HSDPAと4Gの間を埋める「スーパー3G」〜ドコモWIRELESS JAPAN 2004

» 2004年07月23日 18時25分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 100Mbpsを実現するといわれる、未来の通信技術「4G」。ここに到達するまでに、ドコモはHSDPAと、「スーパー3G」というステップを踏む。

 7月23日のワイヤレス ジャパン 2004講演では、ドコモIP無線ネットワーク開発部長、尾上誠蔵氏が登場。3Gから4Gへとネットワークを進化させるプロセスを説明した。

「3.5G」から「3.9G=スーパー3G」へ

 900iのヒットもあって、3Gへの移行を確かなものにしたドコモ(7月23日の記事参照)。次に目指すのは、2005年にHSDPAを導入することだ(3月3日の記事参照)。最大14Mbps、平均でも「2〜4Mbps」(尾上氏)という通信速度を実現するという。

 ドコモはこの技術を、W-CDMAの進化系として“3.5G”と位置付けている。「正直申し上げて、どういうサービスになるかはこれから(検討する)」(同氏)というものの、2月から6月にかけて着々と屋外での試験を重ねている。

 では、その後はどうなるか。これまでに取りざたされているのは、最大100Mbpsの通信速度を実現するという「4G」だ(2002年3月18日の記事参照)。ドコモはHSDPAと並行して、4Gの研究にも取り組んでいる。2003年5月からフィールド実験を行っており、100Mbpsの下り速度と20Mbpsの上り速度を達成している。

 しかし尾上氏は、4Gの前段階として“3.9G”に相当するテクノロジーを導入するという。「3Gシステムが究極の進化」を遂げたものであり、ドコモではこれを「スーパー3G」と呼ぶ。

Photo 3Gから4Gに移行するには、いくつかのシナリオが考えられる。ドコモでは、まず3Gの進化を起こし、「スーパー3G」を構築した上で4Gに移行するという手順を選択した

 スーパー3Gを介在することで、4Gへの移行はスムーズになると尾上氏。「4Gの部分的な能力を3Gスペクトルで実現しており、4Gをプラグインできるようになっている」。

 詳細は不透明な部分も多いが、会場で明らかにされた内容は以下のとおり。

Photo

 3.9Gではまず、30Mbps程度の通信速度を実現する。HSDPAの最大14Mbpsと、4Gの100Mbpsのちょうど中間程度の位置付けだ。

 HSDPAと異なるところでは、エアーインタフェースがIP化される。現在、ドコモはATMベースのコアネットワークをフルIP化すべく作業を進めているが(7月21日の記事参照)、この先に3.9Gと4Gが見えてくるかたちだ。

 変調方式も、現在のDS-CDMA(直接拡散型CDMA)とは異なり、OFCDMA方式を採用する。OFCDMAとは、Orthogonal Frequency(直交周波数)とCDMAを組み合わせたものだ(2003年5月28日の記事参照)。周波数をサブキャリアに分けてデータ伝送するため、CDMAに比べてマルチパス(用語参照)に強くなる。ちなみに、4Gではさらにこれが下り/VSF-OFCDM方式、上りVSF-CDMA方式へと変更される。

 利用する帯域幅は、3G/3.5Gと同じで5MHz程度。これは前述のとおり、3.5Gまでと同様2GHz帯(および今後追加されてくるであろう帯域)を利用するためだ。

 なお、4Gでは別に割り当てられるであろう帯域で、100MHzという広大な帯域幅を利用することになっている(2002年3月18日の記事参照)。

Photo

 ドコモでは、2010年をめどに4Gの実用化を考えている。2005年にHSDPAを導入したあと、2010年までのすきまをスーパー3Gが埋めることになる(上写真参照)。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月26日 更新
  1. 楽天モバイルのスマホが乗っ取られる事案 同社が回線停止や楽天ID/パスワード変更などを呼びかけ (2024年04月23日)
  2. シャープ、5月8日にスマートフォンAQUOSの新製品を発表 (2024年04月24日)
  3. 貼り付ければOK、配線不要の小型ドライブレコーダー発売 スマート感知センサーで自動録画 (2024年04月25日)
  4. スマホを携帯キャリアで買うのは損? 本体のみをお得に買う方法を解説 (2024年04月24日)
  5. Vポイントの疑問に回答 Tポイントが使えなくなる? ID連携をしないとどうなる? (2024年04月23日)
  6. 通信品質で楽天モバイルの評価が急上昇 Opensignalのネットワーク体感調査で最多タイの1位 (2024年04月25日)
  7. 中古スマホが突然使えなくなる事象を解消できる? 総務省が「ネットワーク利用制限」を原則禁止する方向で調整 (2024年04月25日)
  8. ドコモ、「Xperia 10 V」を5万8850円に値下げ 「iPhone 15(128GB)」の4.4万円割引が復活 (2024年04月25日)
  9. 「iPhone 15」シリーズの価格まとめ【2024年4月最新版】 ソフトバンクのiPhone 15(128GB)が“実質12円”、一括は楽天モバイルが最安 (2024年04月05日)
  10. スマートグラス「Rokid Max 2」発表 補正レンズなくても視度調節可能 タッチ操作のリモコン「Rokid Station 2」も (2024年04月25日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年