震災で電話が不通になる2つの理由

» 2004年11月01日 22時11分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 新潟に住む知り合いの安否を一刻も早く確認したいが、携帯電話も加入電話もつながらない――10月23日夕に起きた新潟県中越地震で、被災地に電話がつながりにくい状況が続いた。

 震災時に電話がつながらなくなる理由は2つある。中継光ケーブルの切断や基地局の停電といったインフラ面の不具合と、輻輳(ふくそう)防止のためにキャリア側が行うトラフィック規制だ。

 23日の地震後、新潟県内の中継光ケーブルが6カ所断線し、加入電話4450回線が不通になった。電柱−加入者宅の引き込み区間でも故障が起きたため、中継ケーブルが無事な地域で電話が不通になったケースも多い。

 停電の影響は、翌24日になって現れた。停電地域の基地局はバックアップ電源を利用していたが、小千谷市片貝ではこれを使い切り、移動電源車も道路寸断のため到着できず、交換機が停止。片貝町全域の約1450回線が3時間程不通になった。

 11月1日現在、中継光ケーブルは3カ所復旧したが、残り3カ所は断線したまま。山古志村などで電話が使えない状態が続いている。同村までの道路は崩落しているため移動電源車も使えず、基地局の電源復旧の見通しも立っていない。

 NTTドコモの携帯電話基地局も23日の地震発生後、ケーブル断線ため20局が不通になった。翌24日、バックアップ電源を使い切った停電地域の基地局の交換機が停止。ケーブル断線と合わせ、最大で計60の基地局に影響が出た。

 11月1日現在、6基地局が復旧しておらず、山古志村と山間部の一部地域で通話不能となっている。

新潟県内への通話、通常の50倍に

 回線や電源などインフラが無事でも、電話がつながりにくくなることがある。輻輳を防ぐため、キャリア側がネットワーク制限を行うためだ。

 輻輳は、交換機の処理能力を超えてトラフィックが集中する状態。災害時は被災地への電話が集中するため輻輳が起きやすく、警察や消防などへの緊急電話がつながらなくなる危険性がある。

 地震発生直後の23日の午後6時頃、新潟県外からの県内加入電話への通話は平常時の約50倍に増えた。このためNTT東は、県外から同県内への通話量の最大約75%を規制した。

新潟県内への通話は地震発生直後がピーク。TVのニュースで震災が報じられた翌日の朝や夕方にふたたび通話が増えている。地震発生2日後の月曜日午前11時ごろにまた山があるのは、企業間で被害を確認する通話が増えたためと見られる

 ドコモの携帯電話も同じ頃、県外からの着信が通常の45倍に跳ね上がった。ドコモもNTT東と同様の規制を実施。県外からの着信を最大75%規制した。

ドコモの通信状況

 パケット通信は無事だった。ドコモは今年4月、音声通話とパケット通信を別々にコントロールするシステムを導入(関連記事参照)。地震後もメール送受信やネット接続は平常通り利用できたという。

阪神淡路大震災の教訓生きる

 1995年1月の阪神淡路大震災時も、中越地震と同様、県外からの県内加入電話への通話が平常時の約50倍に激増した。阪神大震災時はこの状態が1週間続いたが、中越地震ではこれが1日で解消した。

 通話の集中が短期間で解消できたのは、適正なネットワーク規制と、1998年に始めた災害伝言ダイヤル「171」の普及が大きい。

 NTT東は中越地震発生後、TVなどを通じ、被災地への電話を避けて171を利用するよう呼びかけた。11月1日午前9時現在、同サービスは11万300件の登録と23万5700件の再生があり、スタート以来最多の利用数となった。

171サービスの利用状況

 携帯電話の普及も、阪神大震災以来大きく変わった点の一つだ。新潟地震では、NTTドコモの携帯電話からiモードを使って安否情報を登録できる「iモード災害用伝言板」が活躍。11月1日現在で8万7876件の登録と11万5677件の閲覧があった。

iモード災害伝言板は今年1月にスタートした

 ただ、同伝言板には課題も残る。同伝言板に情報登録できるのは、iモード対応のドコモ携帯電話に限られているのが現状。KDDI、ボーダフォンも伝言板の設置を検討中(関連記事参照)だが、「どのキャリアの端末からでも自由に登録できる仕組みを構築するのは難しい」と、NTTドコモネットワーク本部の石川数義災害対策室長は話す。

 同伝言板はiモードと連動し、書き込んだユーザーの位置情報や電話番号を自動取得する。これにより、他人の電話番号を使った成りすまし登録や、災害発生エリア以外からのいたずら登録を防ぐ仕組みだ。

 他キャリアの携帯電話からも同様に登録可能にしようとすると、キャリア間でユーザーの位置情報や電話番号情報を共有する必要があるが、キャリア同士の話し合いだけではその実現は難しい。「行政が動かないと、全キャリア対応のサービスは難しいだろう」(石川災害対策室長)。

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