年末年始と携帯電話──それは携帯の混雑と規制が入り乱れる時期だ。毎年のことだが、年の初めは携帯電話による「明けましておめでとう」という大量の通信が発生し、通信キャリアは“規制”をかけることになる。
今回、こうした携帯の混雑と戦う舞台裏を、ドコモの品川・ネットワークオペレーションセンターで見てきた。
電話をかけようと思ったら、つながらず、画面に「お待ちください」と表示される。こんな現象を見たことがあるだろうか。これが通話規制だ。
「携帯電話は無線を使っているので災害などにも強いが、通話が殺到するとつながりにくくなる。回線がいっぱいになってしまうと緊急通信もできなくなるし、交換機の容量を超えてしまうと、最悪の場合システムがダウンし、一切の通信ができなくなってしまう可能性がある」
ドコモの災害対策室長の石川数義氏はこう話す。電波を使う携帯電話は、人数分の空きが用意されているわけではない。1つの基地局の下に300人がいるとしたら、同時に電話ができるのは10人──というようなイメージだ。そのため電話が殺到すると“輻輳(ふくそう)”という事態が発生する。
「新潟中越地震では、2〜3時間の間に集中して、通常の約45倍のトラフィックが発生した。その一瞬の間だけ、規制をかけることで対処する」(石川氏)のだという。
規制の仕組みを、少々詳しく説明しよう。ドコモによると、それぞれの端末は購入時に、8つあるグループの1つにランダムに割り当てられる。規制時は、このグループのうちのいくつかは発信ができなくなる。例えば、グループ1と2の端末は発信できない──といった具合だ。
一定時間で、どのグループが発信できないかは変更されるため、しばらく待てば発信が可能になる。つながらないからといってリダイヤルを繰り返しても無駄で、自分のグループの規制が外れるのを待つしかないわけだ。
ドコモのオペレーションセンターは、こうした輻輳や故障と戦う最前線だ。70インチのフラットパネルが、縦3枚×横9枚並ぶオペレーションセンターは、さながらNASAの管制室のようだ。
ここで行われていることは、輻輳している基地局への発信規制や、故障した設備のリセット/修理だけではない。ネットワークの安全を守るため、携帯電話の利用状況を地区や時間別に把握し、対策を練り続けている。
「コンサートなどのイベント会場の情報を収集し、基地局ごとに対策する。高トラフィック局から低トラフィック局のグループ別に分け、時間帯や規制率を設定する」(ネットワークコントロール担当部長の柴田進氏)
音声は、週末の夕方がトラフィック的に高くなる。朝、電車が遅れてしまったときもトラフィックが増える。雨が降っても帰宅時間に重なると上がる──。このように災害や事故、天候によってトラフィックは激変する。
年末年始のトラフィックも天候からの影響は大きい。いわゆる「おめでとうコール」は、徐々にメールにシフトしているが、2005年の正月は雪が降ったためトラフィックは半分程度に下がった。逆にメールは1.4倍に増加している。
もう1つの大きな変化はFOMAの普及だ。2006年の春には、ムーバ(PDC)とFOMAの数がおよそ半々になると予想されており、2006年の正月はFOMAにも規制がかかる可能性がある。
ここで問題となるのは、FOMAでは音声通話とパケット通信の独立規制がまだ行えないことだ。ムーバでは、音声とパケットを別々に規制しており、年末年始に音声は規制されても、パケットは規制されずに利用できた(2004年4月8日の記事参照)。FOMAの場合、音声が規制されるとパケットも同様に使えないことになる。FOMAの独立規制は2006年夏に行われる予定だ。
24時間365、ネットワークを監視するという業務──。快適に利用できる携帯電話を陰で支えているのが、こうしたオペレーションセンターなのである。
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