Sling Mediaは、今年1月に開催された2006 International CESにおいて、Windows Mobile用のクライアントソフト「SlingPlayer Mobile」の提供を表明しており、3月末よりβ版の提供を開始した。
LF-PK1がヒットしている理由は、携帯ゲーム機「PSP」により“どこでもTV”を実現できる点が最も大きいのではないだろうか。それに対しSlingboxでは、Windows Mobile対応クライアントソフトをリリースした。日本ではWindows Mobile対応の携帯端末はほとんど普及していないものの、1つだけ国内で非常に注目されている機器がある。
それは、ウィルコム「W-ZERO3」だ。Windows Mobile 5.0と3.7インチVGA液晶、IEEE 802.11b準拠無線LANを標準で搭載する本機で“どこでもTV”が実現できるとなると、ぐっと来るものはないだろうか。
早速SlingPlayer Mobileのβ版(2006年4月現在)をインストールして活用してみよう。インストール方法は、一般的なWindows Mobile用ソフトと基本的に同じだ。Sling MediaのWebサイトからSlingPlayer Mobileのβ版ソフトをダウンロードし、ActiveSyncを導入したW-ZERO3を接続済みのPC上で実行すると、W-ZERO3にSlingPlayer Mobileが転送されインストールされる。あとは、PCでの設定と同じくFinder IDを登録すれば作業は完了だ。
視聴方法もSlingPlayerとほぼ同じだ。W-ZERO3上からSlingPlayer Mobileを起動し、Slingboxに接続するだけでよい。画面上にはチャンネルを切り替えるリモコンインタフェースも表示され、ボタンをタップすることでチャンネル変更が行える。もちろん、外部AV機器のリモコン操作にも対応する。PC用クライアントソフトのSlingPlayerでできる基本的な操作は、SlingPlayer Mobileでもほぼ同じように実現できる。
もちろん視聴は無線LAN接続環境が必須条件となる。一応PHS 4xパケット通信で試してみたが、さすがに映像の途切れが多発し、スムーズな視聴は行えなかった。
最近ではWindows Mobileを搭載するHDD内蔵の携帯メディアプレーヤー「gigabeat S30/S60V」も登場したこともあり、日本でもWindows Mobile搭載機が増えてくれればよいと思っているが、現状ではほとんど普及しておらず、SlingPlayer MobileがSlingboxの魅力を最大限に上げる存在とは言いにくいかもしれない。LF-PK1もWindows Mobileや携帯電話向け視聴ソフトの提供が表明されており、SlingPlayer Mobileの存在がLF-PK1を脅かすほどかというと疑問符は付く。
ただしW-ZERO3で使えるなら購買意欲をそそる大きな存在になるし、PC以外でも“どこでもTV”を享受できるという意味で、SlingPlayer Mobileの存在は無視できない。今後Windows Mobile以外の携帯機器(携帯電話や携帯ゲーム機など)にも展開できれば、そして国内でも発売されればSlingboxの魅力がより大きくなっていくことだろう。
今回は米国で発売されているSlingboxをそのまま日本で試してみたわけだが、LANやインターネット経由にてリモートでTVを視聴するという本来の機能に関しては、日本でも全く問題なく利用可能だったことは非常に好感が持てた。
日本向けとして発売されているわけではない製品ということもあり、ソフトのインタフェースが英語である点は当然として、せっかく用意されているリモコン機能も日本のAV機器が登録されておらず、ほとんど利用できないという点が現状のデメリットとなるだろうか。同じコンセプトの製品であるソニー「LF-PK1」(実売価格は3万円前後)が存在している以上、“W-ZERO3での活用”を考えるユーザー以外は、円換算し(2006年4月12日現在の円換算で約2万9000円)、送料なども含むと考えると価格はそれほど変わらないこともあり、現状のSlingboxを個人輸入などで入手するにはちょっとメリットは少ない。
しかしこのSlingboxは日本での発売が予定されている。Sling Mediaによると現在、発売に向けて細かな調整を行っている最中だそうだ。
日本国内で正式に発売される際には、クライアントソフトであるSlingPlayerの日本語インタフェース化はもちろん、AV機器のリモコンコードの登録も行われるだろうとも思われ、今回深く試せなかったリモコン機能も最大限に活用できるようになるだろう。そうなると、LF-PK1に十分対抗できる存在となるはず。2006年4月現在では具体的な発売時期はまだ不明だが、できるだけ早い時期での発売を期待したいところである。
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