際の9月6日に向け、次々とアクションを起こしている。会員向けにメールを配信し、全国紙に意見広告を打ち、記者会見を開くといった具合だ。しかし、総務省の「割り当て案」自体は8月6日に公開されている(総務省のページ参照)。なぜこのタイミングで反論しなかったのか。

 「8月10日の時点で、担当者がたまたま総務省の告知を見つけた。それも、相当な専門家が見ないとなかなか理解しにくいような書き方だった。『帯域が空くなら欲しい』と言い続けていたのに、このような出し方しかされなかったのはどうかとも思うが……それが、恥ずかしながら(対応が遅れた)実態だ」

 ここで、ソフトバンクはミーティングを召集したという。背景には、昨年12月の2GHz帯で5MHz幅×3をどう扱うかの議論で(総務省のページ参照)、同社の要求が反映されなかったという苦い経験がある。

 「我々の意見は、まるっきり無視された。このときと同じ結果が起きるぞ、と」(同)

 対策を講じた結果が、今回のような締め切り期限間際の大々的アピールにつながったと説明した。

 なお、多数のユーザーにパブリックコメント提出を促すような手法について、総務省は「特にコメントすることはない」(同省担当者)。相応の数のパブリックコメントが集まったのではと推測されるが、こちらも「コメントできない」(同)とした。

「天下りを受け入れない」宣言

 孫氏の、総務省および通信行政に対する攻撃は止まらない。そもそも日本の通信行政は、同氏に言わせると「実にアンフェアな構造」になっているという。

 「『腹芸』というのか……。堂々と正論を言うと『青い』と言われ、人的つながりであるとかで、何か分けの分からない間に議論が進んでしまう」

 同氏は、こうした不透明さを業界から排除すべく「監督官庁からの天下りは、今後一切受け入れない」と宣言する。

 天下りのおかげで行政上のメリットを受ける……そう思われるようなことは、したくないと孫氏。「少なくとも百年ぐらいは、天下りは受け容れない。経営のバトンを次に継ぐものにも、厳命する」。

 「もっとも、おまえのところになど人はやらない、と言われるかもしれないが」。孫氏は、さばさばした表情でそう話した。

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