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» 2008年07月10日 00時01分 UPDATE

「iPhone 3G」がもたらす“ケータイの未来” (1/3)

「iPhone 3G」の国内発売が、いよいよ明日7月11日に迫った。すでに予約で買えることが確定した人がいる一方で、まだ購入の決断が下せない人、並びに行こうかどうか逡巡している人もいるに違いない。そんなiPhone 3Gが気になる多くの読者のために、“一足先に”iPhone 3Gを体験した神尾寿氏が、そのインプレッションを詳細に報告してくれた。

[神尾寿,ITmedia]
Photo 「iPhone 3G」

 6月9日の発表から、ちょうど1カ月。IT業界のみならず、世界中がAppleの「iPhone 3G」の話題で持ちきりだった。ここ日本でも、ソフトバンクモバイルによる料金プランや販売方式の発表、発売日当日の情報がリリースされるたびに大きな注目を集めている。iPhone 3Gを心待ちにする人もそうでない人も、その動向から目が離せない1カ月だったのは間違いないだろう。

 そのiPhone 3Gが、いよいよ明日、発売される。

 筆者はこのiPhone 3Gを、発売に先立つ6月下旬に入手。それから2週間ほど、iPhone 3Gを日常的に使い、日本でロードテストをする機会を得た。

 iPhone 3Gは今までのケータイとどう違うのか。その本質的な魅力とは何か。そして、「iPhone 3Gのある生活」とはどのようなものか──。

 iPhone 3G発売直前の特別リポートをお届けする。

見た目よりすばらしい質感、考え抜かれたデザイン

 Appleがプロデュースする「ユーザー体験」は、箱を開ける瞬間から始まる。これはiPhone 3Gでも例外ではない。

 iPhone 3Gの箱は、とてもシンプルかつコンパクトなもので、余計なものは一切ない。箱を開けると、本体だけが現れる。ケーブルやイヤフォン類など、見た目に煩雑なものは箱の下段に隠されており、見るだけでうんざりする分厚いマニュアル類もそこには存在しない。まるで高級な時計かアクセサリーのように、箱から取り出すだけでうれしくなる演出が施されている。

PhotoPhoto iPhone 3Gの箱はとてもコンパクト(写真=左)。箱を開けると本体が浮かび上がるように登場する。無粋なケーブルや分厚いマニュアルが、初対面の時に視界に入らない演出はさすが。本体付属のイヤフォンマイク(写真=右)。iPodと同じ白いイヤフォンだが、右側にスイッチとマイクの一体型ユニットがついている。このスイッチで着信や切断、iPodの再生・停止などができる

 手に取ってみると、写真で想像するよりも重厚な質感に驚くことになるだろう。iPhone 3Gは電波感度向上などの理由もあり、背面パネルが金属製から樹脂製に変更された。先代iPhoneも持つ筆者は、「高級感は少し薄れるかな」と考えていたのだが、その予想はよい意味で裏切られた。背面パネル部分は樹脂製とは思えないほど質感が高く、プラスチックにありがちな安っぽさはみじんもない。塗装とコーティングが厚く、丁寧に作られており、まるで漆器のような光沢と質感である。

 手のひらでの“収まり”はどうだろうか。実際に持ってみると、先代よりもラウンド感が増したフォルムによって、すっぽりと手の中にフィットするような感覚だ。詳しくは後述するが、このボディの「丸み」によって幅62.1ミリのワイドボディながら、片手持ちが違和感なくできるようになっている。カタログスペックと写真だけ見て、“iPhone 3Gは両手でないと使えない”と判断するのは早計である。

 また、iPhone 3Gのすっきりとしたデザインで、よいアクセントになっているのが金属メッシュの配置だ。これはスピーカー部分と、本体底部のモノラルスピーカーに配されており、高級感の演出に一役買っている。

PhotoPhoto 左が本体天面、右が本体底面。底面のスピーカー部分には、金属のメッシュが張られており、高級感を演出している
PhotoPhoto 左が左側面、右が右側面。ボタン類は左側面にあるマナーモードスイッチと上下キーのみ

 シルエットだけ見れば、iPhone 3Gと先代iPhoneに大きな違いはない。しかし、実機を手にしてみると、変更点は随所にある。特に今回は高級感や上質感のレベルはそのままに、先代よりも「持ちやすく」「使いやすく」するための工夫が多いと感じた。AppleはiPhone 3Gを一部の好事家のみならず、より多くの一般ユーザーに訴求しようととしている。その意図が、iPhone 3Gのデザインから読み取れた。

iPhone 3Gは新しい世界観──ゼロから作られたUI

 iPhone 3Gの特長というと、やはりタッチパネルを用いたUIを真っ先にあげる人が多いだろう。物理的なボタンは4つだけ。あとの操作はタッチパネルで、というのは確かに斬新さがある。

 しかし、iPhone 3Gを実際に使ってみると、「タッチパネルの目新しさだけ」がその魅力の本質でないことが分かる。iPhone 3Gは“タッチパネルありき”で作られたのではなく、“21世紀の理想的なケータイ”をゼロからデザインしたら、結果としてタッチパネルを活用するスタイルになった――というのが真実だろう。iPhoneは電話機の拡張やPCのダウンサイジングではなく、ケータイにおけるまったく新しい操作体系を再定義した。根底にある設計思想や哲学が新しいのである。

Photo 「電話」のキーパッド。1つ1つのボタンサイズが大きく、実際に使うと物理キーを持つ一般的な携帯電話よりもダイヤルしやすい
PhotoPhoto 通話中にも各種操作が可能。イヤフォンマイクやヘッドセット、スピーカーホンを使えば、電話をしながらのカレンダー確認やマップの利用、Webブラウザを使ったインターネットアクセスも利用できる

 しかも、その取り組みは頭でっかちではない。むしろその逆で、iPhone 3GのUIは直感的に「楽しい・使いやすい」と感じるツボを心地よくついてくる。それが顕著なのが、あらゆる操作で感じるスムーズさ。日本の携帯電話でもサクサク感は重視されているが、iPhone 3Gのそれは全体的に反応速度がよいだけでなく、連続性のある動きでとてもスムーズに感じるのだ。さらに、どうしてもユーザーの待ち時間が発生してしまう場面では、無機質なメッセージで待たせるのではなく、待ち時間も楽しめるような表現・演出を行う。例えば、「マップ」での位置測位を行う際に、無線LANや基地局の電波の取得に時間がかかるような場合は、おおよその位置を円で表示しながら段階的に地図の拡大と位置の絞り込みをしていく。こういう演出があると、待たされてもイラつかず、むしろ楽しく感じてしまう。

PhotoPhotoPhoto iPhone 3Gの「マップ」。新たにGPSや無線LAN、携帯電話基地局電波を使った位置測位機能を実装し、実用性が増した。表現力や演出も優れており、何気なく使っても楽しいものになっている

 iPhone 3GのUIは、日本の携帯電話をはじめ過去の“どのようなUI”とも似ていないが、それはある意味で当然だ。iPhoneが目指しているのは、既存のUIの改築や増築ではなく、まったく新しいUIの礎を築くことなのだ。

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