日本ローカルのモバイル検索を、もっと使いやすく――グーグルの課題と挑戦

» 2008年06月09日 20時03分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 Googleが日本語のWeb検索サービスを開始してから8年――。今やグーグル検索は、Web上の情報を探すのになくてはならない存在となった。また、当初はWeb検索を軸としたサービスを展開してきたが、今ではニュースや画像、動画、書籍などの細分化した検索に対応するとともに、地図やメール、動画共有サイトなど、多彩なサービスを提供している。

 中でもグーグルが注力しているのがモバイル検索だ。他の国では“PC検索のおまけ”的な存在のモバイル検索だが、モバイルインターネット大国の日本では、モバイルインターネットユーザーが7000万人に達するなど、携帯電話が検索手段の1つとして生活に根付いている。

 グーグルは、先進的なモバイルユーザーを抱える日本市場向けにどんな取り組みを行っているのか。6月9日、都内で開催された記者説明会で、同社のモバイル担当プロダクトマネージャー、岸本豪氏が説明した。

Photo 日本のインターネット事情(左)とデバイス別のインターネット利用者数。他の国ではPCのおまけ的な存在のモバイル検索が、日本では互いを補完する役割を担っている

モバイルとPCの検索は“互いを補完する関係”

 「グーグルにおけるモバイル検索シェアは、日本がダントツでナンバーワン」――。グーグルでモバイル向けサービスの開発に携わる岸本氏は、日本のモバイル検索の現状を、このようなデータの引用で説明する。その理由は、デバイスの主流となっているのが3G端末であること、モバイルの歴史が長く、コンテンツが充実していること、ユーザーの中でモバイルがインターネットの一部として根付いていることの3点だ。

 いかに生活に根付いているかは、検索のトラフィックを見れば明らかだと岸本氏。モバイルからの検索利用は、通勤時間帯と昼休み、終業時間に増加し、テレビを見ている時間帯や就寝時にピークを迎える。一方、PCの検索トラフィックは、会社の始業時間から増えて昼休みにさしかかると減り、ピークを迎えるのは終業時間前と思われる17時、18時ごろ。「PCとケータイの検索は、相反しながら補完し合う関係にある」というのが、岸本氏の見方だ。クエリーについても、「PCではビジネス関連やサイエンス関係が強いが、ケータイはエンタテインメント系の割合が高い」など、違いが見られるという。

Photo モバイル検索とPC検索のトラフィックパターン。PCとモバイルは相互に補完し合う関係になっている


日本固有の“ながら検索”を生かす――「Google 急上昇キーワード」

 テレビを見ながら、気になることをその場で検索――。この、日本固有の“ながら検索”からインスピレーションを受けて開発されたというのが「Google 急上昇キーワード」だ。

 Google 急上昇キーワードは、クエリーに対して“話題度合いのパラメータが、あるしきい値をこえた”場合にランキングとして表示される仕組みで、モバイル向けのガジェットとiGoogleのガジェットとして提供中。開発を担当した検索担当プロダクトマネージャーの倉岡寛氏は、「検索窓の下に、“検索しようとしている”キーワードが出るという、(情報との)面白い出会いがあるかもしれない。また、(トレンドを反映しているので)世の中の人がどんなことに興味を持っているかが分かる。これはユーザーの“気づき”を喚起するもので、検索に新たな選択肢を提供する」と、このサービスの意義を説明した。

Photo 急激に伸びたキーワードを検索窓の下にランキング表示する「Google 急上昇キーワード」(左)。よりリアルタイム性のあるクエリーを出すために、情報は20分ごとに更新される。右はある1日のクエリーの推移。「アクセスが突出している午後8時に何があったかというと、花粉症に関する情報をテレビで放映していた。こうしたスパイクが出たときに、それをリアルタイムで提供できれば――と思って開発したサービス」(倉岡氏)

 海外のモバイル向けの取り組み「GOOG-411」を紹介したのは、米GoogleのSearch Products & User Experience部門で副社長を務めるマリッサ・メイヤー氏。これは、音声認識を使った“声で検索”するサービスで、ケータイのマイクに向かって検索したい言葉を発話すると、その検索結果がケータイに送られるというものだ。

 Googleでは音声認識技術を重要視しており、検索クエリーの入力だけでなく動画検索にも生かしたい考えだ。「例えば音声認識で動画の音声部分を取り出せば、それを動画検索に利用することもできる」(倉岡氏)

Photo “声で検索”を実現する「GOOG-411」

「検索で見つからないものをなくす」ための“3つの課題”

 モバイルを使った検索利用が増えれば、当然、その検索精度や使い勝手の良さも問われることになる。岸本氏は今後のモバイル向けグーグル検索の課題を3つ挙げた。

 1つは検索精度の向上だ。日本語はひらがなやカタカナ、漢字、ローマ字が使われる言語であることから表記の揺れなども多く、“日本語で最適な検索を実現すること自体”が大きなチャレンジ”だという。また、モバイルインターネットの世界では、キャリアからのIPアドレスしか受け付けないことがあり、「モバイルページにアクセスしても『見つかりません』『モバイル向けはこちら』というページが出てしまうこともしばしば」で、クロール自体ができないこともあるという。「グーグルとしても“見えないものは探せない”ので、ここも挑戦の1つ」(岸本氏)。さらに、モバイルサイトはPCサイトに比べて1ページあたりの情報が少ないことから、グーグルのランキングアルゴリズムの参考になる十分な情報が得られず、ランキングが正しく行われないという点も課題として挙げられた。

 ほかにも、日本のキャリアが採用しているWebブラウザがワールドワイドで使われている一般的なテクノロジーをサポートしていなかったり、端末のリリース時期によってWebブラウザの仕様が異なるという状況があり、どの端末でも正しく表示されるようにすることが他の国に比べて難しいという。

 こうした課題を抱えながらもモバイル検索については、「見つからないものをなくす」アプローチで開発を続ける考えだ。「モバイルの世界に閉じられている情報もできるだけクロールできるようにし、モバイルインターネットとデスクトップインターネットを横断した検索を目指す」(岸本氏)

 また、Webブラウザや端末の進化に合わせて、それに応じた最高のユーザー体験を提供するとともに、位置情報やケータイ特有の情報を使って、ベストな検索結果を伝えるよう機能を強化するとしている。

Photo グーグルが提供する各種モバイル向けサービス(左)と今後の課題や取り組み


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