ニュース
» 2012年04月05日 19時10分 UPDATE

「つながるネットワーク」へのこだわりを、KDDIが説明

通信混雑の緩和技術「EV-DO Advanced」を4月10日から導入するKDDIが、同社の通信品質改善への取り組みを解説した。

[山田祐介,ITmedia]

 通信混雑の緩和技術「EV-DO Advanced」を4月10日から導入するKDDI。同社は5日、都内で会見を開き、3Gネットワークの品質改善や、無線LANエリア構築の取り組みについて説明した。

細やかな品質改善で3Gの「つながりやすさ」を強化

photo KDDI技術統括本部副統括本部長 執行役員の西山治男氏

 総務省の周波数再編方針に従って、KDDIは2006年4月から旧800MHz帯から新800MHz帯への移行を進めている。7月には旧800MHz帯の運用を停止し、新800MHz帯と2GHz帯のネットワークに完全移行する。この施策の中で、「単にネットワークを構築するだけでなく、品質を劣化させない、あるいは品質をさらに向上させることを目標に、5年間取り組んできた」とKDDI技術統括本部副統括本部長 執行役員の西山治男氏は説明する。

 同社はこの5年間で、旧800MHz帯基地局数の2.6倍の新800MHz帯基地局を配置した。東京23区内に限れば、4倍の基地局数を誇るという。これによりエリアカバー率も20%向上したと西山氏は話す。同社は、増強した新800MHz帯をメインのネットワークとして利用しながら、高い収容能力が必要な都心部などでは2GHz帯も活用し、ネットワークを快適性を高めている。


photophoto 新800MHz帯の基地局数は旧800MHz帯の2.6倍を誇る

 エリア設計においては「単純に基地局を増やしていけばつながりやすいネットワークができるかといえば、そうではない」と西山氏。3Dマップを使ったシミュレーションシステムなどを活用し、ビル陰や路地裏などの通信品質の改善を図っている。さらに、車を走らせて電波状況を確認する「走行データ」や基地局の各種ログなど、通信品質に関連するデータを一元的に管理し、マップ上に表示できるシステムを開発。ユーザーから「クレームが来る前」に品質劣化を検知し、改善できる体制を作った。


photophoto エリアシミュレーションの高度化により、きめ細かな品質状況のシミュレーションが可能になり、“つながりにくい場所”を減らしたと西山氏は話す
photophoto 品川、渋谷、東京、新宿といった各所での電波改善実績も披露された

 また、「生活導線上の通信品質の強化」を通信改善のテーマに掲げ、ユーザーニーズが高い地下鉄のエリア化を進めている。各通信キャリアが足並みをそろえて取り組んでいる分野だが、KDDIでは、例えば地下鉄が一時的に地上に出るエリアの通信品質向上などに努め、総合的な満足度を高めていく方針だ。

 さらに、地上を移動する電車での通信品質やハンドオーバー性能にも西山氏は自信を示した。同社は、他社の「下り75Mbps対応端末」「下り21Mbps対応端末」と、自社の下り9.2Mbps対応端末を使い、「駅間でYahoo! JAPANのトップページを開き終わるまでの時間」を計測する調査を実施。同社は理論値でこそ大きく差をつけられているが、計測結果においては「スペックほどの差がないことが分かった」(西山氏)という。「山手線、中央線、東北本線で実施した。山手線などではauが遅い部分もあるが、これは品川や池袋など一部地域で(基地局の)容量が足りてないのが原因。6月までに基地局の新設で対応する」(西山氏)

 4月10日からはEV-DO Advancedを導入し、より通信品質が向上することも西山氏はアピールする。同技術は、混雑中の基地局配下の携帯電話を、混雑していない周辺基地局に接続させるもの。従来より、1.5倍のデータトラフィックが収容可能になり、「実効通信速度が平均2倍に向上する」という。


photo 4月10日からEV-DO Advancedを導入する

実用的なWi-Fiスポットを目指した工夫

photo KDDIのWi-Fi推進室で担当部長を務める大内良久氏

 無線LANの取り組みについては、KDDI技術統括本部モバイル技術企画部通話品質グループリーダー兼コンシューマ事業企画本部コンシューマ事業企画部Wi-Fi推進室担当部長の大内良久氏が説明した。

 Wi-Fiスポットの拡大においては、3Gネットワークと同様に「ユーザーの生活導線上」を集中的に整備していると大内氏は話す。家庭向け無線LANアクセスポイント「HOME SPOT CUBE」はすでに35万台以上を配布しており、公衆Wi-Fiスポットである「au Wi-Fi SPOT」も10万カ所を突破した。HOME SPOT CUBEを自宅にセッティングしたユーザーは、「日中で約40%がWi-Fiを活用している」といい、トラフィックのオフロードに寄与しているとの見方を示した。


photophoto 生活導線上にエリアを構築(写真=左)。デザイン性にもこだわった「HOME SPOT CUBE」は35万台以上を提供した(写真=右)

 同社のWi-Fi設備の優位性として、大内氏はいくつかの特徴を挙げる。1つは、2.4GHz帯に加え干渉の少ない5GHz帯にも対応していることだ。Wi-Fiの電波として多用されているだけでなく、電子レンジや自動ドアなどさまざまなものが活用している2.4GHz帯は、干渉が起きやすいと大内氏。一方、5GHz帯は利用者がまだ少ないことに加えチャネル幅が広く、干渉が起きにくい。KDDIのWi-Fiアクセスポイントはこの5GHz帯に対応しており、端末側も順次対応機種を増やしていく考えだ。


photo KDDIのWi-Fiスポットは2.4GHz帯に加え5GHz帯を利用できる

 さらに、ネットワーク品質の解析システムを活用し、3Gの通信が混雑しているエリアなどにWi-Fiスポットを効率的に設置しているのも特徴という。また、店舗向けWi-Fi設備にビームフォーミング技術を導入し、利用者の位置に合わせて「強く電波を吹く」ことができることも同社の強みと大内氏は話す。


photophoto 品質情報解析システムを活用したエリア展開(写真=左)や、ビームフォーミング技術を使った屋内Wi-Fiスポットの品質改善(写真=右)に取り組んでいる

 大通りや地下街をまるごとWi-Fiエリア化するという「ストリートセル構想」にも取り組んでいる。KDDI デザイニングスタジオの膝下である原宿の竹下通りなどが実際に“まるごとWi-Fiエリア化”されているという。「Wi-Fiがチラチラと見えてうざい、という経験がみなさんもあると思う。これは店舗のWi-Fiが外にもれているため。だったら、町ごとWi-Fi化してしまおうという試み」(大内氏)


photo 電波の届く範囲の広い屋外Wi-Fiを設置し、大通りや地下街をWi-Fiエリア化している

 Wi-Fiをユーザーが積極的に活用できるよう、不満点の改善にも取り組んでいる最中だ。バッテリー消費の問題に関しては、Wi-Fi信号の受信間隔を従来より少なくすることで、Wi-Fiオン時の待受時間を現状の約2倍に高めることに成功したという。過去機種も含め、5月以降から順次端末に適用していく。

 また、3GとWi-Fiのスムーズな切り替えを実現する「スマート切替技術」が、同社のAndroid端末には導入されているという。Wi-Fiエリアと3Gエリアのはざまでは通信ができなくなりがちだが、スマート切替技術ではWi-Fiの電波がある程度弱くなった時点で3Gに切り替えるようになっている。また、切り替えにかかる時間も従来の半分以下に減らすチューニングを施し、5月以降からアップデートしていく。


photophoto バッテリー消費対策(写真=左)と、スマート切替技術(写真=右)の説明
photo ネットワークの切り替えに必要な時間も短縮する

 同社はこうした各種の改善で、Wi-Fiスポットの利用者拡大を図っていく考えだ。3Gの品質改善と合わせ、“つながるネットワーク”を今後もユーザーに訴求していくという。

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.