ニュース
» 2008年05月13日 23時59分 UPDATE

ワイヤレス・テクノロジー・パーク2008:ドコモのHSDPA網は14Mbpsに対応済み──スーパー3G、4Gの研究開発も順調 (1/2)

NTTドコモの無線アクセス開発部部長、尾上誠蔵氏がワイヤレス・テクノロジー・パーク2008で講演し、ドコモのFOMAネットワークの現状とスーパー3G、4Gへの取り組みを紹介した。

[園部修,ITmedia]
Photo NTTドコモ 無線アクセス開発部 部長の尾上誠蔵氏

 NTTドコモ 無線アクセス開発部 部長の尾上誠蔵氏が5月13日、ワイヤレス・テクノロジー・パーク2008で講演し、ドコモのFOMAネットワークの状況と、現在実証実験などを行っているスーパー3Gや4Gへの取り組みを披露した。

 尾上氏は「移動体通信でのデータ転送速度は、固定(有線)サービスのデータ転送速度よりも5年遅れ、あるいは1ケタ下くらいで追随しており、今後も移動通信システムの発展は必須」との考えを表明。「よく、『そんなに通信速度を速くしてどんなデータを流すのか』と質問されることがあるが、これまでもパイプが太くなることで流れるデータ量が指数的に増えてきた」と指摘し、通信速度を向上させることでユーザーに魅力的なサービスを提供し続けられると話した。

2006年以降、基地局は当初からHSDPA対応

 現在ドコモが提供している通信サービスは、下りの通信速度が最大7.2Mbps(上限は端末によって異なり、3.6Mbps対応端末では最大3.6Mbps、HSDPA非対応端末では384kbps)の「FOMAハイスピード」と呼ばれるサービスだ。HSDPAという技術を利用し、従来端末比で最大約10倍の高速な通信が可能なFOMAハイスピードは、2006年8月31日から始まった。

 当初は対応エリアが東京23区内のみという状況だったが、2008年3月までに、FOMAハイスピードエリアは人口カバー率90%を達成する予定で、対応エリアは急速に拡大している。対応端末も「N902iX HIGH-SPEED」1機種で始まったが、現在は最大7.2Mbpsの通信に対応するモデルが4機種、3.6Mbpsに対応するモデルが905iシリーズ全機種を含む25機種ラインアップされている。

 このFOMAハイスピードサービスを支える基地局設備は、2006年から導入を開始したモデルでは最初からHSDPAに対応しており、スペック上は下り最大14Mbpsまでサポートしているという。2002年から導入した1世代前の設備も、一部のハードウェアを交換するだけでHSDPAに対応可能な仕様になっていたため、すばやい立ち上げが可能だった。現在の基地局のハードウェアは「最初から3GPPで規定されている14Mbpsに対応している」(尾上氏)とのことで、端末の進化に合わせて、通信速度を順次上げていく計画だ。

PhotoPhoto HSDPAは、パラメーターに応じて最大データ転送速度が決まっている。現在ドコモが使用しているのはカテゴリー8で、下りの最大データ転送速度は7.2Mbps。ドコモのFOMA基地局は、すべてHSDPAの最高スペックとなる、カテゴリー10の14Mbpsに対応しているという

4Gへ続くステップとしてのスーパー3G

Photo スーパー3Gは、4Gへのスムーズな移行を実現するために考案された。4Gの時代でも、3Gの技術が他の技術に対して競争力を持ち続けるという狙いがある

 HSDPAは、一般に3Gの進化系と言うことで3.5Gなどと呼ばれている。これをさらに高速化させ、周波数利用効率を向上させる技術が、ドコモが「スーパー3G」と呼ぶ技術だ。スーパー3Gは、HSDPAの3.5Gに対して、3.9Gとも呼ばれており、3GPPではLTE(Long Term Evolution)という名称で標準化が進められている。

 スーパー3Gは、簡単に言うとW-CDMAの最終進化系の技術であり、“4Gの一歩手前”の技術である。このためW-CDMAを導入している世界各地の事業者は、今後のロードマップとしてLTEへの移行を掲げているところが多い。

 ドコモが世界で初めてスーパー3Gのコンセプトを発表したのは、2004年春のことだ。この年7月に開催されたワイヤレスジャパン2004では、IP無線ネットワーク開発部長(当時)だった尾上氏が、講演でスーパー3Gについて一般の来場者向けに説明した。

 ドコモが最初にスーパー3Gを発表したとき、最も重要と考えていたのが「4Gへのスムーズな移行」だ。ドコモは2G(PDC)から3G(FOMA)へ移行する際に、互換性のないまったく新しいネットワークを、従来のネットワークとは別に1から構築する必要があったため、立ち上げに時間がかかり、FOMA自体の評価もなかなか高くならないという苦しみを味わった。その経験から、4Gは3Gとまったく違うネットワークを広げるのではなく、3Gの延長線上に、スムーズに導入していく必要性を痛感していたのだ。

 「4年前は、4Gが本当に市場に出て行くのだろうか、と考えていた時期。4Gを導入する方法はいくつかのシナリオが考えられたが、スムーズに導入するためのシナリオの1つとして打ち上げたのがスーパー3Gだ。今の3Gを発展させ、その上に4Gを構築するのがいいと考えた」(尾上氏)

 当時世界は“4G”というものに対してまったく認識がなかったというが、最近では、3Gが4Gへのスムーズな導入性を持つことの重要性が認識されつつあるという。また“3Gの技術が永きにわたって発展し続ける”というロードマップの必要性も高まっており、スーパー3Gの位置づけは以前よりも重みを増していると尾上氏は話した。

 スーパー3G(LTE)の主要仕様(コアスペック)は、2007年12月に承認されており、現在は仕様安定化とテスト仕様作成のための標準化活動が行われている。3GPPで合意されているスーパー3Gの要求条件は、以下の4つ。

  • ピークデータ転送速度が下り100Mbps以上、上り50Mbps以上
  • 制御遅延が100ミリ秒以下、伝送遅延も片道で5ミリ秒以下
  • ユーザースループットがHSPA比で下り平均3〜4倍、上り平均2〜3倍
  • 周波数利用効率がHSPA比で下り3〜4倍、上り2〜3倍

 ドコモでも2007年7月から実証実験を開始しており、2008年2月からは屋外で実際に電波を飛ばす実験も行っている。性能の評価をするため、現在は最高のスペックでテストをしているという。詳細はリポート記事を参照してほしいが、20MHzの帯域で4×4のMIMOを使い、下りで最大300Mbps、上りで最大50Mbpsの通信が可能なシステムを用いてさまざまな検証を行っている。

 スーパー3Gの具体的な導入時期について尾上氏は「ビジネス的な判断になるので、今は“決まっていない”としか言えない」としたが、2009年末までには開発を完了させ、商用展開が可能な状態にするのが現在の目標だ。その後は海外のオペレーターの動向にも注目し、十分な相互接続性試験なども実施して、歩調を合わせて導入を進める。

PhotoPhotoPhoto スーパー3Gの主要使用は2007年12月に3GPPで承認された。2008年12月までにテスト仕様が標準化される。3GPPで合意されているスーパー3Gの要求条件は4点あり、これらの条件を満たすものである必要がある。ちなみにドコモは2009年末までにスーパー3Gの技術開発を完了する計画だ

 なお商用サービスは、3GPPの仕様に準拠したシステムで提供する計画で、尾上氏は「別スペックでやることは絶対にない」と強調した。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.