三洋電機は3月2日、1/4.5型のメガピクセルカメラモジュール「HyperEye」を開発したと発表した。3月からサンプル出荷を開始する。サンプル価格は9000円。
7.6ミリと薄く、QVGA・7.5fpsで120mWと低消費電力。メカニカルシャッターと2段階の絞り制御機能を備える。
三洋初となるメガピクセルCCDカメラモジュールのポイントは、メカニカルシャッターの採用にある。「携帯電話としては初めてメカニカルシャッター。これによりCCD、フレームトランスファーの弱点といわれていたスミアの発生を完全に抑えた」(セミコンダクターカンパニーCCDビジネスユニット システム開発部 渡辺透部長)。
CCDの画質向上において重要なポイントが「スミア」の削減だ。CCDは強い光が入ると縦方向に線が入る「スミア」と呼ばれる現象が発生する問題がある。
複数あるCCDのうち、三洋の使うFT(フレームトランスファー)方式は、IT(インタライントランスファ)方式やFIT(フレームインタライントランスファ)方式に比べてスミアが発生しいやすいという課題があった。スミアは、受光した撮像素子が縦方向に電荷を転送している際に、光を受けて発生する。そのためメカニカルシャッターの採用で、スミアを完全に防ぐことができる。
これまで携帯電話のカメラでは耐信頼性の問題や必要性の問題からメカニカルシャッターの搭載は見送られてきた。「われわれはぜひシャッターを使いたいと。メカニカルシャッターで、FTの短所を長所に変える」(渡辺氏)。
メカニカルシャッターを動作させるアクチュエータを使い、2段階の絞り制御も可能とした。F3.5とF7.0という2種類の絞りを使い分けることで、「非常に被写界深度が高い。メガのモジュールはAF(オートフォーカス)が必要不可欠という考えもあるようだが、我々は十分AFなしで対応できる」(渡辺氏)。
今回のCCDモジュールは「携帯用では最少」となる画素サイズ2.7μm。さらに、「メカニカルシャッターを使うことを前提に、蓄積部を減らすことができた。CCD全体のチップサイズを縮小。蓄積部は1/3の圧縮タイプ」となった。
FT型のCCDは、受光素子のほかに電荷を蓄積しておく蓄積部が必要となる。メカニカルシャッターの採用により静止画では撮像素子に電荷をためることが可能となった。
またプレビュー表示時や動画撮影時は、画素混合法を使って蓄積部を3分の1に削減した。緑と青、緑と赤の信号を混合して読み出すため色再現性は低下するが、「感度は上がる。1メガの画素を読み出さなくても3分の1の転送量で動画が取り出せる。動画時の低モアレ、高フレームレートを実現」(渡辺氏)。
CIF、VGAのころからの三洋製カメラモジュールの特徴は、薄型・低消費電力だ。他メーカーのメガピクセルモジュールが9〜11ミリの厚みがある中、三洋は7.6ミリを実現。消費電力も600mWクラスが多い中、低消費電力のCMOSとも遜色ない120mWを実現した(QVGA・7.5fps)。
薄く小さく消費電力が少ないのは、従来通り、FT方式のメリットだ。「薄くできるキーは画素シュリンクが容易なFT方式であること。さらに光学サイズを小さくしていく」と渡辺氏。電荷転送に高電圧が必要なIT方式と違い、FT方式は低電圧で動作させられる。これが消費電力の削減にも結びついている。
携帯向けCCDカメラを世に初めて送り出した三洋だが、高画素化の流れに乗り遅れた感もあった。今後は「もし2メガが必要になれば出していく。開発は進めている」(渡辺氏)。同社のキー技術であるFT方式を前提に、メカニカルシャッターとの組み合わせのほか、VGAタイプをそのまま拡大した高画素化も考えているという。
主な仕様は以下の通り。
モジュール製品名 | IGT9353M-ST |
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CCD | 1/4.5型(対角3.92ミリ)、100万画素 |
消費電力 | 120mW(QVGA 7.5fps時) |
フレームレート | 5〜15fps(QVGA時) |
サイズ(幅×高さ×厚み) | 17×11×7.6ミリ |
シャッター | メカニカル・電子式併用 |
光学レンズ構成 | プラスティック製3枚 |
光学レンズF値 | 3.5/7.0、2段切替 |
CCD製品名 | LC99353 |
方式 | フレームトランスファー |
光学サイズ | 1/4.5型(対角3.92ミリ) |
有効画素数 | 1170×882 |
画素サイズ | 2.7μm×2.7μm |
パッケージサイズ | 2.24×4.46ミリ |
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