おサイフケータイに潜む、知られざる“影”とは

» 2005年03月08日 02時31分 公開
[江戸川,ITmedia]

 ドコモ本社内に設置されたバーチャルな研究組織、「モバイル社会研究所」。そのシンポジウムでは、携帯電話と社会との関わりについて行われた学術的な研究成果が発表された。

 東京大学先端科学技術センター教授の玉井克哉氏は「携帯電話不正使用の予防に関する研究」を行っている。不正利用でまず頭に浮かぶのが、カメラ付き携帯を使った“デジタル万引き”(2003年9月5日の記事参照)。デジタルカメラでは話題にならなかったのは、利用者数の違いにあるという。

玉井氏

 また、汎用ブラウザの脆弱性や、暗証番号の未設定、暗証番号のキャッシュカードとの共通化など、事業者や利用者に向けての注意喚起が行われた。指紋センサーを使った指紋認証でさえも、付着した指紋を採取すればゼラチンで作った「グミ指」を使って指紋を再現することができるという。

 「指紋認証を使っている人のうち84%が、この技術は安全だと思っているのです。もちろん現時点では間違いではありませんが、これから半年から1年の間に、必ずしも安全とはいえなくなってきます。現在でも市販の指紋読取機の8割で(グミ指は)認識されてしまいます。指紋認証と暗証番号の組み合わせがよいでしょう」

 中でも衝撃的だったのは、おサイフケータイの知られざる問題だ。厚手のコートのポケットに入れてあるおさいふケータイに対して、外部からカードリーダーを当てることで情報の読み取りが可能になるというのだ。

 カードリーダは上着の袖などに忍ばせておくことができるサイズなので、小型のPCと組み合わせることで新たな犯罪の引き金となることが考えられる。

 現時点でこれを防ぐ手段としては、FeliCaチップ面を外側に向けておかないこと。もちろんカバンに入れたとしても同じ問題に直面する。そして何よりもやっかいなのが、こうして情報を読み取られたとしても、それを犯罪だとするのが難しいことだ。

 「非接触ICカードは、接触せずに情報を読ませるカードなわけですから、それができて当たり前。法的にこれを取り締まるのは相当に難しいと思います」。利用者が賢く使うことが求められてきそうだ。

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