一方、MediaFLOと並んで、今回の実証実験を支えるテクノロジーとなるのが、フェリカポケットマーケティングが提供する「FeliCaポケット」だ。同サービスは多様なポイントやクーポン、会員情報を1枚のカードやおサイフケータイにまとめるアプリケーションシステムで、過去には宮崎県の観光振興プログラムである「CHORUCAプロジェクト」や、ハワイの観光トロリーバス向けICカードシステム「TROPA」(トロッパ)などで導入された実績がある。そのほかにも病院のIC診察券システムに使われるなど、他機能かつ応用性の高さと、パッケージ化による導入のしやすさから、最近とくに導入事例が増えているものだ。
島根ユビキタスプロジェクトでは、このFeliCaポケットの仕組みを使い独自の地域カード「あいポケット」「あいポケット WAON」を発行。メディアスコープと地域の商店街が連携し、店頭のサイネージ端末からの電子クーポン受け取りシステムや、地域ポイントプログラムの構築などを行う計画だ。2008年度内に3万枚、2011年度以降には10万枚の普及を目指し、2010年度以降に経済振興や観光振興につながるサービスモデルおよびビジネスモデルの構築を目指す。
あいポケットカードは個人情報を登録する「記名式カード」が基本であり、プライバシーに配慮された形で、ユーザーのカード利用動向がマーケティングデータとして活用される。これにより商店街の利用者や観光客が、「どこからどこに移動したのか、どこに長い時間滞在したのかなど、『人の動き』が分かる。これが商店街の活性化や観光振興にとって貴重なデータになる」(メディアスコープ)のだ。
このように島根ユビキタスプロジェクトでは、MediaFLOとFeliCaという、次世代のモバイルビジネスにとって注目のテクノロジーを使いながら、さまざまなサービスやアプリケーションの可能性を検証していく。またICTの技術やサービスが、“地方のビジネスモデル”にどれだけ貢献できるかを見る上でも貴重なケーススタディになる。今後の動向を、期待を持って見守りたい。
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