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» 2007年11月07日 13時55分 UPDATE

神尾寿の時事日想: 携帯キャリアはアンドロイドの夢を見るか

Googleが発表した携帯向けプラットフォーム、「Android(アンドロイド)」。オープンな開発環境で、携帯電話の開発コストを大幅に削減するという“Google携帯”がいつ登場するのか――その鍵を握るのは、ドコモやKDDIといった通信キャリアである。

[神尾寿,Business Media 誠]

 11月5日、米Googleが携帯電話向け包括プラットフォーム「Android」を発表した(別記事)。これは携帯電話のOSやミドルウェア、ユーザーインタフェース、アプリケーションなどを含むオープンソースのプラットフォームであり、インターネットの世界と親和性が高く、様々な企業や個人がアプリケーションを開発できる“オープン指向”が特徴になる。

Androidはネットと携帯をつなぐブリッジ

 このAndroidにおいて、Googleが目指す理想は明確だ。同社は自らの役割を「世界中の情報を(ネットで)普遍化する」(Google 携帯プラットフォーム部門ディレクターのアンディ・ルービン氏)ことと自負しており、Androidはネットと携帯電話をつなぐ「ブリッジとなる存在」だ。携帯電話を取り込んでリアルな世界との“出入り口”を広げることで、より多くの情報がネットに取り込まれて普遍化する。Googleの理想を鑑みれば、携帯電話の世界に乗り出すことは、むしろ自然な流れと言える。

 また、Googleは、Androidを「汎用のモバイルプラットフォーム」と位置づけており、携帯電話を足がかりに、ポータブルメディアプレーヤーやナビゲーションシステム、セットトップボックスといったノンPC全般に広げていく計画だ。その中で、今回の携帯電話向けAndroidは橋頭堡を築く役割を担っている。さらに筆者の予想では、遠からずPND(Personal Navigation Device、簡易型カーナビゲーションのこと。別記事参照)向けAndroidも登場するだろう。そしてこの2つは、Googleモバイル戦略の両輪となるはずだ。ビジネス面で見ても、「コミュニケーション・パーソナライズ・位置情報と地図」の3要素を兼ね備えた携帯電話とPNDの重要性は高い

ドコモとKDDIのAndroidに対するスタンスは?

 Androidとあわせて、Googleと携帯メーカー、通信事業者など34社からなる「Open Handset Alliance」(OHA)の創設も発表された。OHAのメンバーには、アプリックスやクアルコム、LG電子、Samsung電子、HTC、eBay、インテルなどが参加しており、さらにNTTドコモとKDDIも名を連ねている。日本の業界1位と2位のキャリアが参加したことで、新聞各紙をはじめAndroidとOHAの注目度はかなり高くなった。

 しかし、筆者がNTTドコモとKDDIに問い合わせたところ、OHAでの活動は「具体的には決まっていない」(NTTドコモ広報部)状況だという。

 例えばドコモでは、すでにSymbian OS、Linux、Windows Mobileという3つのプラットフォームを採用しており、今年1月には、NEC、パナソニックモバイルコミュニケーションズ、モトローラ、Samsung電子、Vodafone Groupらと、Linux OSベースで携帯電話向けプラットフォームを構築する組織「LiMo Foundation」を立ち上げている。また今年2月には、ルネサステクノロジ、富士通、三菱電機、シャープ、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズらとSymbian OSを用いた共同プラットフォーム開発に着手しており、様々な携帯プラットフォーム計画すべてに名を連ねている状況だ。しかし、これらとAndroidおよびOHAが今後どのように棲み分けていくのか、今後の投入端末における採用の比率がどうなるかは、明確にはまだ決まっていないという。

 「ドコモが特定のプラットフォームにのみ注力するという考えはない。多くの選択肢を検討していきますし、最終的にどれを採用するかはメーカーの判断になります」(ドコモ広報部)

 一方、KDDIは、Android採用の具体的なプランは検討段階だが、プラットフォームの棲み分けにおける位置づけについては、ドコモよりも明確なスタンスを持っている。

 「今後の(KDDIの)端末プラットフォームで中心的な役割となるのはKCP+です。Androidは、現在のKDDIにおけるWindows Mobileの位置づけに近く、お客様により多くの選択肢をご用意するものと考えています」(KDDI広報部)

Androidの理想は共有可能か?

 Googleが目指す「オープンプラットフォームでの成長」という世界観は、新規ビジネスの促進による市場の活性化や、開発コストの削減という見方をすれば、少なからぬ効果が期待できる。しかし、その一方で、キャリアは端末・サービスの「安定性」や「セキュリティ」、「ユーザーサポート費用」も考えなければならず、ユーザーの利用環境をある程度コントロールする必要がある。ドコモとKDDIにとってAndroidは“1つの選択肢”に過ぎず、Googleの目指す方向性を全面的に支援しているわけではない。

 AndroidとGoogleが、携帯電話ビジネスの世界を大きく変える存在になれるか。その課題にして鍵となるのは、ドコモやKDDIを始めとする世界中の通信キャリアが、Androidの見る夢を共有できるかどうかにありそうだ。

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