アナログ・デバイセズは3月15日、携帯電話向けのレンズドライバ「AD5398」を発表した。オートフォーカス機構で必要とされるレンズの移動を制御するチップで、光学ズーム機構にも利用できる。
オートフォーカスや光学ズームなどの、デジタルカメラに必要とされる機能は、携帯電話のカメラでも2Mピクセルを超えたあたりから採用が加速すると、同社は見る。
オートフォーカス機構の実現には、レンズを前後に移動させるモーター(アクチュエータ)が必要。携帯カメラでは、さまざまな種類のモーターが主役の座を争っている。
デジタルカメラでは、レンズの移動に主にステッピングモーターを使う。ステッピングモーターとは電流を流すとある角度だけ回転するモーターのこと。しかし、「ステッピングモーターは大きく、高い。携帯用モジュールでは小さなものが必要になる」(アナログ・デバイセズ)ことから、対象をボイスコイルモーターに絞った。
ボイスコイルモーター(VCM)は、一種のリニアモーターで、ダイナミックスピーカーのコイルを動作させるのと似た仕組みで動く。スピーカーのコイルは、音声を再生する意味でボイスコイルと呼ばれる。ボイスコイルモーターの名もそこから来ている。
「コスト的にはVCMが一番安い。VCMを使うと最も低コストで小さなものができる」(アナログ・デバイセズ)
国内の携帯電話では、カシオ計算機がステッピングモーターを、シャープがVCMを使ったオートフォーカス機構を採用している。
モーター種別 | ピエゾモーター | ボイスコイルモーター | DCモーター | ステッピングモーター |
---|---|---|---|---|
エネルギー[mJ] | 0.7 | 2.4 | 6.0 | 21 |
スピード[ms] | 3 | 20 | 40 | 100 |
ノイズ | - | - | - | 高 |
コスト | 2.2 | 2.1 | 2.8 | 4.0 |
オートフォーカス機構用のモーターで、今後の普及が期待されているのがピエゾモーター(ピエゾアクチュエータ)だ。ピエゾ素子は、圧電効果で知られ、結晶に圧力を加えると圧力に比例して電圧が発生する。電子ガスライターやマイクロフォン、圧力センサーなどに利用されている。
ピエゾモーターでは、逆圧電効果を利用する。素子に電圧を加えることで結晶の伸縮が発生することで、レンズを動かすわけだ。移動の位置決めが無限に細かくできること(無限の分解能を持つ)や、高いエネルギー効率を持つこと、また摩耗や劣化が起こらないなどの特徴を持つ。応答性も極めて早い。
ただし、その制御には課題がある。かけた電圧と伸縮量は1対1に比例(線形)するわけではなく、ヒテリシス曲線と呼ばれる非線形な曲線となってしまう。そのため、制御が非常に難しい。
「将来はピエゾだが、ピエゾをコントロールするドライバはかなり複雑だ。今はVCMで十分」(アナログ・デバイセズ)
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