欧米と比べると日本はどうも──。近距離無線通信規格の1つ Bluetoothは、欧米と比べると日本では一般的に使われるほどユーザーにはまだ普及していない。
もちろんすでに活用するユーザーも多い。おそらくそのユーザーはBluetoothの利便性を理解し、手放せなくなっている。そしてこのようなことを口にする。「ソフトバンクモバイルの端末であれば選択肢もかなり多いが、ドコモやauだとおのずと選べる機種が限られてしまうのが難点だ──」
この状況は、2008年になってようやく改善される兆しを見せている。
2008年発売モデルでは、そもそも採用例が多かったソフトバンクモバイル以外のキャリアの端末にも“Bluetooth対応ケータイ”が増えたためだ。ドコモはパナソニック モバイルコミュニケーションズや海外メーカーのNokia、モトローラ、BlackBerryスマートフォン端末以外にシャープ製の「SH906i」「SH906iTV」や「HT1100」などのWindows Mobile搭載スマートフォンに採用。au端末は従来の東芝製端末に加えて新プラットフォーム“KCP+”採用端末、ウィルコムもWX310K以外に「WILLCOM 03」や「WILLCOM D4」、イー・モバイルは音声サービス対応機種すべて。特にauはテレビCMなどでも盛んにBluetoothによるワイヤレス音楽再生機能をアピールし、ソフトバンクモバイル向けの「iPhone 3G」もBluetoothに対応するなど、普及のトリガーとなるよい材料がそろってきた。
これを機に、日本でもいよいよBluetoothが広く普及してくるのか。国内市場向けにBluetoothヘッドセットなど、対応製品を精力的に投入する日本プラントロニクス代表取締役社長の村田浩志氏に、国内におけるBluetooth製品市場の現状と展望、そして同社のBluetooth製品に関する狙いを聞いた。
── Bluetooth製品の国内市場における現状を教えてください。
村田浩志氏(以下、村田氏) 3年半前くらいまで日本にはBluetooth製品がありませんでした。プラントロニクスはこの日本市場で初めてのBluetooth製品「M3000」(2004年発売)を投入しました。正直に言いますと、残念ながらあまり売れませんでした。この頃は有線で接続するイヤフォンマイク製品が主流で、携帯電話も含めて、M3000と接続するBluetooth対応機器も少なく、ヘッドセットという言葉もまだ一般的ではなかったと思います。
(Bluetoothヘッドセットで多く使われる)ハンズフリー通話というと、クルマにおける利用とともに2004年11月に施行された改正道路交通法を思い出されると思います。この前後3カ月は“イヤフォンマイク”製品が非常に売れました。携帯+ハンズフリー通話が認知されるトリガーになったと思います。
ただ、Bluetoothはこのブームに乗れませんでした。弊社は製品そのものは出していましたが、Bluetoothがまだほとんど認知されておらず、Bluetooth対応携帯もほとんどなかったためです。
それがようやく、少しずつではありますが、日本にもしっかりとした市場ができつつあると感じています。ライバル社のJabraさんやモトローラさん、最近はソニー・エリクソンさんも国内市場に参入され、競争しあえるようになったこと。そして、Bluetoothを搭載する端末や製品が増えてきたのは非常に強い追い風です。
── なぜ、日本ではなかなか普及しなかったのでしょう。
村田氏 Bluetooth搭載端末のラインアップとともに、欧米と日本のライフスタイルの違いもあると思います。
例えば私の米国の知人は、朝起きて1時間ほどクルマで通勤しますが、この1時間は黙っていない(笑)。家族や友人のほか、運転しながら仕事の話もします。もちろん行きだけでなく帰りもです。クルマという空間で会話するのが当たり前になっているようです。
このハンズフリー通話を一度体験すると、普段もヘッドセットが手放せなくなるといいます。海外の街中でヘッドセットを利用するユーザーが日本より多いのは、必然的な状況から利用し、それが“当たり前になる機会”が多いからではないでしょうか。じつは日本でも、クルマで通勤するユーザーが多い地方都市からの問い合わせが最近、かなり増えています。
また、通勤電車など列車内での通話は基本的にNGとされていますので仕方ないですが、それ以外の用途でケータイをかばんやポケットに入れたまま会話するのは、果たして不便でしょうか。長電話になりそうなときや仕事中など、両手があくのはやはりなにかと便利です。
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