インタビュー
» 2007年09月14日 21時53分 UPDATE

Ericsson Strategy and Technology Summit:通信、メディア、IT──3つの業界の融合がモバイルを変える

欧州市場でも、W-CDMAネットワークが広がりを見せ、HSPAの導入も始まった。インフラを提供するEricssonは、モバイル市場をどう見ているのか。同社戦略担当上級副社長ヨアキム・ヴェスト氏に聞いた。

[末岡洋子,ITmedia]

 3Gは世界的に浸透し始め、HSPA(HSDPA/HSUPA)の導入も徐々に始まっている。モバイルブロードバンドも注目を集めるなど、業界は活況を呈しており、通信機器を提供するスウェーデンのEricssonも好調だ。3G/HSPA、通信機器市場、そしてオペレーターの課題などについて、同社戦略担当上級副社長ヨアキム・ヴェスト(Joakim Westh)氏に話を聞いた。

Photo Ericsson戦略担当上級副社長ヨアキム・ヴェスト(Joakim Westh)氏

ITmedia まずはHSPAの現状について教えてください。

ヴェスト氏 地域を問わず、あらゆる3G/W-CDMAオペレーターがHSPAに高い関心を示しています。多くがすでにW-CDMAのネットワークをHSDPAにアップグレードしており、そうでなければ計画中というところがほとんどです。

 HSPAへの移行が進んでいる理由は簡単です。3GとHSPAにより、モバイルブロードバンドを実現でき、ユーザーのニーズを満たせるからです。ユーザーは高機能な携帯電話を使ってさまざまなことをやろうとしていますが、その多くはオペレーターが望んでいるデータトラフィック増につながるものです。3GとHSPAはこれを実現するパイプとなり、オペレーターにさらなる売り上げ増をもたらします。

 現在HSPAは、もっとも高速な商用サービスで下り最大7.2Mbpsを実現しています。今後、この速度はさらに向上し、2008年には下り最大28Mbps、その後は下り最大42Mbpsに達するといわれています。

ITmedia ではHSPAの次に予定されているLTE(Long Term Evolution)についてはいかがでしょうか。

ヴェスト氏 (3G技術である)HSPAのデータ転送速度が予想以上に高速化し、4Gに近くなったことを受け、LTEの定義を一部変更する動きがあります。これまでの定義では、100Mbps以上の通信速度を実現するものが4Gということでしたが、新たな作業が加わっています。ITUは今年の秋に会議を開く予定で、ここで最終的な定義が定まると予想しています。

 LTEは現在、一部のオペレーターが2008年にローンチし、実際の商用サービスとして提供がはじまるのはその後の2010年と予想しています。

 ですが、古い規格であるGSMは今年ようやくピークを迎えたところです。来年も、今年を上回るかもしれません。Ericssonとしては、当分はHSPAがメインの技術となると見ています。

ITmedia 世界的にデータの利用が増加しているとのことですが、アプリケーションのトレンドは?

ヴェスト氏 ユーザーはさまざまなアプリケーションを利用しており、トレンドと一口にいっても難しいのですが、ダウンロード、ブラウジングのほか、ビデオストリーミングなども増えているようです。

 今は非常にエキサイティングな時代だと思います。MySpace、YouTubeなどインターネットのプレーヤーがモバイルに進出しようとしており、通信、メディア、ITの3つの業界が融合しようとしています。将来、競争がどのように進むのかは分からない状態です。

 ですが、モビリティの力は世界中に浸透しつつあります。世界のインターネットユーザーは10億人ですが、携帯電話の加入者は30億人います。さらに、携帯電話の加入者や利用はインターネットのそれを上回るペースで増えています。多くの人は端末を常に持ち歩いており、端末の機能は日々進化しています。

 いま現在固定回線で提供されているサービスは、近い将来モバイルでも利用できるようになるというのが流れだと思います。特に、途上国・新興国市場では、モバイル端末がメインのインターネットへのアクセス手段となる可能性が非常に高いといえます。

 インターネット側もモビリティの力を認めており、固定側のインターネットアプリケーションをモバイル側に取り込もうというのが流れです。

ITmedia モバイルブロードバンドの時代には、オペレーターの役割はどのように変わってくるのでしょう。単なるパイプ役になるのでしょうか?

ヴェスト氏 オペレーターはこれまで、音声通話サービス、そしてブロードバンドを提供してきました。そういう意味では、すでにパイプ役といえます。今後、その上に付加価値を加えるのかどうかが、オペレーター各社の課題となります。

 現在、オペレーターのビジネスモデルは大きく2つの種類に分かれているようです。データ定額制などを提供しながら効率的なパイプ役に回ろうとする事業者もあれば、音楽ダウンロードなど自分たちのサービスを付加して新しい収益を狙う事業者もいます。私から見ると、両方のモデルが可能です。

 オペレーターは、顧客、位置などの貴重な情報を持っています。これをどのように活用するかが課題でしょう。まだ危機感を抱いていないオペレーターもいるようですが、変換期にさしかかったことを理解して、対応しようとしているオペレーターもいます。

ITmedia 米Appleは「iPhone」で、オペレーターを選ぶというこれまでのビジネスモデルとは異なる動きをしています。Appleのような動きは、今後業界にどのような影響を与えるとお考えですか?

ヴェスト氏 Appleは新しいモデルを業界に持ち込もうとしています。まだそれについて語るのは時期尚早ですが、先にお話ししたように、3つの業界が交わろうとしています。今後も新しいビジネスモデルが生まれてくるでしょう。iPhoneのような動きは、パイプ役になろうとするオペレーターにとってはいいニュースでしょうし、コンテンツなど付加価値からの収益を目指すオペレーターにとってはいいニュースではないかもしれません。

ITmedia Ericssonは今後モバイル業界でどういったポジションを目指しますか?

ヴェスト氏 モバイルと固定、どちらのコミュニケーションとメディアも増加傾向にあります。メディアが金塊とすれば、われわれの戦略は、金塊にたどりつくまでのあらゆる方法を提供することです。ですが、われわれ自身が金塊を求める立場には回りません。

 Ericssonは買収を通じて、完全なネットワークを提供する包括的なポートフォリオを持つに至っています。プロフェッショナルサービスや運用なども強化してきました。ポートフォリオ、サービス、技術力が我々の差別化といえます。

 私たちは現在、モバイルインフラ市場で45%のシェアを占めています。競合他社が大型の吸収合併に動いたことは、Ericssonにとってプラスに転じました。他社がリストラを経てシナジー効果を出すまでに時間がかかっている間、我々は技術開発に専念し、顧客との関係を強化しています。小規模な技術企業の買収はしましたが、こちらは補完的な買収なので、統合はスムーズに進んでいます。

ITmedia 最後に日本市場をどう見ているか教えてください

ヴェスト氏 日本の市場は、他の市場よりはるかに進んでいます。LTEの導入でも最初のグループに入るでしょう。そのため、我々は日本市場に常に注目しており、FeliCaを始めとした最新サービスとユーザーの受け入れ状況なども観察しています。

 オペレーターでは、ソフトバンクモバイルやNTTドコモなどと良好な関係を築いています。

ITmedia ありがとうございました。

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