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» 2006年02月21日 14時37分 UPDATE

ウィルコム、次世代PHSの公開実験──2.4Mbpsでの通信を実現

ウィルコムが、1月27日に実験用免許を取得した次世代PHSシステムの概要と実験の模様を公開した。通信速度20Mbps以上をターゲットとしている。

[園部修,ITmedia]

 2月21日、ウィルコムは2.3GHz帯の5MHz幅を用いて行っている次世代PHSシステムの実験をプレス向けに公開した。1月27日に実験用の免許を取得(1月27日の記事参照)してから3週間。その間に行った実験の内容と、実際の通信デモを披露した。

端末で20Mbps以上の速度を実現する次世代PHS

Photo ウィルコムの開発本部長黒澤泉氏

 ウィルコムは2010年ごろの実用化を目指し、現在展開しているPHSサービスの技術的特徴を基本とした高速、大容量ワイヤレスブロードバンドシステムの実験を行っている。現行PHSの特徴や基地局装置を継承しつつ実用化する予定だ。

 この次世代PHSの特徴として、開発本部長の黒澤泉氏は以下の5点を挙げる。

  • 上下方向共に最高20Mbps以上のスループットを実現
  • OFMDA、MIMO、高度アダプティブアレイ技術を導入
  • カバーする範囲が狭い基地局を多数用意してエリアをカバーする、マイクロセル方式を前提とした高い周波数利用効率
  • トラフィックの多いエリアには多数の基地局を設置するといった、システム展開の柔軟性
  • 現行PHSサービスとの共存を前提とし、PHSと同じフレーム構成を採用

また、基本的には現行PHS基地局と同位置に基地局を配置したいこと、すでに16万カ所以上に展開しているPHSの基地局と基地局装置を有効活用していくことなどを明らかにした。

PhotoPhoto 現在展開しているPHSサービスの持つ省電力、マイクロセル方式、システム展開の柔軟性などの特徴はそのままに、高速化や大容量化を進める方針だ。現行のPHSと共通のフレーム構成を採用し、既存のシステムとの併存を可能にする

 今回ウィルコムが手がけている次世代PHSシステムは、PHSの振興団体、PHS MoU(PHS Memorandum of Understanding)での標準化も進めている。現在はワーキンググループとして活動している次世代PHSの組織を、2月28日に開催するPHS MoUの総会以降は、上位組織へ格上げする予定だ。黒澤氏は、今後のPHSの展開について「日本だけでなく、中国などでも次世代システムとして利用できるよう規格化していきたい」と話した。標準化する内容についてはまだ検討中であり、詳細は言えないとしながらも、大枠は今回の実験で用いているものを踏襲するという。OFDMAのサブキャリアをいくつ用いるか、どれくらいの速さの移動体にまで追従するか、といった細かなスペックを今後詰めていく。

次世代PHSと現行のPHSとの違い
次世代PHS 現行PHS
周波数帯 1〜3GHz 1.9GHz
最高伝送速度 上下それぞれ20Mbps 上下それぞれ1Mbps
アクセス方式 OFDMA+TDMA/TDD 4 TDMA/TDD
キャリア周波数幅 5M〜20MHz 300kHz
フレーム長 5ms上下対称 5ms上下対称
変調方式 BPSK〜256QAM BPSK〜256QAM
音声コーデック SIP準拠 G.726 ADPCM
セル構成 マイクロセル マイクロセル
周波数有効利用技術 アダプティブアレイ、SDMA、MIMO アダプティブアレイ、SDMA
周波数帯やキャリア周波数幅は、今後総務省から割り当てられる帯域によって変わる

実験用基地局は虎ノ門地域に設置

 実験は、虎ノ門地域のビルに基地局を設置して行っている。具体的には、ウィルコム本社ビルの屋上に屋外局アンテナを設置し、警視庁前からウィルコム本社前までの、桜田通り沿い500メートルほどのエリアをカバーする。

 この桜田通り沿いで、電波伝搬特性やスループットの特性の評価を行っているわけだ。実際にアプリケーションを用いたテスト、走行中の自動車内でデータの送受信を行うテストなども実施している。現在は基礎データの収集中で、今回の実験で得られたデータを基に、システムを開発する。

kitikyoku1.jpgkitikyoku2.jpgsakurada.jpg 次世代PHS用の実験アンテナは、虎ノ門36森ビルの屋上にある(左)。左側に見える直方体の物体がアンテナで、隣にあるのはGPSアンテナだ。屋外用ラック内の基地局ユニットはこのようになっている(中)。GPSアンテナ、アクセス回線用LANインタフェース、アンテナケーブルが接続されている。実験は桜田通り沿いで実施している(右)

デモでは最大2.4Mbps程度の伝送を実現

 報道陣に公開したデモは、実験用の基地局とアンテナ、端末、それにノートPCを屋内に設置して行った。主な内容は、回線計測サイトを使ったWebページからのデータのダウンロード、専用サーバーからのストリーミングビデオ再生、PC間でのビデオチャット、PCからのインターネットアクセスなどだ。

PhotoPhoto 実験は会議室の中にノートPCと通信用ユニット(左)およびアンテナ(右)を用意して行った。PCは2台設置し、同時にアクセスした際のスループットの変化についてもデモした

 Webページを用いたダウンロードテスト(1Mバイト同時2接続)の速度は平均1.859Mbpsを記録。ストリーミングビデオの再生は平均2.2Mbps程度、最大2.4Mbpsでの転送を記録した。同時に2台の端末からアクセスしても、それぞれと1.5Mbps程度ずつ、基地局側では3Mbpsでの通信が可能だった。ビデオチャットでは、動画は多少コマ落ちしてカクカクした動きもあったものの、音声はクリアで実用も可能という印象。インターネット経由でGyaOのニュース番組を視聴するデモでは、およそ1.7Mbps程度で映像を再生していた。

os_download.jpgos_stream.jpgos_videochat.jpg 「SPEED TEST」サイトに接続してダウンロードの速度を計測(左)。速度は1.859Mbpsと出た。事前のテストでは2.5Mbps程度の速度が出ていたという。ビデオストリーミングのテスト(中)では、最大2.416Mbps、平均2.228Mbpsを記録した。ビデオチャットのデモ(右)は、時々映像が止まることもあったものの、ほぼコンスタントに動きと音声の送受信ができていた
Photo デモを担当した企画開発部課長補佐の安藤高任氏

 企画開発部課長補佐の安藤高任氏は「直前の実験では、ダウンロードテストで2.5Mbps程度出ていたので、今回のデモの結果は不本意」と話したが、現在はOFDMAのノウハウを蓄積している段階で、本格的な運用にまでは至っていないこと、実験に用いている米Adaptixの端末が、現行PHSより受信特性が悪かったり、無線のチューニングを行っていなかったりすることなどが理由で、伝送速度は最大3Mbps前後しか出ていないと報告した。

 今回の実験で用いたシステムでは、理論上の伝送速度が下り方向で16QAMの3Mbps、上り方向でQPSKの1Mbpsだったため、実際のデータ転送速度も2Mbps台と驚くほどの速さではなかった。しかし2006年夏には、理論上の伝送速度を20Mbpsに引き上げ、第2段階の実験に入るる。最終的には、端末側で20Mbpsオーバーの実効伝送速度の実現を目指す計画だ。

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