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» 2012年08月09日 12時22分 UPDATE

復興支援の専門チームを仙台に配置――被災経験を生かしたKDDIの災害対策 (1/2)

災害に対する通信キャリアの課題が露呈した東日本大震災。東北6県のauインフラを担うKDDI仙台テクニカルセンターに、被災経験を生かした同社の災害対策について聞いた。

[小林健志(K-MAX),ITmedia]
photo KDDI仙台テクニカルセンター センター長の大川博氏

 日本各地で通信品質向上への取り組みに関する説明会を開催したKDDI。東北6県の通信インフラを担当するKDDI仙台テクニカルセンター(TC)で行われた説明会では、2011年3月11日に発生した東日本大震災の経験を生かした同TCの災害対策と、7月1日に設置されたKDDI復興支援室に関する話題も上った。

 仙台TCで東日本大震災への対応を行ってきたセンター長の大川博氏は、被災直後の経験から災害に強いネットワーク構築への取り組みとして、「基地局電源の増強」「車載型基地局の増強・可搬型基地局の各地域への配備」「無線エントランス用設備の配備」の3つを挙げた。

 大川氏は「まず私たちが経験したのは広域停電。広域で停電したときの対策として、可搬型発電機(ポータブル発電機)を増強した。今後は基地局のバッテリーも強化していく」と話す。そして災害によって、基地局が停電で使えなくなったり、破壊されたりした際の対応として「可搬型・車載型基地局は復旧対策が早く取れるのでこれも増強した」(大川氏)と説明した。災害発生直後から被災地に駆けつけられる車載型基地局を全国で20台に増やし、基地局の復旧に時間のかかる場合に備え、暫定的に使用できる可搬型基地局も全国で27台に増加された。

photo 災害時におけるKDDIの対策

photophoto 車に発電機を積んだ移動電源車(写真=左)と可搬型基地局(写真=右)

photophoto 車載型基地局(写真=左)。衛星回線につなぐアンテナと、基地局アンテナをそれぞれ立ち上げたところ(写真=右)

 今回の東日本大震災では、基地局と交換局を結ぶ伝送路(地上の有線回線)の多くが断絶したことで、約350局のサービス提供が停止した。これらは2011年6月末までに衛星回線を経由させることで暫定復旧させたが、衛星回線は遅延が多く、そのままでは利便性が悪い。そこで大川氏は、「基地局の回線復旧には長期の時間がかかる。衛星回線による一時的な復旧の後は、マイクロ波を使った無線エントランス(基地局と交換局に通信アンテナを設け、相互を無線で直接つなぐ仕組み)を増強した」と話し、段階を踏んで復旧させたことを明かした。今後は同様の被害を見越し、常に無線エントランスで交換局と通信する基地局の配備も進めるという。

 東日本大震災では、伝送路が断絶すだけでなく、停電や地震による倒壊、津波による流出などで合計約2000局のau基地局が停波した。大川氏は、「全国から車載基地局を集めて、3月末には約9割、6月末には他社に先がけて震災前と同等の品質に復旧させた」と、空前の規模となった当時の復旧対応を振り返った。

photophoto 有線回線断絶のリスクを回避するため無線エントランスを整備(写真=左)。東日本大震災の復旧実績(写真=右)

エリアの再構築、計画停電への備え…震災後の様々な対応

 インフラの復旧は、単に被災前の状態に戻すだけでは不十分な面もある。大川氏は、「被災後、ユーザーの生活エリアが変化した。仮設住宅、避難場所など人の集まるところが変わった」と、震災後の変化について語った。

 確かに被災地では、震災前とは人の集まる場所が激変しており、今まで人が多く集まっていた場所で人がいなくなったり、逆に今まで人が集まることが少なかった場所に人が集中したりするケースもある。大川氏は「私どもは約2000カ所の電波を調査して、仮設住宅、避難場所のエリアを構築した。また、生活動線の主となる国道もルートが変わっているので、ルートのエリアもさらに強化した」と、震災後の人の動きに対応した新たなエリア構築を展開していることを強調する。

 また、「私たちが災害で苦労したのは、さまざまな復旧設備を、いつどこにどう設置すれば良いのか即座に分からなかったこと。今、災害が起きたとして、どこからエリア構築をすれば良いのか。その優先度が分かるようなシステムツールを構築している」(大川氏)とも語り、KDDIとしてより迅速かつ視覚的に被災状況や復旧優先エリアを把握できる「au災害復旧支援ツール」の構築を進めていることも説明した。

photophoto 震災後の生活動線の変化を踏まえ、新たなエリア構築を進めている(写真=左)。今回の東日本大震災の反省から、災害復旧を迅速に進めるための「au災害復旧支援ツール」を構築中だ(写真=右)

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