「WiMAXとHSPAは補完関係になる」──Ericssonのマイケルソン氏3GSM World Congress 2007

» 2007年02月21日 18時16分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
Photo Ericsson マーケティング・ディレクター、ピーター・マイケルソン氏

 HSPA(HSDPA/HSUPAの総称)の商用サービスが普及に向けて動き出す一方で、ネットワーク業界には統合再編の波が押し寄せている。大手Ericssonはスペイン・バルセロナで開催された「3GSM World Congress 2007」で、4G標準規格の有力候補といわれるLTE(Long Term Evolution)のデモを行い、技術力を披露するなどアピールに余念がない。Ericssonでマーケティング・ディレクターを務めるピーター・マイケルソン氏に、ネットワーク業界のトレンドと、それに伴う同社の戦略について聞いた。

ITmedia ネットワーク業界のトレンドについて教えてください。

マイケルソン氏 2つの方向性があります。1つはデータ伝送量の増加、もう1つはより多くのユーザーにネットワークを提供することです。前者は主として成熟市場のトレンドで、後者は新興市場となります。

 前者については、いかにデータ利用を増やすかという難しい課題があります。ただ、この1〜2年で状況は変わってきました。音楽のダウンロードやモバイルテレビなどのサービス・アプリケーションが登場し始めたからです。

 われわれがコンシューマーを対象に行った調査では、コンシューマーはいつでも、どこでも、あらゆる端末からブロードバンドに接続することを求めています。オペレーターは、固定と無線、端末とさまざまな技術をまたいでシームレスに利用できる環境を提供しなければなりません。これにはスピードだけでなく、これまでとは異なるインフラが必要です。そこでわれわれは、このニーズを満たすアーキテクチャとして「フルサービスブロードバンド」を提供します。

 ブロードバンドは電話と同じで、モバイルに移行しています。ユーザーは、会社や家で固定ブロードバンドを通じて行っていることを、モバイルの状態でも行いたいと思っているわけです。

 後者の新興市場に対するアプローチですが、次の10億人に達する素地は整ってきました。ベンダー各社は低価格な携帯電話を提供しています。ここに向けてわれわれは、インフラコストの削減、効率のよいエリアカバーをサポートするソリューションを提供しています。例えばわれわれの基地局は、サイト全体の15〜20%という低コストを実現しています。カバレッジでは、先日、オーストラリアのTelstraで約200キロの範囲で下り速度14.4Mbpsを実現しました。Ericssonが技術的リーダーシップを発揮していることを実証した例といえます。

 新興市場のようにARPUの低い市場でオペレーターは収益を得にくいと思われていますが、ARPUが低いオペレーターでもEBITDAが高いオペレーターがたくさんあります。フィリピンのSmartなどがよい例です。これは経営の問題で、資産をどのように活かすかが鍵で、新興市場のオペレーターの中にはROIを回収し、さらなる加入者を得ることで高い利益率を実現しているところが多数あります。

 Ericssonでは、ネットワーク利用を最大化するソリューションを提供しています。例えばネットワーク容量に応じて動的に課金するダイナミック・チャージングがあります。キャパシティが余っているときは、通話価格を下げるなどの特別なオファーやキャンペーンを展開することで、利用率を上げることができます。

 ネットワークを構築したら、ROIを回収しなければなりません。オペレーターはネットワークの利用を促進するサービスを展開する必要があり、われわれの新しい事業部であるマルチメディアがこれを支援します。

ITmedia 通信インフラ業界には、AlcatelとLucentの合併、NokiaとSiemensの合併など、業界再編の波が押し寄せています。Ericssonは、こうした動きをどう捉えていますか?

マイケルソン氏 これまでプレイヤーの数が多すぎたので、統合再編の動きはよいことだと思います。

 Ericssonは、英Marconiなど3社を買収しましたが、大型の合併がなかったので、ユニークなポジションにあると思います。

ITmedia WiMAXはHSPA、さらにはLTEにどのような影響を与えると見ていますか?

マイケルソン氏 WiMAXとHSPAは技術的に似ており、それぞれに長所と短所があります。Ericssonでは、2つは補完関係になると見ています。

 ただ、オペレーターはGSM/WCDMAに多額な投資を行っており、すでにインストールベースがあることから、HSPAが有利です。実際、2006年はそれを実証した年でした。ワイヤレスブロードバンドとモバイルブロードバンドの両方の観点でHSPAが選ばれました。現在、世界で約100のHSPAサービスがあり、HSPAに対応したネットワーク内には5億人のユーザーがいます。

 LTEはHSPAの次の技術です。HSPA、LTEで強調しておきたいのは、これらはすべてGSMからの自然な進化であるということです。LTEは3GPP Release 8の一部で、Release 8は2008年末に標準が固まり、商用化は2009年と予定されています。

 WiMAXは出遅れましたが、オペレーターはWiMAXの動向を注視しており、EricssonはWiMAX技術も提供します。

Photo Ericssonは3GSMでLTEのデモを展開。2.6GHzの周波数帯を使い、下り最大144Mbpsが可能なシステムを設置した。デモでは75Mバイトのファイルのダウンロードが約14秒で完了。速度は45Mbpsだった。映画1本分(約700Mバイト)のファイルなら、約1分でダウンロードできるという。テレビ会議システムでは、上りの速度は8.5Mbpsだった
Photo 2本のアンテナを使ったMIMOを利用すると、下り速度145Mbpsを実現した

ITmedia 携帯電話からインターネットにアクセスする、モバイルインターネット時代が到来するといわれていますが、データ定額制がオペレーターの戦略の鍵になるのでしょうか?

マイケルソン氏 モバイルインターネットは、伝送速度、魅力的な端末、魅力的なサービスと条件がそろってきました。

 欧州では英国のオペレーター“3”が「X-Series」でデータ定額制を導入しており、それ以外の国でも、上限はあるもののデータ定額制を提供するオペレーターが出てきています。今後、多くのオペレーターがこの流れに乗ると思います。

ITmedia オペレーターの中には、ネットワークを共有する動きがあります。これはEricssonのビジネスにインパクトを与えるのでしょうか?

マイケルソン氏 オペレーターの中には、ネットワークをコア事業とするところもあれば、マルチメディアをコア事業とするところもあります。

 ネットワークを共有すれば、サイトの数は減らせますが、トラフィックは同じです。これまでと同じ機能と容量を提供しなければならないことに加え、管理も必要です。こうしたことから機器の面では、影響は少ないと思います。

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