キャラデザインは吉田戦車、ネット中心にPR――「おサイフくんQUICPay」とは? 神尾寿の時事日想

» 2008年02月15日 11時58分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 トヨタファイナンスは2月14日、おサイフケータイだけで利用でき、プラスチックカードを発行しないクレジットサービス「おサイフくんQUICPay」を発表した(参照記事)。同サービスはQUICPay(参照記事)の利用が基本となるが、JCBブランドのクレジットカード番号が発行され、ETCカードも用意される。ドコモのDCMX miniが「iD決済のみ」に限定されているのに対して、おサイフくんQUICPayはインターネットショッピングや公共料金の支払いにも使えるなど、一般的なクレジットカードに近いサービスが実現されているのが特徴だ。トヨタファイナンスではおサイフくんQUICPayを「キャッシュレス社会を実現する起爆剤」(トヨタファイナンス執行役員総合企画部長の後藤清文氏)と位置づけている。

手軽に使えるサービスで若年層獲得を狙う

 現在、国内のクレジットカード会社大手はそれぞれFeliCaクレジットの普及と利用促進に熱心だが、その中でトヨタファイナンスがおサイフくんQUICPayを投入する狙いは何か。

 「大きな狙いは若年層の獲得です。(トヨタファイナンスの)TS CUBIC CARDはトヨタ自動車の販売店で多くの会員を獲得してきましたので、年齢層の高い男性が会員の中心です。20代のユーザーは約10%しかいない。QUICPayとモバイル(おサイフケータイ)を切り口にして、若者・女性層にアプローチしたい。

 さらに利用額を一律10万円で、(Webもしくは携帯電話を通じた)ペーパーレスの申し込み体制とすることで、ショッピングに特化した新しいクレジットサービス商品を作るという狙いがあります」(後藤氏)

少額決済市場はすでに成長期に入っているという認識の下、若年層へのリーチを狙う商品設計

 このようにおサイフくんQUICPayの狙いははっきりしているので、サービス内容も一般的なクレジットカードの基本的な部分を切り取るような形になっている。例えば、入会審査はすべて自動審査であり、その基準は従来のTS CUBIC CARDよりも「クレジットヒストリーがない人にも入りやすいものになっている」(トヨタファイナンス)という。さらに利用頻度が高くなっても、限度額は10万円のまま変わらず、高額商品決済時の一時的な限度額引き上げもできない。キャッシングやカードローンも提供されない。

 「おサイフQUICPayは、とにかくクレジットを使わせようという商品ではありません。クレジットカードをより多く利用したい方には、適宜TS CUBIC CARDをお勧めするというスキームになります」(後藤氏)

 なお、おサイフQUICPayからTS CUBIC CARDの切り替えでは、再度の入会審査があるほか、付与されたクレジットカード番号も変わる。しかし、獲得したポイントやクレジットヒストリーは引き継がれるという。

おサイフくんQUICpayでできることは?

 おサイフくんQUICpayは、年会費無料で利用でき、また1000円利用するごとに5ポイントが付与される。以下、具体的なサービスを見てみよう。

 おサイフくんQUICpayのサービスは、(1) QUICPayによる一般加盟店の決済、(2) インターネットショッピング、(3) 公共料金・携帯電話料金の支払い、(4) ETCの利用、の大きく4つである。

 リアルな店舗での決済に利用できるのはQUICPay決済のみ。インターネットショッピングと公共料金・携帯電話料金支払い用に16桁のクレジットカード番号と有効期限、セキュリティコードが発行されるが、プラスチックカードがないのでリアル店舗では使えない。また、インターネット販売でも、新幹線のチケットのように受け取り時にカードが必要なものは利用できないので注意が必要だ。

 ETCの利用では、おサイフくんQUICPay入会後に申請することでETCカードが発行される。利用方法は一般的なETCカードと同じだが、利用限度額の10万円の中でETCも使うことになる。

 セキュリティ面ではTS CUBIC CARDのQUICPayと同様に、盗難・紛失時の不正利用では遡っての補償が行われる。インターネットショッピングでの補償も同様だ。こと安心・安全の面では、おサイフQUICPayだからと一般的なサービスより見劣りするところはない。

 「ほかにも、おサイフくんQUICPayの特徴として申し込みが簡単で、審査が速い点があります。Webで申し込んでいただいた場合、お申し込みから最短5日でQUICPayのご利用が可能になる予定です」(トヨタファイナンス カード企画部の斎藤 裕司氏)

キャラクターデザインは吉田戦車。ネット中心でPR

 もうひとつ、ユニークなのがイメージキャラクターである。周知のとおり、FeliCa決済ではSuicaのペンギンを筆頭に、かわいく人目を引くマスコットキャラクターが用意されるのが一般的になっているが、おサイフくんQUICPayのキャラクターデザインは吉田戦車が手がけた「おサイフ」である。しかも、このキャラクターはFeliCa決済のおサイフくんQUICPayに「断固反対する!!」という設定のアンチキャラクターになっている。これまでのFeliCa決済キャラクターが、おしなべて“愛されキャラ”なのとは対称的。だが、ちょっと憎めない奴なのも確かだ。

 またプロモーションはネット中心の展開になり、検索連動広告の活用はもちろん、mixiの活用やブログパーツの提供なども予定しているという。

キャラクターデザインしたのは吉田戦車。「おサイフ」は、おサイフくんQUICPayに「断固反対する!」というキャラ設定になっている(左)。プロモーションはネット中心に行う(右)

おサイフケータイの利用促進に繋げたい

 「現在、トヨタファイナンスのQUICPayユーザーは約270万人ですが、(おサイフケータイを使う)モバイルのユーザーは約10万人です。しかし、モバイルの方がQUICPayの利用率が高いという傾向があります。我々としては、おサイフくんQUICPayの獲得会員目標を年間50万人として、モバイルのユーザーを増やしていきたい」(後藤氏)

 おサイフくんQUICPayで使用するQUICPayアプリは、主要3キャリアすべてに用意されており、auの現行ラインアップとソフトバンクモバイルの一部機種ではプリインストールされている。気軽に使い始められて、しかも携帯キャリアを選ばないという点は、ドコモのDCMX miniにない魅力だろう。おサイフケータイ市場への貢献は大きいと言える。

 おサイフQUICPayは、おサイフケータイの利用促進とQUICPayの加盟店拡大のどちらにとっても強力な推進剤になりそうだ。

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