インタビュー
» 2008年03月12日 20時00分 UPDATE

開発陣に聞く「P705iμ」「PROSOLID μ」:折りたたみ“最薄”の座、それは1000分の1ミリ単位で追求した造形美にあり──「P705iμ」 (1/3)

触れた瞬間に“心地よい金属の質感”と“なぜこれほど薄くできるのか”という驚きが毎回感じられる、厚さ9.8ミリの折りたたみ最薄FOMA「P705iμ」と「PROSOLID μ」。なぜここまで薄くできたのか、その実現にどんな苦労があったのか。パナソニック モバイルのP705i、PROSOLID μ開発チームに話を聞いた。

[岩城俊介,ITmedia]
photo 厚さ9.8ミリの極薄FOMA「P705iμ」

 3G折りたたみ最薄の“極薄プレミアム”──。ステンレスパネルを採用した高級感と厚さ11.4ミリのスリムデザインで人気モデルとなった「P703iμ」(2007年4月発売)から約10カ月、パナソニック モバイルコミュニケーションズはさらなる“プレミアム携帯”を生み出した。

 ドコモの2008年春モデル「P705iμ」は、厚さ9.8ミリを実現する“超極薄”かつP703iμやP704iμから引き継ぐステンレスボディが特徴の3G携帯。11.4ミリの3G折りたたみ携帯“最薄”記録を、1年も経たずに1.6ミリも更新した。

 さらに、P703iμには搭載されなかったFeliCaやワンプッシュオープンボタン、より大型の3インチディスプレイを搭載し、下り最大3.6Mbpsで高速に通信できるHSDPAに対応。P703iμの登場当時に限界と思われた薄型化をさらに進めたばかりか、機能も大きく向上させたのが大きなポイントだ。

 1年も経たずに“さらに”薄くできた理由は。どんな苦労があったのか、そしてどのようなユーザーをターゲットに開発したのか。開発の裏側をパナソニック モバイルのP705iμ、PROSOLID μ開発チームに聞いた。


photo 「P705iμ」「PROSOLID μ」開発チーム。左からパナソニックデザイン社 デザイン担当の浅野陽氏、プロジェクトマネージャーの三浦毅氏、機構設計担当の太田康彦氏、電気設計担当の島田肇氏

「紙1枚分、いや1000分の1ミリの単位」で議論

photo 「P705iμ」 左からBLACK、SILVER、BROWN

 P705iμのターゲットユーザーは男性のビジネスパーソン。具体的には「毎日スーツを着る会社員」を想定して開発された。

 カバンに携帯入れて持ち運ぶことも多い女性ユーザーに対し、男性ユーザーは携帯をポケットに入れて持ち運ぶことが多く、ペンや財布、名刺ケースや入館証・IDカード、ハンカチなどと一緒に携帯を所持する。そこに、男性が比較的少ないアイデンティティを誇示するアイテムとなる、腕時計や万年筆、スーツのブランドといったものと同列に並べられる存在感に仕上げることを目指した。

 一方、カメラを省いた「PROSOLID μ」は、P705iμよりやや上の年代を想定ターゲットに据える。加えて、カメラ付き携帯の所持が禁止されるセキュリティレベルの高い職場に勤務するユーザーやそこに出入りする機会の多いユーザーも含まれる。ちなみに「P705i」との機能の違いも、ワンセグを備えない以外はほぼ変わらない。これら3機種は親は同じながら、それぞれ違う一面を持つ3兄妹といった感じとなるだろうか。

 P705iμの最も大きな特徴はその“超極薄”ボディ。P703iμから1年も経たずに1.6ミリもその記録を更新した。

 「P703iμと考え方や構造そのものは大きく変わっていません。ただ、“1000分の1ミリの単位”で、余計なものはないと思っていたP703iμの設計をさらに煮詰めました」(プロジェクトマネージャーの三浦氏)

 P703iμのボディ内に、強度確保のために入れていた1枚の薄い樹脂素材。これがなくても十分の強度を確保できることが分かった。また、キーバックライトの部材をELシートからLEDに変更することで“シート1枚分”薄くした──。これらの細かい工夫をいくつも積み重ねて、1.6ミリ絞ったというわけだ。

photo 「PROSOLID μ」ガンメタリック。パネルの中央にレーザー刻印のワンポイントがある

 ところで素人目で考えると、よくあるLEDの部品よりELシートの方がそもそも薄いだろうと思ってしまう。そこはコンマ数ミリの単位の設計になると違う。小型のLEDの部品をキーで押されない、ごく少ないスペースにうまく納めた結果、キーシートの上に重ねる“ELシートの1枚分”薄くできたのだという。

 「でも、FeliCaやワンプッシュオープンは新たに載せたい。液晶も大きくしたい。紙1枚分、コンマ数ミリの部品の設計議論をしている中で、新たな機能や機構も載せるにはどうすればいいのか、非常に大変でしたね」(設計担当の太田氏。以下、太田氏)

 「“ワンプッシュオープンを”という声は、実は開発以前からかなりありました。そのため、なんとしてもワンプッシュオープンを載せたいという気持ちがありました」(三浦氏)

 パナソニック モバイル製携帯が支持される特徴の1つに「ワンプッシュオープンボタン」がある。側面のボタンを押すだけでパッとディスプレイが開き、(設定により)着信応答も可能。スマートに便利に携帯を使えるようにする、長年、同社が苦労して開発してきた機構である。

 厚さ11.4ミリを実現したP703iμは、このワンプッシュオープンが搭載されなかった。デザインコンセプトの実現のためにかなりの議論を重ねた結果、採用を見送ったということだが、厚くなる、強度が不足するといった構造上の理由もあったことだろう。

 それをP705iμの開発チームは、新設計のワンプッシュオープン機構を開発することで実現した。

 「軸の直径は従来の機構比で85%に小さくしました。経が細くなると、強度はもちろん、受ける面積も小さくなるのでそれを確保することが必要になります。さらにそれらを構成する部品も小さくなります。その部品は今までの設備だと作れませんでした」(太田氏)

 「小さい部品を高精度に作るのが特に難しかったですね。ヒンジは力が集まるところなので部品にはかなりの精度や強度が求められます。新規で設計して、部品製造用の金型を新たに作って……というところから始めるわけです」(浅野氏)

photophoto 新たに開発した小型のワンプッシュオープン機構。軸の直径を85%細くするとともに、周辺の構成部品も小型・薄型・高精密化を図った
photo  

 この作業行程はさながら「機械式の腕時計を設計し、組み立てる作業のよう」という。携帯のヒンジ部分にそんな精密なものが入っているとは予想もつきにくい。

 「今だから言えますが、実はP703iμの頃からヒンジ開発はスタートしていました。ヒンジに必要な特性は“粘りがあって堅い”です。ええ、相反します(笑)。どんな合金をどのくらいの割合で配合して、どう組み合わせるか。試行錯誤の連続でしたね」(太田氏)

 ワンプッシュオープン機構は、携帯の新機種企画・開発スパンでの開発は困難。P705iμ(やP705iシリーズ)のワンプッシュオープンはそれだけこだわって作られていた。


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