“継承”と“進化”──「P-02A」はスピードセレクターに何を求めたか開発陣に聞く「P-02A」(3/5 ページ)

» 2009年01月26日 10時00分 公開
[岩城俊介,ITmedia]

「スピードセレクター」を採用した理由

photo スピードセレクターを搭載する三菱電機製の「D902iS」とP-02A

 ドコモ向けのスライド“P”端末としてP-02Aは、「P704i」(2007年8月発売)、「P905iTV」(2008年2月発売)に続く3機種目となる。その開発初期、同社はスタイルからほかのポインティングデバイスやタッチパネルといった操作デバイスまで、スライド端末の今後あるべき姿をどうすべきかという議論を長期に渡って行った。さまざまな操作デバイスを検討する中にスピードセレクターもあり、このデバイスの評価は特に高かった。

 「最初から三菱電機さんのスピードセレクターを使うと決まっていたわけではありません。ただ、以前からこういったニュアンスの部品を使いたいと思っていましたし、企画当初から候補には挙がっていました」(大平氏)

 三菱電機が携帯事業の撤退を発表する少し前、ドコモから改めて「次期モデルでスライド端末を検討してほしい」という話があったという。なぜこんな要請が改めてあったのかと思っていた矢先の撤退発表。ユーザーや携帯業界はてんやわんやとなったが、携帯メーカーであるパナソニック モバイルももちろん例外ではなかった。“次”のスライド端末開発を模索する中で、同社は間をおかず「『携帯開発に関する(情報提供なりの)ご協力をいただけないか」と打診した。「三菱電機さんのスピードセレクターという商標を使わせていただく権利と、スピードセレクターに関する技術やノウハウの一部を供与していただく契約を交わしました」(山口氏)

 「スピードセレクターの部品は弊社のグループ会社が提供しているものということも含め、やはり現段階でベストと考えました。ただ、初めて採用するデバイスということで、搭載にあたるノウハウはゼロでした。三菱電機さんに協力していただけたことで、設計的なクリアランスや評価方法、品質予測とこれに関わる不具合の可能性など、多くのノウハウを提供いただけたので大変心強かったですね」(大平氏)

 スライドボディ+スピードセレクター、このスタイルを望む人を満足させるには何が必要か。この点は開発におけるキモである。特に“D”端末ユーザーに対しては「見た目だけでなく、使っても満足いただく」を考え、スピードセレクターのチューニングにはかなり時間を割いた。「『日々使うときに、スピードセレクターが持つよさをきちんと実現・再現』していないと意味がありません」(菅田氏)。

 スピードセレクターのよさは「自然な動作で正確に、機敏に操作できる」ことにある。回転に応じてカーソルが思いどおりの位置にすっと移動し、機敏な回転動作にも相応に反応して遅延や違和感を感じないこと。これが使い勝手のよさに大きく寄与していた。「ソフトウェアはP-01Aがベースですが、スピードセレクターに関連する部分は徹底してチューニングを施してクオリティを上げる努力をしました。基本設計におけるハードウェアとソフトウェア上の工夫、限られた時間の中でこれを両立させるのは大変でした。技術メンバーは特にがんばってくれたと思います」(菅田氏)。


P-02Aのスピードセレクターを簡易レスポンスチェック
(ムービーはこちらからでも参照できます)

 スピードセレクターの回転動作は既存のキーのどれにマッピングするかという設定で決まる。ただ、その回転が左右なのか上下なのかは利用シーンや画面の内容によってその都度変わる。例えばメニュー画面は上下方向だが、画像ビューアは左右方向、日本語入力の候補文字選択時は左右から下に改行する“Z字”状に動いてくれるのが自然である。このほか、Googleマップアプリは回転動作が地図の拡大/縮小に割りあてられている。

 「画面1つ1つに対して、“これはこちら方向”といった仕様を選定しました。また、スピードセレクターはやり方によって高速に回せます。この時に、どの程度のレスポンスに置き換えてスクロールとみなすかという調整も大変でしたね」(ソフトウェア担当の湯川順子氏 以下、湯川氏)

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