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» 2007年11月30日 18時00分 UPDATE

ケータイだけで“リアルタイム通訳”を実現――NECの日英自動通訳ソフト

NECは、サーバ通信などを介さず、携帯電話単独で快適に動作する日英自動翻訳ソフトを開発した。日本語を話すと英語の文書へ翻訳するもので、処理時間は約2秒。旅行会話など約5万語の語彙(ごい)を収録した。

[平賀洋一,ITmedia]
photo 日英自動翻訳ソフトを搭載した「SIMPURE N1」。

 NECは11月30日、携帯電話上で快適に動作する日英自動翻訳ソフトを発表した。リソースの少ない組み込み機器向けに設計されたコンパクトなソフトウェアで、旅行会話など約5万語の語彙(ごい)を収録。数秒の処理速度で、日本語の音声から英語のテキストへ翻訳を行う。

 このソフトは、NTTドコモのNEC製端末「SIMPURE N1」をベースにした試作端末上で動作する。日本語の自動認識と英語への機械翻訳をローカルで処理するため、外部サーバとの通信が不要。そのため、移動中やへき地など携帯電話が圏外になる場所や環境でも利用できるのが特徴だ。

 また、日本語の発声終了(入力)から音声認識結果の表示までに約1秒、翻訳開始の指示から翻訳結果の表示(出力)まで約1秒程度と、快適な処理速度を実現した。NECでは「旅行会話の自動通訳機能を携帯電話機単体で利用することが技術的に可能となった」としている。

 NEC中央研究所 支配人の笠原裕氏は「自動通訳電話は、1977年に当時のNEC会長 小林宏治が提唱した“C&C”(コミュニケーション技術とコンピュータ技術の融合)という理念の象徴のようなもの。『誰でも、いつでも、どこでも顔を見ながら話ができる』という当時の夢を、30年近く開発を続けた結果、この大きさにすることができた」と話す。

photo NEC中央研究所 支配人の笠原裕氏(中央)、同共通基盤ソフトウェア研究所 統括マネージャーの奥村明俊氏(右)、同研究部長の服部浩明氏(左)

 NECは1983年に自動通訳機のコンセプトモデルを発表し、1991年に実験システムの試作モデルを公開。1999年にはノートPC上で動作するソフトの開発を行い、世界初の市販通訳ソフトを2001年に発売している。その後、同社の自動通訳技術はPDAタイプの旅行用端末(試作機)やポータブルマルチメディアプレーヤー「VoToL」へ搭載されるなど、小型化が進められてきた。

 「音声認識は人間にとっては基本的なことだが、機械に処理させるには大変難しい分野。翻訳は人間にとっても難しい仕事で、自動化はより難しい。当初は必要な処理能力を満たすためにすべて専用のハードウェアで構成していたが、進化によってソフト上で動作するようになった。さらに小さいリソースで動くように努力し、携帯電話のような小さい規模で動くものまで開発できた」(笠原氏)

 今回発表された日英自動翻訳ソフトは、端末のリソースに合わせて音声認識エンジンを携帯電話機向けに最適化している。入力された音声がどのような日本語なのかを比較する「音響モデル」の情報量と、分析の細かさを調整し、PC向けの通訳ソフトの速度と精度をほぼ保ったまま、使用リソースを約半分に削減した。

photophotophoto 携帯端末で動作するよう、自動認識エンジンと機械翻訳エンジンをコンパクトにした(左、中央)。通訳ソフト全体をミドルウェアで制御。端末内にあるほかのソフトからも通訳機能を呼び出せる(右)

 翻訳するときの日本語の長さに制限はないが、長時間の発音で言葉や意味が増えると精度が落ちるという。翻訳精度は、会話の内容や環境音により左右されるが“あまり自然ではないがなんとか意味が通じるレベル”も含めると、成功率は7割から8割程度。普通の会話で使う平易なフレーズで、短めの発音であれば精度が高くなる。

 また、機械翻訳エンジンも、データ構造の最適化や収録内容の見直しなどを行い、精度を保ったままコンパクト化を実現。さらに、音声認識と機械翻訳を制御する統合モジュールをミドルウェア化することで、携帯電話内のメールソフトやWebブラウザといった各種アプリケーションから呼び出せる構造を採用した。この技術はiアプリなどへの応用も可能だが、実効速度の低下やアプリケーションと辞書データ容量の制限があることから、現状のFOMA端末のスペックでは、実用的な速度で動かすのが難しいという。

photophoto 実際に日本語から英語へ翻訳する通訳デモも行われた

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 同研究所の共通基盤ソフトウェア研究所 研究部長の服部浩明氏は、「このソフトは、携帯のような比較的処理能力の低い機器でも動作するようコンパクトに作っている。試作機のプロセッサは動作速度250MHzのARM9チップで、最新の905iシリーズと比べると半分くらいの処理能力だが、軽快に動く。処理エンジンなどのソフト自体と辞書データを合わせた容量は約20Mバイト程度だ。翻訳・通訳ソフトはPCやPDAでいくつかあるが、携帯電話単体でここまで動くものは、おそらく唯一だろう」と解説した。

 このソフトでは日本語の発音から、英語のテキストへ翻訳する機能しかないが、双方向の通訳機能や、音声合成技術を組み合わせて携帯電話から英語を発声させることも検討中。すでにPDAサイズの試作機では実装を完了しているという。また、英語以外の言語については日本語/中国語の精度を高めている段階で、そのほかの言語についても市場動向を見ながら検討するとしている。

 現在のところ、このソフトを搭載した携帯電話の製品化は未定だ。近い将来、高い精度で自動通訳を行ってくれる携帯電話が登場すれば、海外など英語を使ったコミュニケーションの幅が“ケータイ”によってさらに広がるのは間違いないだろう。

photophoto 自動通訳ソフトを搭載した端末により、海外旅行やビジネスでの英会話をサポートできる(左)。NECが取り組んできた自動通訳開発の歴史(右)

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