インタビュー
» 2008年10月16日 22時37分 UPDATE

開発陣に聞く「N706ie」:長く使っても飽きが来ない――便利機能と使う楽しさを盛り込んだ「N706ie」 (1/2)

大きな背面ディスプレイや見やすいメニュー、約700時間という連続待受時間が魅力の「N706ie」。見やすさ、聞きやすさ、使いやすさにこだわった706ieシリーズを代表するこの端末には、NEC開発陣の「長く楽しんで使ってほしい」という思いがあふれている。

[房野麻子,ITmedia]
photo 「N706ie」

 これまでのシニア&エルダー向けの携帯電話といえば、NTTドコモの「らくらくホン」、auの「簡単ケータイ」、ソフトバンクモバイルの「かんたん携帯 821T」など、現行ラインアップに1〜2機種しか見あたらなかった。

 しかし2008年夏モデルでは、シニアよりも対象年齢を低く幅広く設定した端末として、ドコモが706ieシリーズ4機種を発表。auもシャープ製の「URBANO」などを投入する、いわいるアクティブエルダー向けの端末が数多く登場した。「敬老の日」がある9月の販売ランキングでは、シニア向け/エルダー向けモデルがランキング上位に入るのもすっかりおなじみとなり、携帯の1ジャンルとして存在感を増してきている。

 その一翼を担っているのが、NEC製の「N706ie」だ。大きくて常時点灯可能なサブディスプレイを背面に搭載し、メニューの全階層で拡大文字に対応。また、周囲の状況に合わせて受話音量を調整するハイパークリアボイスや、ヒンジ部にパナソニック モバイルコミュニケーションズ製端末と同等の「ワンタッチオープン」ボタンを搭載し、見やすさ、聞きやすさ、使いやすさを追求。FOMA最長クラスの連続待受時間を誇る省電力設計も大きな魅力だ。

 まさしく706ieシリーズらしい端末に仕上げられたN706ie。開発の背景とこだわりなどを、NEC モバイルターミナル事業本部 モバイルターミナル事業部 商品企画部 マネージャーの高須愛氏、同モバイルターミナル事業本部 モバイルターミナル事業部 商品企画部 主任の加藤ゆみ氏、同 モバイルターミナル開発事業部 技術マネージャーの北口雅哉氏、NEC埼玉 携帯端末開発部 技術課長の濱田智氏に聞いた。

高まる、使いやすいケータイへのニーズ

photo NEC モバイルターミナル事業本部 モバイルターミナル事業部 商品企画部の加藤ゆみ氏

 ドコモのシニア向け端末といえば、「らくらくホン」シリーズが筆頭に挙げられる。同シリーズの人気は高く、売れ行きも安定しているのが特徴だ。他キャリアからも、シニア向けのシンプルケータイが定期的に投入されることから、NECは使いやすさに対するニーズの高まりを感じていたという。

 「“使いやすいケータイが欲しい”というニーズが高まっている以上、メーカーとしてユーザーの期待に応える必要があります。特に、“N”端末を使っていただいている方へ向けて、使いやすさに特化した端末を出したいと考えていました」と、企画担当の加藤ゆみ氏は開発背景を説明する。

 NECはN706ieの開発にあたり、FOMAへの乗り換えを控えたムーバユーザーを想定した。ドコモが進めるFOMAへの移行施策が功を奏し、ドコモ内のムーバ比率は下がり続けているが、2008年9月末現在、まだ約749万件の契約がある。現在、ムーバユーザーの年齢層は50歳代がピークで、なかでもN端末のユーザーが非常に多いという。

 「ムーバからFOMAに買い替える際、引き続きNECの端末を選んでいただけるようにしたい。そこで、ムーバユーザーも満足できるような機能に加え、もっともユーザー数の多い50歳代のユーザーに喜んでもらえる要素を、盛り込みました」(加藤氏)

長く使ってもらえるスペックと機能

photo NEC埼玉 携帯端末開発部 技術課長の濱田智氏

 NECがムーバユーザーに強くアピールしているのが、N706ieの省電力性だ。N706ieは連続待受時間がFOMA最長の約700時間。背面ディスプレイを常時点灯させても、約520時間の長時間待受を実現している。ちなみに、同じく約700時間の連続待受時間を誇るFOMA端末は「N703iD」で、N706ieと同じくNEC製だ。

 「ムーバ端末を使っているユーザーにFOMAへ乗り換えない理由を聞くと、『FOMAは電池の持ちが悪い』という答えが数多く返ってきます。“ケータイはバッテリーの持ちが長くあるべきだ”と考える人たちの期待を裏切らない長持ちバッテリーを搭載しました。他社端末との差別化ポイントにもなっていますし、自信を持ってお勧めできます」(加藤氏)

 この長時間待受を可能としたのが、省電力への取り組みと大容量バッテリー(870mAh)の採用だ。NEC埼玉で携帯端末開発を担当する濱田智氏は、「省電力に関しては、どの端末でも力を入れて取り組んでいますが、N706ieではさらにバッテリーを大きくすることで、FOMA最長の待受時間を目指しました」と語る。

 大型のバッテリーを搭載すると、ボディサイズはどうしても大きくなりがちだ。N706ieは、スリム一辺倒ではなくある程度の持ちやすさも配慮した大きさのため、バッテリーを大きくする余地が生まれた。ボディのスリム化というトレンドも無視できないが、N706ieのメインターゲットとなる40代後半から50代のユーザーにヒアリングをしてみると、「薄ければ薄い方がいい」という声がある一方で、「持ちやすさや、持ったときの安心感を気にする声も多かった」と加藤氏は振り返る。

 また、メインディスプレイは大型化の流れに沿い、3インチのフルワイドQVGA液晶を採用した。

 「これから購入される方は、少なくとも2年間は機種変更をしない前提で製品を選ばれると思います。2年先まで使っていただいても耐えられるスペック、特に液晶サイズにはかなり気を遣いました」(加藤氏)

 「むやみやたらに薄くするのもニーズとしては合わない、というところにたどり着いたので、適度な重量感と厚さ、長く使っても耐えられる液晶サイズ、使いやすいと感じていただけるキーの押し具合、仕上がり、といったところに気を使いました。そして行き着いたのがこの厚さです」

(加藤氏)

 確かにN706ieの厚さは16.6ミリで、最近の薄型端末と比べるとスリムとはいえない。しかし、持ってみると非常に安心感があり、厚さはあまり感じない。その絶妙な持ち心地の要因は、ボディの幅にあるようだ。

photo NEC モバイルターミナル事業本部商品企画部マネージャー 高須愛氏

 「厚さはそれほどこだわらなかった反面、幅49ミリに関しては、かなりこだわりました。当初は50ミリくらいだったんですが、それでは大きいということになり、なんとか49ミリ内に入れ込みました。幅については、バッテリーの大きさで苦労しましたね」(濱田氏)

 さらに、端末の角を丸くして持ちやすくする工夫も施した。角が丸いと手に持ったときに心地よいが、丸くし過ぎると端末の容積が小さくなって部品が入らなくなる。容積はキープしつつ、できるだけ角を丸くして、手にしっくりくる持ちやすさを追求した。

 そのN706ieのボディカラーは、Chianti Red、Shell White、Truffle Brownの3色。Truffle Brownは、NECとして「新たな試みのブラウン」で、高級ファッションブランドのアイテムをイメージしているという。

 「高級感があって、男性も女性も素敵だと思える色を表現しました。実は、デザイナーはTruffle Brownを中心にデザインを進めました。非常にこだわり続けた色です」(NEC モバイルターミナル事業本部商品企画部マネージャー 高須愛氏)

photo N706ieのボディカラーは、Chianti Red、Shell White、Truffle Brownの3色

photo 底面のカメラ周りが少し厚くなっている。「ここにはアンテナが配置されていて、ある程度の空間が必要なため、厚さが出ています。ただ少しでも薄くしたかったので、機構設計とデザインが検討を重ねて、この形状に行き着きました」(濱田氏)

見やすさの工夫――拡大文字表示と長体文字

photo NEC モバイルターミナル開発事業部 技術マネージャーの北口雅哉氏

 706ieシリーズの端末は、メニューの全階層で文字の拡大に対応している。さらにN706ieは、電波強度やバッテリー残量を表示する画面上部のピクトエリアと、画面下部のソフトキーの表示も大きくし、どんな画面でも常に見やすい状態で操作できるように工夫している。しかし、文字サイズを単純に大きくするだけでは、長い項目だと2行に渡ってしまう場合がある。

 そのため、文字を大きくするときは基本的に字を縦方向に伸ばし、横方向への影響が少なくなるよう調整した。フォントはN706iで使っているものと同じものを採用しているが、N706ieは縦長の文字(長体文字)になるよう表示する際に描画処理を行っている。

 「事前に、一般の方を対象に、縦方向に伸ばした文字と通常表示の文字とを見ていただいて、縦に伸ばした方が見やすいという評価をいただいたので、実際にそれを採用しています」(NEC モバイルターミナル開発事業部技術マネージャー 北口雅哉氏)

 ダイヤルキーのフォントも、フォント自体はオーソドックスなものだが、見やすさという観点から文字の大きさに配慮した。従来機に比べるとかなり大きくなっている。

 「ただ、あまり大きくすると、かえって見にくくなってしまいます。どこまで大きくすればいいのかという点にもとても頭を悩ませました。N706ieにはユニバーサル対応というコンセプトもありましたので、関連するJIS規格などを確認しながらサイズを探っていきました」(濱田氏)

photophoto メニュー表示。一般的な文字よりも若干縦に長い文字になっている。画面上部の電波強度アイコンやソフトキー表示が大きいのも特徴だ

photo 数字や「あ・か・さ」などの文字が大きめに刻印されている

photophotophotophoto N706ieは、キーバックライトにRGBに対応したLEDを採用しており、ライトの色を変えることができるようになっている。搭載しているLEDは1つだけだが、薄い導光シートでキーエリア全体が光る。カラーは12色が用意されているほか、自分の好みの色に調整することもできる。「照明としては、ちょっと見にくい色もありますが、好みの色を選んで楽しんでもらえればと思っています」(濱田氏)
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