インタビュー
» 2008年11月14日 11時52分 UPDATE

WiMAXは3.9Gを補完する存在――Ericsson、LTEの優位性をアピール

GSMからW-CDMA、HSPA、LTEへとつながる通信インフラを支える機器ベンダーとして知られるEricsson。同社が推進する通信技術は、競合に比べてどんな優位性があり、どんなサービスの可能性が広がっているのか。標準化担当副社長のエクウッデン氏とLTE RAN製品設計部門担当副社長のノードマーク氏に聞いた。

[末岡洋子,ITmedia]

 モバイル通信の世界は、3G(W-CDMA)から3.5G(HSPA)へと移行し始めており、2010年には下り最大100Mbps以上の通信速度を実現する3.9G(LTE)の商用サービスが開始される見込みだ。

 こうしたデータ通信の高速化は、モバイルブロードバンドサービスにどのような変化をもたらすのか。また、LTEは競合といわれる移動体高速通信規格に対して、どんな優位性があるのか。Ericsson 標準化担当副社長のエリック・エクウッデン氏とLTE RAN製品設計部門担当副社長のイングリッド・ノードマーク氏に聞いた。

sa_erc01.jpgPhoto Ericsson LTE RAN製品設計部門担当副社長のイングリッド・ノードマーク氏(左)と標準化担当副社長のエリック・エクウッデン氏(右)

ノートPCへの携帯通信モジュール搭載が事業拡大のチャンスに

 これまでのモバイルブロードバンドサービスといえば、携帯電話やデータ通信カードが主流だったが、“ノートPCへの組み込み”という新たな道も見えてきたとノードマーク氏は見る。

 Ericssonはこの分野で米Dell、東芝、中国Lenovo、韓国LGと提携しており、各社からEricssonのHSPAモジュールを内蔵したノートPCがリリースされている。ノートPC市場ではこの1年、ミニノートPCやネットブック、UMPCなどの新たなカテゴリーの製品が生まれており、Ericssonはこの市場でのさらなる事業の拡大に期待を寄せている。

 ノードマーク氏は、GSMがアフリカなどの固定電話網が整備されていない地域で革命を起こしたことを例に挙げ、ノートPCへの携帯通信モジュールの統合が、これに匹敵する変化をもたらすと期待を寄せる。「例えば、大きな病院のない小さな村から、患者のレントゲンデータを中央の大病院に送るといった用途で役立つ」(ノードマーク氏)

 2011年には、ノートPCの半分が携帯通信モジュールを搭載して出荷されるとも予想されることから、Ericssonは9月末、GSMを推進するGSM Associationらと「Mobile Broadband」イニシアティブを立ち上げ、対応の準備を進めている。このイニシアティブはノートPCにフォーカスしたものだが、携帯通信モジュールはカメラや家電製品などへの応用も考えられるとエクウッデン氏は予測する。

WiMAXはニッチな技術、3.9Gを補完する存在に

 モバイルブロードバンドを標榜するもう1つの規格、WiMAXについては、3.9Gを補完する技術になるというのがEricssonの見方だ。その理由は、2つあるとエクウッデン氏。1つは「WiMAXは固定通信から発展した技術で、モバイル対応にはまだ課題がある」という技術的な問題だ。

 2つ目は、導入のしやすさ。HSPAを採用しているキャリアにとってLTEはアップグレードにすぎないが、WiMAXは新規に基地局を用意してエリア展開をする必要があり、ハードルが高いというのがその理由だ。また、WiMAXがTDD(時分割複信)方式であるのに対し、LTEはTDDに加え、上りと下りで異なる周波数帯を使うFDDをサポートする点も有利だと付け加えた。LTEなら通信キャリアは効率のよいFDDを導入でき、FDDの周波数帯がなければTDDを選ぶこともできるというわけだ。

4Gの最大伝送速度は1Gbpsに

 EricssonではLTEの次にひかえる4Gに向けた取り組みにも着手しており、2009年末から2010年初めに候補技術が提出される見通しだとエクウッデン氏は説明する。

 「第2世代の時に国ごとに異なっていた周波数帯を、3Gでは、世界的に協調していこうという流れになった。4GはITUが『IMT-Advanced』として10年以上前に仕様の策定に着手した通信規格であり、2007年の世界無線通信会議で、放送で利用されてきた周波数帯のほか、3GHz以上を利用することになった。ラジオアクセス部分の標準化は策定が進んでおり、今後はシグナルなど高レベルのプロトコルが策定されていく」(エクウッデン氏)

 4Gは伝送速度が下り最大1Gbpsとも言われているが、「オペレーターにとっては、伝送速度よりもキャパシティのほうが大切」だとエクウッデン氏は指摘。4Gはさらに「遅延がなく、コストが安いというメリットももたらす」と付け加えた。

再編が進む通信機器ベンダー業界、Ericssonの強みは

 ここ数年、通信機器ベンダーには業界再編の波が押し寄せている。仏Alcatel-Lucent、フィンランドのNokia Siemens Networksなど大手の吸収合併が進む中、最大手のEricssonは小規模企業を買収することで技術の強化を進めてきた。

 競合他社に対する優位性についてノードマーク氏は、「Ericssonは3GPPの標準化作業を推進してきた実績がある。これまで、新たな標準規格を最初に実装することで、現在の地位を守ってきた」と説明する。

 また、米ABI Researchが中国のHuaweiを「注目すべきベンダー」とし、Alcatel-Lucentから3位の座を奪う可能性があるとするリポートを発表したことについては「Huaweiの動向を注視している」としながらも、「Ericssonには130年以上の歴史に裏打ちされた技術力がある」(エクウッデン氏)と自信を見せた。

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