「スライドの一番のメリットはワンタッチなんですよ。折りたたみは開けるのにツータッチじゃないですか。回転させるとかもワンタッチじゃ難しい。ビジネスマンが片手にカバンを持っていて、携帯を開けようとしても難しい。W31Sならば、持ち替えずにすぐにメールに入れる」
そう話すのはデザインを担当した佐藤敏明氏だ。
スライド型にするに当たり、デザインにもこだわった。「最初からレールを見せないのを目標としてやってきました。デザイナーとメカ担当が、レールを隠しつつも、スライドする距離のバランスを取ってきました」(高橋氏)
スライドの動きも、上下2枚のパーツが平行に動くわけではない。微妙に角度がついており、スライドするに従ってディスプレイが手前に向くようになっている。佐藤氏はこれを“円弧を描いてスライド”と表現する。
「閉じた状態で十字キーを親指に置く。そこでもし画面が平行にスライドすると「画面があさっての方向に行ってしまうんです」(佐藤氏)
円弧を描いてスライドすることで、「段差を少しでも小さくするということにもつながっているし、電話をするときの耳の位置がうまく収まることにもつながる」(佐藤氏)。
W31Sを初めて手にした人は、開け方にとまどうかもしれない。実は、右側面のスライドバーを動かすと、自動的に画面がスライドする構造になっているのだ。
「実はバネとオイルダンパーが入っています」と高橋氏。オーディオのカセットの扉がジワーっと開くような機構に使う、歯車状のダンパーが組み込まれ、ジワリとした動きを実現している。
「コイルバネが下部に入っています。バネとダンパーだけでは最後の衝撃が大きくなってしまうので、衝撃吸収剤を入れています」(高橋氏)
「バネだけだとスコーンといっておしまいですから。本当に職人技です。最初は、バネで勢いよく空いて──」(佐藤氏)
「最初、みんな、あぁビックリとか言ってました」(高橋氏)
「ダンパーで弱くしただけでは、開くときがモワッとしてシュコーンみたいな」(佐藤氏)
「でも、今の最終形は、最初クッと動いて最後はスッという」
「これがスッと動いてカンだと、ユーザーの感性に合わない」
……つまり、非常に高級感を持って画面がスライドする。機械的なガチャという感じは全くない。遅すぎず、早すぎず、衝撃もなく。そのチューニングは見事だ。
スライド型に変わるにともない、ソニー・エリクソンユーザーにとって重要な変更も行われた。ジョグダイヤルから一般的な十字キーに変わったのだ。その理由はなんだったのか。
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