航空機内の携帯サービスに向け、FCCが周波数を競売へ

» 2004年12月16日 14時39分 公開
[IDG Japan]
IDG

 米連邦通信委員会(FCC)は12月15日、飛行機の乗客が機内で利用できる通信サービスの新生面を開くことになるであろう新たな取り組みに着手した。FCCは現在上空と地上間の電話サービスに割り当てられている周波帯を競売にかけることを決定したほか、機内での携帯電話利用に関する規制の緩和を提案している。

 FCCが発表した声明文によれば、同委員会は音声、データ、ブロードバンドインターネット接続を含む、新しい機内サービスを促進すべく、800MHz帯の周波数域を競売にかける。サービスは商用、軍事、一般の航空機向けに提供される見通し。FCCは周波数域の配分をめぐり3つの選択肢を提案しているが、いずれのケースも同周波数域に少なくとも2社が参入することを想定しており、どの選択肢かは民間が決定することになる。

 上空と地上間の通信用に割り当てられた800MHz帯には4MHzの周波数域があるが、FCCによれば、現在この周波数域を使っているサービスはVerizon CommunicationsのAirfoneのみ。この決定に関する声明文でFCC委員のマイケル・コップス氏が語ったところによれば、Airfoneの座席通話サービスは価格が高く、音声に限定されており、あまり使われていないという。FCCは15日、更新不可能な5年間のライセンスを新たにVerizon Airfoneに認可しているが、同サービスを4MHzの帯域のうちの1MHzに制限している。

 入札に参加するサービス業者は、周波数域の中心帯を重複させて2社のキャリアがそれぞれ3MHzの周波数域を利用する方法か、あるいは3MHz帯を排他的に片方のキャリアに割り当て、もう1社には排他的に1MHz帯を割り当てる2種類のパターンのいずれかを選べることになる。

 FCC会長のマイケル・パウエル氏はこの決定に関する声明文で、「上空と地上間の商用サービスのための800MHz帯をめぐるFCCの規定は、技術的にも規制の点でも定義が厳しすぎるため、乗客が機内でワイヤレスデバイスを使えない状態が続いている」と述べている。FCCは帯域に関するプランを1種類しか提供せずにビジネスプランを指図するようなことはすべきではないと同氏。FCC委員のコップス氏とジョナサン・アデルスタイン氏は、排他的な3MHzライセンスを競売にかけることに対する懸念を表明し、もう一方のライセンスが1MHzでは、競合キャリアには効果的に競争するための十分な帯域幅が割り当てられなくなると指摘している。

 FCCは2005年内に競売を行いたい考えだと同委員会の広報官ローレン・パトリック氏は話している。

 FCCはさらに、機内の小型ベースステーション「picocell」を介して、乗客が標準的な携帯電話などのワイヤレスデバイスを機内で使用できるようすることを提案している。電話は最も低い電力設定で操作しなければならず、不要な無線放出が地上の携帯電話ネットワークと干渉しないよう留意する必要がある。FCCの規定は現在、離陸後の携帯電話の使用を禁じており、米連邦航空局(FAA)の規定も、機内の通信・ナビゲーション機器との干渉を避けるため、機内でのあらゆる携帯電話とポータブル電子機器の使用を制限している。

 FCCはNPRM(規則制定提案告示)において、この計画を800MHzの携帯電話用周波数域で動作するデバイスにのみ適用すべきか、あるいはPCS(Personal Communications Systems)やAdvanced Wireless Serviceなどの帯域で動作する、そのほかの種類の携帯電話にも適用すべきかをめぐり、一般から意見を募っている。

 PCSは、現在一部の携帯キャリアが使っている1.9GHz付近の帯域で、AWSはFCCが次世代ワイヤレスデバイスに向けてライセンスの容易をしている帯域の集合だとパトリック氏。

さらにFCCは、上空と地上間の800MHzの周波数域を航空機と地上ネットワークの「パイプ」としてどのように利用するかをめぐるアイデアも募集している。FCCによれば、FCCは現在、FAAとも調整を進めており、FAAも自身の規定の内容を吟味しているところという。

 携帯電話がすぐに機内で使えるようにはならないだろう。NPRMが官報で発表されたとき(おそらく来月になるだろう)に、30日間の意見公募が始まるとFAAのモビリティ部門主任顧問リチャード・アルスノート氏は語る。その後30日間の対応期間があり、FCCは2005年内に新たな規制を完成させる可能性があると同氏。ただし、乗客が機内で携帯電話を使えるようになる前に、FAAも規則を変え、航空機もそれに対応しなくてはならないという。

 FCCが機内での携帯電話利用を禁止しているのは、航空機が飛ぶ高度では、携帯電話が同時に複数の携帯電話基地局と接続して、必要以上にネットワークキャパシティを使う可能性があるからだとパトリック氏は説明する。場合によっては、それが原因で携帯電話での緊急通報が妨げられる恐れがあるという。

 15日に発表した声明で、FCCのコップス氏はこの問題を探究するというアイデアを歓迎する一方で、飛行機の乗客に副次的な影響を及ぼす可能性について危惧を示している。

 「飛行機の乗客の多くは、まるまる6時間もの飛行時間中、隣りの乗客が携帯電話に向かって何かを叫んでいるといった状況は好まないはずだ。私ならお断りだ」とコップス氏は記し、消費者に対し、NPRMへの参加を呼びかけている。「その一方で、われわれ委員会のメンバーは、こうした『迷惑な隣りの乗客』の問題をめぐるFCCの権限を明確に決定する必要がある」と同氏は語っている。

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