苦境脱出のために――三洋が見出したNokiaという「光明」

» 2006年02月14日 21時38分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 既報のとおり、三洋電機はフィンランドのNokiaとCDMA2000事業を扱う新会社を設立すると発表した。背景には、技術力はあっても好調な利益に結びつかない国内携帯メーカーの苦悩がありそうだ。

 三洋電機常務執行役員、鵜狩武則氏が発表会場で話した内容から、同社の置かれた状況と思惑を探った。

Photo 三洋電機の鵜狩氏

海外展開が上手くいかない国内端末メーカー

 鵜狩氏は、今回の話は2005年の初夏に三洋側から持ちかけたと話す。その後「双方が歩み寄った」と訂正したが、少なくとも最初のきっかけは三洋が作ったことに間違いなさそうだ。鵜狩氏はさらに、実現しなかったものの3〜4年前にも三洋とNokiaの間で事業提携の話し合いがもたれたことを明かす。

 ここまで積極的に、三洋電機がNokiaとの提携を画策した理由としては、やはり三洋電機単体では携帯事業が上手く回らなくなっていることが挙げられる。国内メーカーは、いつしか携帯開発の高コスト化に悩まされるようになった。各社とも開発プラットフォームを共通化するなど工夫はしているが、特に日本国内での3G端末の高機能化は著しく、どうしても費用がかさみがちだ。それでいて国内の携帯出荷台数は、長期的に減少傾向にある。

 海外に目を向ければ広大な市場が広がっており、各メーカーともここを目指している。鵜狩氏は発表会で、いわゆる「BRICs」――ブラジル、ロシア、インド、中国といった国のCDMA市場に注目していると言及した。だが海外市場では、まだまだエントリーレベルの端末が売れ筋。SamsungやLGといった韓国メーカーの台頭もあり、日本メーカーは世界のトップ5に全く食い込めない状況だ(2005年8月26日の記事参照)。

 「(海外の)5〜6社が、出荷台数で5000万とか7000万という状況。日本国内のメーカーは距離をおかれている」(同氏)。同じ国内メーカーでは、例えばNECも海外事業の不振と、国内市場の競争過熱を指摘している(2005年12月28日の記事参照)。

 三洋電機の携帯事業は、現時点では黒字だ。鵜狩氏によると、今年度の利益は100億円程度になる見込み。しかし、同氏は事業が「だんだん苦しくなってきている」「コストパフォーマンスが苦しい」と繰り返す。Nokiaと新会社を作ることで、この苦境から「脱出して、リスタートする」としており、その表現からも相当に追い込まれた状況を認識していたことがうかがえる。

Nokiaという「脱出口」

 Nokiaは、いわずと知れた世界トップの端末メーカー。GSM端末では圧倒的なポジションにあるが、CDMAの分野ではSamsungやLGに遅れをとっていた。そんなNokiaにとっても、auや米Sprintといったキャリアに食い込んでいる三洋は魅力的なパートナーだ。

Photo CDMAの携帯出荷台数

 単純な数字の上乗せだけでなく、補完関係も築ける。三洋の強みは、いうまでもなく日本国内の競争でもまれたハイエンド端末の開発力。そしてNokiaの強みは、技術上の特徴が少ない端末でも売上を立てられる絶対的なブランド力と、端末を安価に提供できる商品供給体制にある。

 新会社設立による三洋電機の狙いは明らかだ。「世界で広く戦ってみたい」と鵜狩氏が口にするとおり、世界市場への進出ということになる。Nokiaは既に世界で60を超える通信キャリアと関係を持っており、三洋電機はこうした「顧客」を相手にできるようになる。

三洋電機の経営再建につながるのか?

 1つ、今回の発表で不透明だったのはこの事業が三洋電機にとってどの程度利益をもたらすのかだ。前述のとおり、三洋の携帯事業は現時点でも100億円の黒字を出せる状況にある。経営再建を進める三洋にとって、この黒字事業を本体の建て直しに利用したいところだ。

 だが新体制では、その黒字事業が本体から分離されてしまう。出資比率は未定だが、Nokiaの出資比率が高くなるようなら、新会社の利益はむしろNokiaに流れることになる。会場では、どちらが新会社の経営の主導権を握るかは明かされなかった。「まだ詳細は決まっていない段階。新会社はイコールパートナーシップで進めていく」(Nokia)

 とはいえ、このままでは「ジリ貧」に陥るとみた三洋電機が、状況打開のため意欲的に動いたのは間違いのないところ。鵜狩氏は新会社がどの程度黒字を計上できるようになるか、合意はしていないと断った上で、その数字を大きく伸ばすことを目標に挙げた。

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