Nokiaの開発プロジェクトからかいま見る“ケータイの未来”The Way We Live Next 2008

» 2008年09月29日 07時10分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 Nokiaが9月24日までフィンランド・ヘルシンキ本社で開催した「The Way We Live Next 2008」では、同社のさまざまな開発プロジェクトが紹介された。これらの研究からは、今後のNokiaケータイの進化の方向性がかいま見える。

 携帯電話が現実世界と仮想世界の体験をさらにリッチなものにし、その体験の共有をサポートする――。携帯電話が実現するこんな世界を、Nokiaは“ミックスリアリティ”と呼んでいる。

 3Gや無線LANなどの高速通信インフラが普及し、どこにいてもインターネットに接続できる環境が整いつつある中、ユーザーと一緒に移動する携帯電話は、リアルな世界と仮想世界をつなぐ存在となる。Nokiaはこうした特性を生かすことで、携帯電話がアナログの上にデジタルレイヤーを重ねる役割を果たせると考えている。

ケータイカメラで情報を入手、目の動きで操作

 Nokiaが数カ月後に開始する「Point&Find」は、ケータイカメラで画像を“ポイント”し、関連情報をWebから探すというものだ。例えば映画のポスターをポイントすると、予告編のビデオや上映に関する情報を入手できる。

 すでに、GPS、ナビゲーション、ジオタグなど地図に関連したものやモブログなど、仮想世界への橋渡し役を担う技術が登場しているが、Point&Findはさらに直感的なサービスを実現できそうだ。

 “直感的なナビゲーション”も、Nokiaの開発テーマの1つだ。「Gaze Tracking」は、ユーザーがサングラスのようなディスプレイを装着し、目の動きで操作するもの。この研究では、キー入力操作なしにナビゲーションが可能かどうかを探っていく。

 ほかにも、新たな写真共有の形を提案する「Image Space」が披露された。自分や仲間が撮影した写真をメタデータをつけてアップロードして、デジタルコンテンツワールドを作るというもので、地図など他のサービスとマッシュアップも可能だ。

Photo 目の動きで操作する「Gaze Tracking」(左)と新たな写真共有の形を提案する「Image Space」(右)

 無線分野は、屋内向け位置情報サービスに関する研究が進んでいる。位置情報の取得といえばGPSを利用するのが一般的だが、GPSは衛星電波の届きにくい屋内利用には向いていない。

 人は一般的に80%の時間を屋内で過ごすといわれており、携帯電話の場合、音声通話の利用の70%、データ通信の80%が屋内で発生しているという。こうした点からも、屋内向けの位置情報サービスは潜在需要があるとNokiaは見る。

 利用シーンとして想定するのは、大型ショッピングモールや屋内の駐車場、駅など。ナビゲーションサービスのほかにも、商品やサービス、友人や家族を探したり、プロモーション活動やSNSと連携したりといった用途も考えられる。法人向けにも、同僚を探す、プリンタを探す、ミーティングルームを探して予約する――といったニーズに対応できるだろう。

 屋内の位置情報サービスについてNokiaは、無線LAN利用の可能性を研究している。無線LANはアンテナもアクセスポイントも普及しているからだ。端末側でも、携帯電話のWi-Fi搭載は進んでおり、ハードウェアを追加する必要がない。また、アクセスポイントから階や部屋などが特定できるため、精度の面でも問題ない(写真「indoor」)。

Photo 無線LANを利用した屋内向け位置情報サービス

 しかし、屋内向け位置情報サービスの実現は、まだ先になりそうだ。Nokiaは課題として、屋内の地図情報の収集や、精度のさらなる改善などを挙げている。

 Nokiaはまた、自社の社屋を使って「ILPO」(Indoor Location Positioning Solution)という屋内向け位置情報技術の実験を行っているという。自分の位置の確認や位置情報の共有、サービスの検索などの機能を備え、屋内位置情報を利用するサービスのAPIも公開されている。

 このシステムを世界中の40の社屋に実装しているほか、ヘルシンキのショッピングセンターと年内にも実験を開始する計画だ。今後、Nokiaの最新技術ラボ「Nokia Beta Labs」でのリリースも計画しているという。

Photo ショッピングモールの地図上に誰がどこにいるのかを表示
携帯業界のトレンドを知りたいと思ったら→+D Mobile「業界動向」へ
  • 各キャリアの発表会リポート
  • 国内外の携帯市場動向
  • 通信業界のキーパーソンインタビュー
  • 携帯事業者別シェア/携帯出荷台数
  • 携帯関連の調査リポート記事

携帯業界のトレンドや今後を把握するのに必要な記事だけを集めたのが“+D Mobile 業界動向”。記事はトピックや連載ごとにアーカイブされ、必要なときにまとめてチェックできます。
今すぐアクセス!


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月26日 更新
  1. 楽天モバイルのスマホが乗っ取られる事案 同社が回線停止や楽天ID/パスワード変更などを呼びかけ (2024年04月23日)
  2. シャープ、5月8日にスマートフォンAQUOSの新製品を発表 (2024年04月24日)
  3. スマホを携帯キャリアで買うのは損? 本体のみをお得に買う方法を解説 (2024年04月24日)
  4. Vポイントの疑問に回答 Tポイントが使えなくなる? ID連携をしないとどうなる? (2024年04月23日)
  5. 貼り付ければOK、配線不要の小型ドライブレコーダー発売 スマート感知センサーで自動録画 (2024年04月25日)
  6. 通信品質で楽天モバイルの評価が急上昇 Opensignalのネットワーク体感調査で最多タイの1位 (2024年04月25日)
  7. 中古スマホが突然使えなくなる事象を解消できる? 総務省が「ネットワーク利用制限」を原則禁止する方向で調整 (2024年04月25日)
  8. ドコモ、「Xperia 10 V」を5万8850円に値下げ 「iPhone 15(128GB)」の4.4万円割引が復活 (2024年04月25日)
  9. 「iPhone 15」シリーズの価格まとめ【2024年4月最新版】 ソフトバンクのiPhone 15(128GB)が“実質12円”、一括は楽天モバイルが最安 (2024年04月05日)
  10. スマートグラス「Rokid Max 2」発表 補正レンズなくても視度調節可能 タッチ操作のリモコン「Rokid Station 2」も (2024年04月25日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年